エロなし/生徒×先生
「あの時、先生に言われたから。だから、もう一度言いに来たんだ。」抱き締めていた腕を解かれ、七瀬は少しよろめく。すると、仁は七瀬の両手をしっかり握り、目を合わせて口を開いた。 「先生が好きです。」
自分が勤めていた学校でも、馬鹿げたジンクスというものはあった。文化祭に告白をするとそのカップルは永遠に結ばれるという、至ってどこにでもあるジンクス。特に気にも留めていなかった自分に、彼奴はマイク越しに告げたのだ。
先生の事が、好きです!!
騒めく校内。その場に居た全員の視線が集まり、自分の体温は何故か上昇する。
断らなければいけない。
何故なら自分は教師だから。相手は生徒だから。
男同士だから。
七瀬拓人。26歳。2年前に教師になったばかりの新米教師だ。
それにしても、今日は懐かしい夢を見た。去年、初めて教師という職に就いた時の文化祭の出来事が夢になって出てきたのだ。
何故今日こんな夢を見たのかは分からない。学校に伝わる嘘くさいジンクスを信じ、告白をしてきた男子生徒。自分も性別は男の為、その生徒はそっちの人なのだという事が露わになった。自分はその男子生徒に対して嫌悪感を抱くことは無かったが、生徒達の中にはそういう気持ちになる者も居るだろうと危惧した七瀬は、卒業したらもう一度言いに来てくれと、告白の返事はなあなあにし冗談めかして言ったのだ。
とは言ったものの、その後男子生徒が訪ねてくる事も無く、あの告白もそんなに本気では無かったのだろうと、七瀬は結論づけている。
季節は秋になる。そろそろ受験も近い為、教える側としては力を入れていかなければならないところだ。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴ったところで七瀬は小さく溜息をついた。
(今日も疲れたな…)
やり甲斐のある分、かなり労力を使う。職員室の自分の席に座り、ホットコーヒーを飲みながら一息をつく。
(今日はこれ以上冷えない内に帰るか)
他の先生方にお先に失礼しますと挨拶をし、歩いていると、ふと今日見た夢を思い出す。あの時も確か今日みたいな季節だった。
正直生徒全員の名前と顔は覚えていないが、あの生徒のことはしっかりと覚えている。篠原仁。雰囲気は柔らかく、思いやりのある生徒だった為、周りの生徒からも慕われていた。
(背が高いし、顔立ちも整っていて、あいつもててたよな。)
その仁が、何故自分に好きだと言ったのかは今でも謎だ。
(雰囲気は丁度あんな感じだったよな)
校門に立っている男性を見てそう思う。当時は髪が短く、立っている男性は今時の若者らしい姿だが、柔らかい雰囲気がどこと無く似ている。
あまりジロジロと見ていては失礼だと思い、踵を返し車に向かおうとしたが、はたと動きを止めた。
(あの男、学校に何の用だ?)
だいたいの学校では、防犯上敷地に入れるのはその学校に通う生徒と働く教員と関係者に限られている。校門前はギリギリ敷地内では無いとはいえ、何か用があるなら教員である自分が聞くしかない。
「すみません。何かご用ですか?」
歩み寄りながらそう言うと、男は自分の存在に気がついたのか、振り返り目を見開いた。
「学校は関係者以外立ち入り禁止なんですよ。学校内に居る者で用があるのであれば、自分が呼びに行きま「七瀬…?」
聞き覚えのある声と、呼ばれた自分の名に、七瀬は動きを止めた。
「七瀬、拓人先生…ですよね?」
「え?あ、ああ。そうだけど…え?」
混乱する自分を見て、男は目をキラキラと輝かせて七瀬の手をがっしりと握った。
「先生?!やっぱり!俺の事覚えてない!?」
「へ?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
「え?ひょっとして忘れてたりする?」
「ん?えっと…」
突然の事に頭が付いていけず、必死に考えてる。そして、男から発せられた言葉に七瀬は驚く事になる。
「篠原仁。覚えてない?」
「しのはら…じん……?!え?お前篠原!?」
今考えていた人物の登場に驚きを隠せない。何故このタイミングで本人と会うのだろうか。七瀬が仁の事を考えていたとは知らない仁は、驚きすぎだろと笑っている。
「な、んで?なんでお前がここにいるんだよ!?」
驚きの余りに声を張り上げてしまう。すると、仁は微笑みを浮かべた。
「なんでって…約束したじゃん。文化祭で」
「文化祭って…」
先生の事が好きです!
