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第1回 BL小説アワード

残り数センチ

「ごめんね、和希」

水姫
4
グッジョブ

俺の初恋はアンドロイド、だったらしい。
らしいというのもあまり俺は覚えていないので、直接本人から聞くことが多かった。
本人、というのは俺の家に来たアンドロイドのユキから。
なんでも初めて見るアンドロイドだったからじーっと観察していてつきまとっていたそうだ。
大変申し訳ない。
あるバレンタインの日にまだ幼かった俺はユキにチョコレートをあげた。
機械だから、というのはまったく知らなかった、というか分からなかった。
新しいお手伝いさんが来たのだとしか思えないほど精巧な作りになっていたからだ。
ユキはとても綺麗で初めてユキを見た時、こんなに綺麗な人が本当に存在するのだと
信じられないほど美しかった。
家族のみんなはユキを大切にしてくれている。なにかバグでも起こったりしたら泣きながらアンドロイド専用の病院へと連れていくほど、俺達にとってユキはとても大切な存在だ。
俺はユキに想いを告げた事がある。
でもユキは悲しそうに微笑んでこう言った。
「ダメだよ和希。アンドロイドと人間が結ばれることなんて出来ないんだ」
「でもっ…!」
「和希、いいかいよく聞いて。僕も君が好きだよ。でもね、それはあっちゃいけない感情なんだ。ヒトの感情をアンドロイドが持つなんてきっと許されることじゃない。僕は君が綺麗な女性と結婚して、可愛い子供を産んでもらって子孫を残して行って、幸せにしていてくれれば僕はそれでいいんだ」
それがぼくのこたえだよ、かずき。
予想外だった。ユキが俺を好きだと言ってくれたこと。そして俺の幸せを本当に心から望んでいること。
どこか儚げで今にでも名の通り雪に消えていってしまうような笑顔でユキは微笑んだ。

「ごめんね、和希」




ほんとうはぼくだってきみといっしょにいたかった

水姫
4
グッジョブ
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