フランク
under yell
本編では壁の薄い寮でやっちゃってて大丈夫なのかなぁ、この子たち……と思ってたんだけど、電子書き下ろしSSのテーマはまさにそれ。
桝木の部屋の右隣に住む彼、井上君が壁の向こうから聞こえてきちゃった「女の啜り泣きのような声」についてあれこれ思い巡らせちゃってます。
絶世の美人・折川が、桝木の部屋を出入りするようになった事に気付いた井上くん。
特に共通項のなさそうな二人の友人関係に奇妙なものを感じていたある日、聞いちゃうんです、アノ声を!
おまけに「もうダメ」だの「もう許して」なんていう声に混じって、桝木の「我慢しろ」「隣に聞こえるぞ」なんて声まで聞こえてきて……!!
もうこれはアカン。
バレたわ……
と思いきや……
井上くんときたら「これは、絶対にイジメ!」と思ってしまうんです。
えーっ。
井上くん、さすが彼女いない歴17年の男の子。
おまけに、もしかして中学時代からパシリ?
剣道も真面目なフリして、あの竹刀はやっぱり……と明後日の方向へと推測。
それから折川が来るたびに聞き耳をたてるようになる井上くんですが、今日は特にギシギシが激しくて、おまけに折川は何度も限界を訴えているのに聞き入れてもらえず、何がどうなってるのかわからないけど思わず興奮してしまう井上くんなんだけど、苛めの声に興奮しちゃう自分は鬼畜の仲間入りだ…と落ち込む姿には笑わせてもらいました。
鬼畜(笑)
しばらくして風呂に行くと、そこには先客が既にいてそれが桝木と折川であることにびっくり仰天。
風呂でもセクハラ苛め?と思わず風呂場を飛び出した彼の耳に聞こえてきたのは、「昇ちゃん」に対して髪洗えだのわがまま放題な折川の声。
ハイハイと従う桝木とのやりとりは、まるで恋人同士のようで……
そこで気付いてしまう井上くん。
アノ声は、まさにアレなんじゃないか?!と。
あぁバレてしまった!!と思いきや、なんと折川がマフラーのお返しにと腹筋ローラーを持ってきて、二人で限界になるまで挑戦していたらしいんです。
疑わしいあれやこれも、全てはトレーニング中の物音か!と合点する井上くん。
いや〜今日、たまたま腹筋ローラーの日だっただけで、いつもは違うから!と教えてあげたいけど、そこは秘密のほうがいいんでしょうね。
実にコミカルな筆致のSSで、読んでて楽しかったです。