卒業したらもう一度来てくれ
一連のやりとりを思い出して、七瀬の頭の中は大パニックだ。
「先生がああ言ったから、会いに来た。」
そう言う仁に、これも夢じゃないだろうかと疑ってしまう。
「折角だし、飲みに行こうよ。」
「ば、馬鹿か!お前未成年の分際で、何言ってんだ!」
すると仁は財布を取り出し、免許証を七瀬に渡す。
「先生、俺去年成人したから未成年じゃないよ。折角の機会だし、俺奢るから行こうよ。」
有無を言わせない様な言い方に、七瀬は流され思わず頷いてしまったのだ。
仁に連れて来られたのは個室風で落ち着いた雰囲気の居酒屋だった。仁は慣れた様子で店員に注文をしている。
「先生生で良かった?」
「うん。…つーか随分慣れてるんだな。」
「ゼミの奴らとよく来るんだよ。ここ俺のお気に入りなんだ。」
落ち着いていて、それでいて開放的過ぎず閉鎖的でもないバランスの取れた店内は、七瀬の目から見ても好印象だ。
「ゼミ?お前何やってんの?」
「写真部。今度先生モデルに写真撮らせてよ!」
「あー…考えとく」
被写体になる事に抵抗は無いが、そんな立派なカメラで撮られる程の人間じゃない事は重々承知だ。しかしその提案に悪い気はしない為、当たり障りの無い断り方で回避する。
「そんなー。先生だったら撮りがいがあるのに。」
「…褒めても何も出ないからな。」
撮りがいがあると言われるのは凄く嬉しいが、素直に喜べないのは七瀬の昔からの性格だ。口を尖らせる仁を横目に見ながら、七瀬は酒を煽る。
「先生は変わらないね。なんか高校生に戻った気分だよ。」
ニコニコと笑いながら仁は言う。仁がまだ高校生だった時は、よく女子生徒にからかわれ、こんな口ぶりで小さな対抗をしていた。仁にとっては懐かしい思い出なのか、どこか嬉しそうだ。
「そうか?俺はお前が変わったなって思うよ。まさか生徒と酒飲む日が来るなんて思って無かったからな。」
「つまり俺が大人になったってこと?」
「ばーか。自分に都合のいい解釈してんなよ。」
目をキラキラさせる仁を軽く小突いた。そして目が合うと、仁が吹き出した為七瀬もつられ二人で笑いあう。ただのビールが、今日はやけに美味く感じたのであった。
「ほら、しっかり歩けって。」
「んー?歩けてるって」
よろよろとおぼつかない足取りの仁を支えながら七瀬は歩く。あれから高校時代の思い出話で盛り上がり、テンションの上がった仁はグイグイとハイペースで酒を飲んでいた。そんなベロベロに酔っ払った仁を放っては置けない。
「吐き気は?」
「そこまでじゃない…あーでも気持ち悪い…」
「はあ…仕方ねーな。ここの公園で休憩してくか。確かあそこ自販機あるし、水飲んで休憩したら少しはマシになるだろ。」
「うん…」
居酒屋から大通りに出るまでにあった公園の中に入り、ベンチに仁を座らせる。辛そうに顔を歪める仁を見て、自販機で水を買い手渡す。
「先生、ごめん…」
「今日は俺も楽しかったし、別に怒って無いよ。」
「本当?」
「うん。」
そう言って仁が持っていたペットボトルを奪い取り、水を飲む。そんな七瀬の後ろ姿を仁は目を見開いて凝視した。
「そろそろ帰るか。お前今も実家?そろそろ帰っとかなきゃ終電逃した…ら……」
逃したら困るだろ。そう言おうとしたが、急に何かに包まれる様な感覚に言葉を失った。頭が真っ白になり、七瀬は自分が仁に抱き締められている事に気がつくまで、暫くの時間を要した。
「な、なに?」
「先生俺のこと覚えててくれたんだね。」
話しに脈略が無い、酔っ払い独特の喋り方に七瀬は溜め息をつく。
「お前相当酒きてんな。ほら、手離せって。俺はお前の彼女じゃねーんだぞ。」
「彼女なんか居ない。」
手を離せという意味で、仁の腕をぽんぽんと叩いたのだが、逆に力強く抱き締められてしまった。
「おい…!こんなところ他人が見たら…」
「3年も経ったから忘れられたと思ってた。」
公園でいい年の男が男に抱き締められている所を見られたらと危惧するが、仁は話すことを辞めようとしない。
「俺のことすぐ気付いてくれたよね?」
「話し聞くから手を…」
「高校の時の事も覚えててくれた。」
「仁!」
漸く手を振り払い、仁と向き合う形になる。仁は至って真剣な表情で七瀬を見ていた。その眼差しに七瀬が思わず息を呑む。すると強引に手を引っ張られ、今度は正面から抱き締められてしまった。
