みざき
London nightingale
本編終了後、サミィ視点のお話。
心因性のものから口が聞けなかったサミィの、本編途中の心の声が描かれています。
この子はなんて良い子なんだろうか。
サミィはルーイが世界で一番好き。
気付いた時には救貧院に居た幼いサミィ。
年長の少年たちに小突かれ、殴られ、声を出すなと叱られ、声を出してはいけないんだと思っているうちに本当に出せなくなってしまっていた。
そんなサミィを救ってくれたのは、優しい笑顔と暖かい手を持った天使のようなルーイでした。
いつしかサミィにとって、ルーイが唯一安心出来る場所となっていきます。
ドクターの家に引き取られ、テノール歌手のシャンロン氏の元へ向かおうか悩んでいたルーイから「例え話だけれど、離れ離れになってもいい子で待っていられる?」と言われ、小さな頭で必死に考え、思わず家を飛び出したサミィ。
この時のサミィの気持ちを考えるとなんていじらしいのかと。まだたったの5歳なのに。
やがてルーイと再会した安心からか自然と声が出るようになり、ルーイと共に再びドクターの元で暮らし始めることに。
毎晩大好きなルーイの子守唄で眠りにつくサミィは、ある日明け方に同じベッドに入って来るルーイから甘くて優しいにおいがする事に気が付きます。
体温が少し高くて、少しだけ汗のにおいもして…
その中に甘くて優しい、幸せなにおいがする。
「ドクターからもおんなじにおいがするの」
とつぶやくサミィにうろたえるルーイと面白そうにするドクターがなんだか可愛い。
ドクターは結構いたずらっ子のような茶目っ気がありますね。
愛し合う2人から同じ幸せのにおいがして、2人が幸せで自分も幸せだと言うサミィに感極まり抱きしめるルーイと、その上から更に優しく抱きしめて「みんな幸せだから同じにおいがする。サミィからも同じにおいがしているんだよ」と穏やかに語るドクター。
もう、本当に良い男ですよね。包容力がすごい。
あの時ドクターと出会えなければこんな幸せはなかったかもしれない。
2人とも幸せになれて良かった。
前半で見られた孤独や怯えから解放され、愛情や幸せに包まれていくサミィの心情が丁寧に描かれた素敵なショートストーリーでした。
ルーイとドクターの甘くて穏やかな空気も幸せに満ち溢れていて心あたたまります。
きっとこれからも幸せのにおいに包まれて暮らしていくのではないでしょうか。