東雲月虹
yurikago no uta
『マッチ売り』、『やぎさん郵便』共に
昭和初期の草間さんならではの世界観満載で
前回の小冊子『かごめかごめ』のように
本編にまた深みが出るような短編です。
この度は花城と澤が登場します。
“本編より7年程昔、戦争が激化するよりも少し前の話です”と
あとがきで説明なさっています。
花城が社長代理になってすぐ、
澤が桃幻舎に勤めてまもない頃。
舞台はホテル。
ある部屋の一室で、自分がモデルをした絵を売る為、
上客が「やりたそうだったから」という理由で
花城がYシャツを脱いだところで澤の登場w
助平なじいさんがベッドにおいていたロープを勝手にもらい、
花城と退室します。
わざわざ特高のふりをして
フロントで部屋番号と鍵を手に入れ突入したのは
本来ならばロビーの受け渡しの筈だったのにいなかった為。
エレベータ内で先程のロープで両手首を縛る澤、
特高と名乗った手前、連行するふりもしないといけない…って
なんだか手慣れてるし
あんた実は喜んでるんじゃ!?って思ってしまいましたがw
「社長の留守任されてんだ。しっかり売らねぇと」
その花城の横顔には強い意志を感じました。
客と寝た方が一石二鳥と花城は主張しますが
あんたがイかなきゃ悪印象だと突っぱねます。
…根に持ってるな、澤…w
絵のモデルをした時、社長とは最後までしなかったようですが
肌を重ねるだけでも何かがわかった気がした花城。
事務所へ車で戻って来た後、
澤はふと、社長の贔屓だった女性が
「やさしいけど普通だった」と言っていたのを
志緒さんのところで聞いた事があると告げます。
何気なく思い出して言ったつもりだったのですが
次の瞬間、花城の目から大粒の涙が…。
ソファの上で一言も言わずに泣き続け、
そのうち眠ってしまいます。
花城に膝枕をしつつ、煙草の煙を燻らせ
「泣きたいのはこっちの方だ」
つい胸中でこぼす澤が気の毒です。
好きなのに、花城にはそんな対象では無い澤と、
社長が懇意にしていた女性はちゃんと抱かれていたと知って
ショックで泣いてしまった花城。
どちらの想いも報われず、余韻が残ります。
でも、ちゃんとお互い無二の相手が現れるからね!!なんて
また本編を読み返したくなりました。
真っ赤な表紙とは対照的な、中のしっとりとした空気感は
本当になんとも言えず素晴らしいです!!
14頁ですが、読む度にじんわりさせてもらっています!!