「先生。文化祭の時の事、覚えてる?」
「…っな、何だよ。」
背の高い仁に耳元で囁かれ、むず痒くなり言葉が途切れ途切れになってしまう。
「俺が言った事と先生が言った事。忘れちゃった?」
その言葉に、今日の朝に見た夢がフラッシュバックする。
『先生の事が好きです!』
『卒業したらもう一度言いに来てくれ。』
一連のやりとりが頭を駆け巡る。
「忘れては…ない。」
正直に言うと仁が唾を飲み込む音が聞こえ、ゆっくり顔を上げる。顔を真っ赤にしながらはにかむ仁に、七瀬は思わず視線を下に逸らした。
「じゃあ、今日何で俺が先生に会いに来たか分かる?」
「……」
「あの時、先生に言われたから。だから、もう一度言いに来たんだ。」
抱き締めていた腕を解かれ、七瀬は少しよろめく。すると、仁は七瀬の両手をしっかり握り、目を合わせて口を開いた。
「先生が好きです。」
直球な告白に七瀬は言葉を詰まらせる。
「俺と付き合ってよ。」
「お前なあ…」
元教え子、しかも男に真剣に想いをぶつけられ、七瀬は全身が脈打つような感覚を覚える。確かに仁は高校を卒業し、自分達は先生と生徒という関係では無くなった。しかし問題は山積みだろう。社会的にも常識的にも、自分が仁と付き合うのはどうかと思う。だが、本当に3年間自分を想い続けていたかもしれない仁の気持ちを無下には出来ないとも思う。七瀬は微笑みながら仁の手を解いた。
「お前酒に酔ってんだよ。大学に可愛い女の子いるだろ?そっちと付き合った方がお前の為だ。」
「先生…」
「それに、酔っ払いの戯言で付き合い始めても良い結果にはならないだろ。少し落ち着けって。」
仁にとっては残酷な言葉かもしれないが、自分達が付き合った後の未来に比べれば大した事はないだろう。暫しの沈黙の後、仁は口を開く。
「じゃあ酔ってない時にもう一回告白する。」
「え?」
「そんな簡単に諦められない。だから、連絡先交換して!」
この機会を逃さまいと、仁はスマホを取り出し、必死な様子で七瀬に縋り付く様に言った。
「俺…先生が卒業したらもう一度言いに来いって言ったから…だから…今日だって…」
今にも泣き出しそうな仁の表情に、七瀬は焦ってスマホを取り出す。
「わかった!わかったって!教えるから!」
確かに自分がそう言ったから、仁は今此処にいるのだ。
「アプリとか入れてないからメアドでいいか?」
「うん!全然平気!!」
鞄から手帳とペンを取り出し、メアドを書いて破って渡すと、仁の顔はあからさまに明るくなった。
「先生ありがとう!毎日メールするから!」
メモを財布に入れながら満面の笑みを浮かべる仁に、毎日はいらないとは言えず、七瀬は苦笑いを浮かべた。
「すぐに返信は出来ないからな。」
「うん!」
七瀬の一言一言に首を大きく振る様子が、まるで尻尾を振る仔犬の様だと七瀬はクスリと笑う。
「先生ごめんね。なんか逆に迷惑掛けたみたいだし…奢って貰っちゃったし…」
「それは別に良いって。」
本当にお金の事は気にしていない。どちらかというと自分の方が楽しんでいた気がするからだ。
「でも次は俺が奢るから!先生の好きなもの食べに行こうな!」
「え?次?」
「あ!やべ!もうこんな時間じゃん!終電逃したら明日間に合わなくなる!先生家どっち?」
「俺は家近いから歩きだけど…ていうか次って?」
「本当は送りたいけど時間無いから俺行かなきゃだから!ごめん!あ、今日メールするから!」
「え?あ、ああ。いや、だから次って…」
また二人で出掛けるのは決定事項なのかと聞こうとしたが、仁は七瀬の話しを聞かずそのまま走り去って行った。呆然とその後ろ姿を見つめながら、果たしてこれで良かったのかと七瀬は思ったが、もう教えてしまったのだから仕方がない。恐らく家に帰って寝る前辺りに、仁からのメールが届いているのだろう。随分と濃い1日だった為、一人になると急に疲労感を感じてしまう。仁の姿が見えなくなった大通りに背を向け、七瀬も帰路につくのであった。
七瀬はメールの画面を見て溜め息をついた。メアドを教えてからというもの、朝起きるとおはようとメールが来ていて、寝る前にはおやすみとメールが来る。プラス雑談のようなメールもする為、七瀬の受信ボックスは仁のメールで一杯だ。
