牡丹燈篭
gin no megane
椹野道流先生のデビュー15周年を記念した応募者全員サービス小冊子です。二見書房とプランタン出版の合同企画で、こちらはプランタン出版の小冊子「銀の眼鏡」となります。
お話は二部構成。
1話目は『梅枝さんが秋なのにこの世の春を謳歌するお話。』
「きみのハートに刻印を」のカップル、梅枝と草太がK医科大学の学祭に行くお話です。二人が訪れたのは出店「まんぷくせりざわカレー」。店名から分かる通り、「楢崎先生とまんじ君」の攻めキャラ・まんじと「きみのハートに効くサプリ」の攻めキャラ・加島の合同カレー店です。店内には「茨木さんと京橋君」のカップル、茨木と京橋もいて…。
2話目は『それから、けっこう年月が経ったある夜のお話…。』
「お医者さんにガーベラ」のカップル、甫と九条のお話です。
K医科大学学祭のため、花のアレンジメントをする九条。甫も九条を手伝い始めて…。
読みながら椹野先生は上手いなあと改めて思いました。さりげない日常風景や必要以上にうるさくならないキャラクター同士の掛け合い。そのキャラの主演作品未読でも、彼らの個性がはっきりと分かって、さらには好感の持てる台詞。すべてが良かったです。
私自身は「君のハートに効くサプリ」と「君のハートに刻印を」、「楢崎先生とまんじ君」しか読んでいないんですが、他の作品にもついつい手を伸ばしたくなりました。商業の罠に見事掛かっています…。
作品ごとのキャラのリンクや地に足ついたカップルの日常描写など、椹野先生の作品の魅力をぎゅっと集めた小冊子。読んでいて幸せな気分になりました。
巻末の草間さかえ先生と黒沢要先生のショート漫画も素敵でした。
です。厚みも中身も。
とにかく薄い。そして安っぽい装丁。
それなりに手間かけて自己負担もして応募した結果がコレか!?とガッカリしました。『全員○○』でここまで裏切られたことないです(自己負担なしのものを含めても断トツで最低だ)。
2編構成で合わせて3CPが出ていますが、梅枝×草太はまだしもあと2CP・特に茨木と甫は好みじゃないんです。
さらに、私は黒沢さんはともかく草間さんの絵がものすごく苦手なので、漫画もいっそ余計だとしか思えなかったのでまさに救いがなかった。
書店の購入特典ならまだしも、手間暇と費用をかけて応募したのが虚しくなるくらいすべてにおいて貧相な小冊子でした。いろんな作家さんが個人で出されるコピー同人誌の方がはるかにマシだよ(オフセットとはもう比べること自体失礼なレベル)。
仮にも商業出版社が、自己負担金を徴収しておきながらよくこんなものを出せるなと呆れ果てました。ただひたすらに残念です。
そして、この2冊の小冊子のあまりの酷さに、椹野さん作品自体もう買う気もしなくなりました。今後は、唯一お気に入りの『作る少年食う男』のシリーズ新作だけ(もしまだ出るなら)買おうと思います。