積極的かつ明らさまなアプローチに、仁が若いと思ってしまう。いい意味でも悪い意味でもだ。
何度か話題を区切りのいいところで終わらせようとしたのだが、仁は高いコミュニケーション力でまた新しい話題を出してくる。しかもそれが七瀬にとっても話しやすい内容の事の為、結局ズルズルとメールを続けてしまっているのだ。
メールをそんなにするタイプではない七瀬は、どうしたものかと頭を抱えてしまう。そして、頭を抱える理由はもう一つあるのだ。
(今日はまだ返事来てないか…)
それは、仁の行動力に呆れながらも、仁からのメールを待っている自分自身だ。返信をしないで強制終了する事も出来るし、その方が良いと思っているのだがそれがどうしても出来ないでいる。仕事の休憩の度にスマホをチェックしては、仁からのメールに一喜一憂してしまっている自分は可笑しいのだろうか。
そして七瀬はこうなっている自分に対し、一つ心当たりがある。それは自分の性格だ。
今は教師として働いている七瀬だが、教師になった理由を簡単に言えば、親の言う事に流されたという事である。家族全員が教育大卒業の為、自分の意思など関係無く教育大に入り、それなりに勉強をして教員免許を取った。親や親族に言われるままこの高校に就き、今もここで働いている。
それだけではない。過去の恋愛を振り返ってみても、女性からのアプローチに押されて付き合い始め、別れを告げられると特に何とも思わず交際を終わらせていた。
つまりは流されやすいという事だ。これは自分の欠点であることは、七瀬も充分自覚している。きっと今回もそうなのだろう。しかし、それでは仁の気持ちに対して失礼だ。だがそうは分かっていても、仁との関係を切る事が出来ない。今回ばかりは自分の性格に嫌気が差す。
溜め息をつきスマホをポケットに入れようとした瞬間、スマホが震えた。反射的に画面を見ると、画面に表示される篠原仁の文字に思わず声が出そうになる。
(いやいや!喜び過ぎだって!)
ドキドキと胸高鳴らせながら、震える指でメールを開く。
『電話番号を教えて?』
七瀬は目を少し見開き驚いた。電話番号を聞かれると思っていなかったこともある。が、いつもの仁からのメールは絵文字や顔文字を多用していて、自身の近所報告なども織り交ぜた長文なのだ。絵文字顔文字が無く、これほど短いメールが今まで来たことなど無い。何かあったのだろうか、そう思わずには居られない。だが七瀬には心当たりがある。
(酔ってない時に告白するって言ってたよな。)
まさかこんなにも早く、大胆に行動されるなんて思っていなかった。電話番号を教えたら、仁は自分に告白してくるのだろうか。七瀬のスマホを弄る指が停止する。
これはチャンスだ。このメールに返信をしなければ、仁との関係は途絶えることになるだろう。仁の為にも自分の為にも、それが一番良い事だと頭では充分に理解出来る。
なのに何故か、七瀬の指は返信メールに自分の電話番号を打ち込んでしまい、数秒の間の後送信をしてしまった。頭の中には冷静なシナリオがあるというのに。
何をやっているのだろうか。そう後悔する暇も無く、スマホから着信音が鳴り響く。このタイミングで電話を掛けてくる奴は彼奴しか居ないだろう。番号を連絡先に登録してから電話に出る。
『も、もしもし』
『先生?』
約1カ月ぶりの仁の声に何処か安心感を感じてしまう。
『そうだけど…』
『番号教えてくれてありがとう!先生元気?久しぶりだけど』
『ああ。お前は?』
『めっちゃ元気!』
電話口でも変わらない仁に、肩の力がスッと抜けるような感覚を覚える。職員室に誰も居ないことを確認してから、小さな声で仁に問う。
『なんかあったのか?』
我ながら白々しいと思う。が、そう聞く権利は此方に有るはずだ。
『メールより電話の方が手っ取り早いと思ってさー。』
『手っ取り早い?』
『うん。先生今日予定空いてる?』
『え?』
『次は先生の好きなとこ行こうって前に話したから、今日はどうかなって思ったからさ!メールだと時間掛かるし電話が良いなって。』
その言葉に七瀬の顔は真っ赤になる。
(そうだよな。いきなり告白とか普通に考えてあり得ないだろ!)
これは自分の自惚れだ。恥ずかしさで言葉を失っていると、電話の向こうから先生?と仁の心配そうな声が聞こえる。
『いや、空いてるには空いてるけど、今期末の採点やってるんだよ。夜遅くなったら悪いしなー…明日なら完全に空いてるけど。』
冷静を装いながらそう返す。
『俺は夜遅くても大丈夫だから、今日じゃだめ?』
『え?いや。俺は明日の方が…』
『明日じゃだめ!今日じゃなきゃ駄目なの!』
食い気味に言う仁に、七瀬は一つの疑問を持つ。
『なんでそんなに今日に拘るんだよ。』
明日なら丸一日空いてる上、今日は深夜にしか会えないと知りながらも、今日に拘る意味が分からない。
『仁?』
『今日、俺の誕生日なんだよね。』
『…は?』
予想外の展開に、七瀬の声が少し裏返る。
『誕生日って…お前友達とかゼミとかで祝ったりしないのかよ。』
仁の人柄からすると、周りが祝福してくれるだろう。
『友達もゼミもパーティーしようって言ってくれたよ。でも断った。』
『何で?』
『先生と一緒に過ごしたかったんだ。』
その言葉に、七瀬はスマホを落としそうになってしまう。そんな七瀬を他所に仁は淡々と続ける。
『先生が行きたいところで良いからさ、一緒に居てくれない?俺今年の誕生日は先生と過ごしたいんだ。』
『えっと…』
『駄目かな?』
言葉を詰まらせると、仁は悲しげにそう問う。
七瀬は机の上のスケジュール帳を開き、予定を確認した。今のところこの採点を終わらせる位で、大きな仕事や急ぎの仕事も無い。
『わかった。じゃあ今の仕事に一区切りつけるからそれまで待ってて貰っていいか?』
『本当!?やった!大丈夫!全然大丈夫!!』
嬉しいというのが声を聞くだけで伝わってくる。今まで過ごしてきた中で、自分と一緒にいる事でこんなにも喜んでくれた存在があっただろうか。
『それと、誕生日なら俺の行きたいところ行っても意味ないだろ。お前の好きな所にしよう。』
『え?うーん…好きな所ね…』
考え込んでしまう仁に、そんなに難しい問題じゃないのではと苦笑いしてしまう。
『じゃあ、俺の家に来て欲しい。』
『家?』
『今一人暮らしなんだ。親とか居ないし。』
確かに実家だと無理な話しだが、一人暮らしならそういう面では問題無いだろう。
『お前はそれでいいのか?』
『うん。というか絶対家がいい!で、先生の手作りの料理とかあれば、もう何も要らないな!』
『料理っていっても、俺が作れるものなんてたかが知れてるし…』
普段コンビニの弁当やスーパーの惣菜で済ませてしまう七瀬が作れるものといえば、カレーや野菜炒めなどの簡単なものだ。
『何でもいいよ。兎に角先生の作ったものが食べたいの!』
『わかった。わかったから落ち着けって。』
声を荒げる仁を静かに宥める。
『お前の家の近くのスーパーで食材買ってから家行くか。家の住所は?』
『俺迎えに行くから大丈夫!校門の前で待ってるから。』
『それじゃあお前が二度手間だろ。』
その方が七瀬としては楽だが、仁の負担になってしまいかねない。
『そしたら一緒にスーパー行けるから!学校まで結構距離あるし、俺もうそっちに向かうから先生は仕事して待ってて!着いたらメールする!じゃあまた後で!』
そこで電話が切れてしまった。恐らく仁が急いで支度を始めたのだろう。落ち着きが無い仁に少々呆れてしまうが、そんな事を言ってる場合ではない。一刻も早く仕事に蹴りを付けようと、気持ちを切り替え七瀬は採点を始めたのであった。
採点をキリのいい所まで終わらせ、時刻は6時近くになっていた。あれから1時間と少し経った。そろそろ仁が来ている所だろうと七瀬は学校を後にする。
校門に行くと、仁がスマホを弄りながら立っていた。慌てて七瀬が駆け寄ると、七瀬の存在に気がついた仁がスマホをポケットにしまい笑顔を見せる。
「悪い。待っただろ?」
「全然だよ。そんな走ること無いって。」
仁はどうってこと無い様に振る舞うが、頬が若干赤くなっている。この寒空の下、七瀬を待っていたのだろう。
「早く行こう。寒かっただろ?エンジンはもう付けてるから。」
車の鍵をポケットから取り出し、駐車場に向かおうとすると仁が驚いた表情を見せた。
「え?え!?先生の車で行くの!?」
「ん?そうだけど、なんで?」
慌てふためく仁にそう聞くと、仁は目をキラキラと輝かせた。
「先生の運転してるとこ見れるってこと?!わー!マジでここまで来て良かった!!」
その場で飛び跳ねる勢いの仁に、七瀬は少々呆れた様な表情だ。
「別に何てこと無いだろ。お前だってもう免許取ってんだから。」
運転なんて特別凄い事では無いと言うと、仁は七瀬に詰め寄る。
「運転してくれるのが嬉しいんじゃなくて、運転してる先生が見れるのが嬉しいの!」
夢を見る子供のような反応に、七瀬は思わず苦笑いだ。
「そういうもんなの?」
「もうめっちゃ嬉しい!先生早く車乗ろうよ!」
仁は七瀬の腕を引っ張り駐車場に向かう。成人しているとはいえ、年が離れているせいか仁がやけに子供に見えてしまう。
それからスーパーに向かうまでの道程では、運転をする七瀬の姿を動画で撮ろうとする仁を、何としてでも阻止しようと奮起することになったのだった。
「で?結局何作ればいいんだよ。」
「んー…どうしようかな…」
スーパーのカートを押しながら七瀬が聞くと、仁は悩みに悩んでいるようだ。
自分の作れるものなど簡単なものだから、何処かに食べに行こうと七瀬は何度も説得した。だが、仁はそれを断固拒否し駄々をこね出した為、仕方なくスーパーに来たのだ。しかし肝心の作るものが決まっていない。このままでは時間ばかりが過ぎていってしまう。
「お前好きなものは?」
「なんでも好き。」
「…じゃあ嫌いなものは?」
「特に無いなあ。」
これは素晴らしい回答なのだが、こういう場面でその回答をされると、作る側としては逆に困ってしまう。
「それじゃあ何時まで経っても決まらないぞ。」
「うーん…だってこんなチャンス二度と無いから悩むんだよ。」
仁の言葉が妙に引っかかった。
(二度と無いチャンスか…)
仁の中では、自分が料理を振る舞うことは最初で最後だと思っているのだろうか。
(頼まれれば何時だって作るのに。)
そこまで考えて七瀬ははっとする。
(いやいや!それは逆に迷惑だろ!)
未だに悩む仁の横で自分に突っ込みを入れる。好きだと言われているとしてもやり過ぎな上、ありがた迷惑も良いところだ。仁に告白されてから、こんな思考回路になっている自分自身が気味が悪い。そんな七瀬の脳内を知る由も無い仁は決めた!と言う。
「カレー!カレーがいい!」
「カレー?こんだけ悩んでそんなベタなので良いのかよ。」
「王道だからこそ良いんだよ。」
そう言いながら仁は野菜コーナーから、玉ねぎをカゴに入れる。
「あ、先生。カート俺が押す。」
野菜をひと通り入れたところで、仁がそう言いながらカートを持った。自分が押していても何の問題も無い為、少々不思議に思ったのだが、直ぐに答えが見つかった。
(俺に重たいもの持たせないように…とか?)
まるで彼女を庇う彼氏の様な行動に、七瀬は何とも言えぬ気持ちになる。自分は男なのだからそんな気を使わなくても問題は無いというのに。それでもこんな行動を取るということは、やっぱり仁は自分の事が好きなのだろうか。そう考えると顔が少し火照る。
「さっさと買って早くお前ん家行こう。」
仁に気付かれぬよう前を歩き、七瀬は俯きながら赤くなった顔を隠したのだった。
「先生、着いたよ。ほら、あれ!」
仁の後をついて行くと、小さなアパートが見えてくる。二階の一番奥の部屋が仁の部屋のようだ。仁は鍵を開けドアを開ける。
「入っていいよ。」
「お、お邪魔します。」
一応そう言ってから部屋に入る。
「普通だな…」
白い壁に黒いモコモコの絨毯。部屋にはテレビとテーブルがあり、奥にシングルベットがある。普通の1LDKの部屋で、大学生が一人暮らしをするには充分な広さだ。
部屋の中は暖かく、冷えていた体がじんわりと暖まった。靴を脱ぎ、玄関からリビングに入る。ふわりと仁のつけている香水の香りが鼻を掠めた。
「先生コーヒー飲む?体冷えちゃったでしょ?」
「ああ。頂こうかな。」
すると仁はマグカップ2つにインスタントコーヒーを入れ、ポッドからお湯を注ぐ。
「それにしてもこの部屋よく見つけたな。外見ボロいから心配だったんだよ。」
通りから外れている為、騒音なども気にならなく居心地が良い。
「人も家も見た目で判断するのは良くないんだよ。」
2つのマグカップをテーブルに置きながら仁は言う。
「俺は見た目7割ってよく聞くけどな。」
「え!先生が先生らしくないこと言ってる!」
「仕事じゃない時はこんなもんだよ。」
上着を脱ぎ、ネクタイを緩めながら言うと、仁は心底驚いた表情をしている為、思わず笑ってしまう。
「教師ったって俺もまだ25だからな。」
壁に背中を付けながら関節を鳴らす七瀬を見て、仁は何かを思い付いたのか、ベットの下から何かを取り出す。
「先生見る?俺が高校生だった時の写真!」
「おー。見る見る。……ははっ、懐かしいな。」
およそ3年前の仁は、七瀬がよく知っている仁だ。笑顔で友人と写っている写真を見ると、こちらまで笑みが零れる。アルバムをペラペラとめくっていると、仁と七瀬が二人で撮った写真も出てきた。数ある写真の中でも、仁の顔は一段と輝くような満面の笑みだ。そして七瀬も少し驚く。
(俺、こんなに笑ってたんだ。)
仁にも負けない位の自分の笑顔に吃驚していると、仁が此方をジッと見つめていることに気付く。
「先生ってやっぱり綺麗だよね。」
「?そうか?そんなこと、初めて言われたよ。」
すると仁は七瀬の頬に手を添えた。突然の事に驚き、思わず目を見開いた。かさついた仁の大きな手に、心臓が大きくドキンと脈打つ。
「初めて見た時から先生は変わらない。ずっと綺麗だよ。」
「い、いや…俺なんか綺麗な訳無いし…」
仁の真っ直ぐな目に、思わずたじろいでしまう。
「ほ、ほら!カレー作ろう!腹減っただろ?」
それとなく仁の手を躱し、玄関に置いたスーパーの袋をガサゴソと漁る。
「うん。俺もお腹空いたなー。」
意外と普通の言い方をする仁に、少し安心する。いきなり綺麗だとあんな表情で言われると、全身がむず痒くなってしまう。仁は意識しているのか分からないが、あの雰囲気のままだと何だか気恥ずかしい。材料をキッチンに並べる間も、仁に触れられた所が何故か熱を持っているような気がしたのだった。
「意外と美味いもんだな…」
「本当に美味しい!先生が作ってくれたと思うと100倍美味しいよ!」
そう言いながら仁は満面の笑みを浮かべ、カレーを食べている。その嬉しそうな表情に七瀬は安心した。
すると仁が七瀬に話しかける。
「先生ってなんで教師になったの?」
「え?どうしたんだよ、急に。」
思い掛けない問いかけに、七瀬は少し驚く。
「俺、教員免許取ろうか悩んでるんだよね。だから先生の話し聞きたいんだ。」
またもや思い掛けない発言に、七瀬は目を丸くする。そしてカレーのスプーンをテーブルに置き、微笑んだ。
「なりたいならなる為に努力すればいいさ。教科は何がいいんだ?」
「数学。」
「そっか。お前理数系強いもんな。」
高校時代の成績を良く知る七瀬は、無難な選択だと納得する。
「理数系強いって先生の事じゃんかー。」
何を隠そう七瀬は仁が夢見る数学の教員だ。自分の中で一番得意な科目の為、大学でも数学においてはトップの成績を誇っていた。そんな七瀬に理数系強いと言われても、嫌味にしか聞こえないのか口を尖らす。
「俺はただ一番可能性がある教科にしただけだ。別に教師になる為だったら教科なんか何でもよかったんだよ。」
そもそも教師になった理由は、御家柄がそういう家庭だったからであって、自分の意思など全くと言っていい程だ。こんな事を言ったら仁はどう思うだろうか。
「そっか。やっぱり頭いい人は凄いなあ…選べるんだもんね。」
「別に大した事じゃない。それに凄いのはお前の方だよ。数学って決めて努力してるんだろ?」
そう問うと仁は小さく笑う。
「先生はやっぱり凄いよ。俺みたいなのを褒めてくれるんだもん。」
「そうか?本当の事だろ。」
夢に向かって努力をしている生徒を褒めるのは当然だと七瀬は思う。
「先生だけだよ。俺にそう言ってくれた教師なんて。」
仁の先程迄とは違う様子に七瀬は顔を覗き込もうとすると、仁は立ち上がった。
「おい。どうしたんだよ。」
そう問うが、仁は何も言わず七瀬の後ろに回り込み、後ろから七瀬を抱き締めた。
「本当に先生だけなんだよ。俺を認めてくれてる人。」
「じ、仁?」
「高校の時からずっとだよ。先生が担任になって、俺を心から認めてくれて。勿論俺以外の生徒にも変わらずそう接してた。」
一言一言を噛み締めるように仁は言う。
「俺は先生のそういう所に惚れたんだよ。」
突然の告白に七瀬の体は硬直する。
「今日言う予定じゃなかったのに、先生がこんな事言うから気持ち抑えらんないよ」
自分より年下だが、自分より大きな体の仁の腕の中で七瀬は唇を噛み締めた。
「俺なんかのどこがそんなに好きなんだよ…」
そう問うと仁は笑う。その時に耳元に息が触れ、七瀬は思わず俯いてしまう。
「優しくて思いやりがあって、自分の考えがはっきりしていて、口が悪いとか表情が固いとか言ってる人も居たけど、俺はそこも含めて先生の事が好きなんだよ。」
仁の回答を聞き、七瀬は自虐的に小さく笑った。仁の腕を外し、真っ直ぐ仁を見て口を開く。
「そう思うなら尚更俺なんかやめとけ。」
真顔でそう言う七瀬に仁は少々驚いた様子を見せる。
「俺はお前が思っているような人間じゃねーから。お前の知らない俺を知ったら、離れていく事が目に見えるんだよ。」
流されやすく、不器用で一人では何も出来ない様な所を仁には見せたくない。
「離れないよ。」
「嘘だ。」
「本当だよ!!」
突然声を荒げる仁に、体がビクリと跳ねる。
「俺が3年も先生に会いに行かなかったのは、俺じゃあ先生と釣り合わない事が分かってたからなんだ。」
拳を握り締め仁は語りだす。
「高校卒業して大学受かって、成績も上がった。バイトしまくって金貯めて、一人暮らしもしたし車だって買ったよ。先生に俺の事を好きになって欲しくて。」
仁の赤裸々な想いに、七瀬は何も言う言葉が見つからず黙り込む。
「大学で彼女も何人か出来たけど、先生の事が忘れられなくて結局駄目だった。先生以上の人が俺には居ないんだよ。」
仁は七瀬の手を握り、七瀬の目を見つめる。
「恋人なんて贅沢言わない。だけどただの一人の生徒なんて嫌だ。先生の特別になりたいんだよ。矛盾してるのは分かってるけど。」
七瀬にも恋人が居たことはあった。だが、こんなに自分を心から好きになってくれた女性は居なかった。そして、七瀬の口から今まで抑えてきた本音が溢れ出す。
「もう…なってるよ。」
「先生?」
「仁はもう、俺の特別に――」
そこまで言って七瀬の目から涙が零れ落ちた。そんな七瀬に仁はぎょっとする。それに驚いたのは仁だけではない。七瀬もだ。
どんなに認められなくても、どんなに辛いと思った時も、人前で涙を流す事など一度も無かった。それは自分の弱さや未熟さを掻き消す故にだ。そうやって生きてきた七瀬にとって、この涙は有り得ない物なのだ。
「俺なんかやめろ。常識的にも社会的にも絶対にやめた方がいい。」
震える声でそう言う七瀬に、仁は怒ったような表情で詰め寄る。
「常識的とか社会的とか、そんな事はいいんだよ!3年も片想いしてたらそんなことどうでも良くなる!」
「どうでもいい訳なんか…」
「どうでもいいの!」
七瀬の言葉を仁が遮る。そして大きく深呼吸をして七瀬の手を引き、力いっぱい抱き締めた。
「先生の特別になれるなら、先生が俺の事少しでも恋愛対象として意識してくれるなら、他人にどう思われようがどうでもいい!」
仁の服に七瀬の涙が染み込む。
「先生さっき何て言おうとしたの?」
「それ、は…」
「先生…お願い。言って。」
仁の声が細くなる。
「多分、先生が言おうとしたことは、俺が望んでる事なんだ。」
七瀬を抱き締める力が強くなる。
「お願い…っ!言って…!」
仁の肩で涙を拭き取り、背中に手を回す。
「とっくの昔から…仁はもう、俺の特別だよ…」
上ずった声でそう言うと仁は七瀬を抱き締めていた腕を解き、その場に座り込む。
「やばい…どうしよ…嬉しくて泣きそう…」
体育座りで顔を隠す仁を見ながら、七瀬は涙を拭う。
「先生!俺、絶対先生大事にする!約束だから!」
取り敢えずこのカレー全部食べる!と食卓に戻ろうとする仁の腕を、今度は七瀬が掴んだ。
「え?」
驚き振り返った仁の頭を、自分の顔の位置まで引き寄せる。
そして唇に触れる柔らかい感触の正体に気がついた時には、七瀬が見下すような笑みを浮かべていたのだ。
「このタイミングで来ないとかどういう事だよ。」
「え?」
あたふたする仁を見る七瀬の目にはもう涙等無く、意地の悪い表情でほくそ笑んでいた。
「そんなんだから3年も片想いしてんだろ。」
「………えええ!?!?」
七瀬にキスをされたと気付いた仁は、大声を出して驚愕する。
「せ、先生!もっかい!今のもう一回して!」
「はあ?カレー食うんだろ?早くしないと冷めるぞ。」
席に着きカレーを食べ始める七瀬に、仁は懇願する。
「お願い!だって、だって今俺カレーどころじゃないんだよ!」
「俺の作ったカレーなんかどうでもいいって?」
「違う!違うよ!そんなんじゃないって!ねえ!うう…七瀬拓人せんせー…っ!」
今にも号泣し出しそうな仁を尻目に、七瀬は満面の笑みを浮かべながら、カレーを口に運んだのであった。
人には幾つか大事な物があると、篠原仁は心から思う。
今日は懐かしい校舎に、生徒ではなく教育実習生という立場で足を踏み入れる。この高校に通っていた頃の担任に、自分の考え方や生き方、ましてや人生まで変えられることになるとは、15、6の自分は思って居なかった。
まだ人気の無い校舎のとある場所に向かってゆっくりと歩く。そして、職員室と書かれた教室をコンコンとノックした。
「失礼します。」
扉を開けると、まだ時間が早い為か職員室には一人の教員しか座っていない。その教員は自分を見て嬉しそうに微笑んだ。多分自分も同じ顔をしているのだろう。
「篠原仁さんですね?」
「……はい。」
目の前まで歩み寄ってきた、心から愛する教員を抱き締めたくなる衝動を必死に抑える。
「今日から篠原さんの教育係を担当します。」
七瀬拓人と申します。
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