エロエロ
「和希? 入っていいかな?」「いぃわけなっ……」イキながら、精一杯の返事をするもむなしく、ガチャリとドアが開いた。
「んんっ……」
皆が寝静まった家の中では、抑えたつもりの声も意外と響いてしまう。
(ヤバ……でも、やめたくなっ……)
「っ、ぃく……」
達する直前、俺は用意しておいたティッシュでチンコの先を包んだ。
まさにその瞬間、
――コンコン。
「和希?」
ドアをノックしながら、心配そうに尋ねてくる声がした。
「和希? 入っていいかな?」
「いぃわけなっ……」
イキながら、精一杯の返事をするもむなしく、ガチャリとドアが開いた。
俺はベッドの上。下半身を露出し、寝転がったままで、呼吸は少し荒い。
そんな俺を見て、
「大丈夫?」
心配そうに駆け寄ってきたユキが、手をのばしてそっと俺の額に触れる。アンドロイドだけど、ユキの手は俺の手と変わらない温度と質感を持っている。技術の進歩ってやつだ。
「……はぁ」
俺はユキの手を払いのけ、思わずため息をついた。イッた後の余韻も何もあったもんじゃない。ていうか、イク瞬間に邪魔しやがって、イケた気もしねー……
俺は左手に握りしめたティッシュの塊をゴミ箱に投げ入れた。
「……和希? 怒ってる?」
「っ当たり前だろ? 俺いつも言ってるよな、夜中になんか聞こえても気にしなくていいって!」
小さい頃はそりゃ、怖い夢を見た時なんかすぐ飛んで来てくれて、めちゃくちゃ安心したさ。そのまま隣に寝てもらって、朝までぐっすり眠れたもんだよ。
でも――
「もう子供じゃねんだよ! 安心してオナニーもできねぇこっちの身にもなれよ。もう高校生だっつの、エロいこともしたいんだよ!」
俺は中学の時ユキにオナニーを見られて以来、いつも細心の注意を払ってやることにしている。なるべくユキがいない時間、ユキがいない場所で。
それでも我慢できない時だってあるんだよ。17歳の健康な男子なんだよ。
俺に怒られて、ユキはベッドサイドに立ち尽くしたまま悲しそうに俺を見つめる。
「ごめん、和希。でも、僕もう――」
そう言って、ユキは言葉に詰まった。俺はベッドに腰掛けた姿勢で、ユキを見上げた。ユキは複雑な表情を浮かべて俺を見ている。
「もう、なんだよ?」
パンツを履きながら続きを促すと、ユキが腰を下ろして俺の手をつかんだ。
「っ、なにすんだよ?」
ユキは俺が履きかけたパンツを力任せに剥ぎ取って、そのまま俺の膝を割ってぐいと身体を割り込ませてきた。ちょうど俺の股間を前に、正座をしている。
「ちょっ、お前どうしたの!?」
そのユキの顔の前には、再び元気になってきた俺のチンコが……
さっき中途半端にイッてしまって物足りなさを感じているところに、この変な緊張と恥ずかしさとが混ざり合い、なんかどうしようもない……
バカみたいにおっ勃てている俺とは対照的に、ユキはこれまでに見たこともない、切なげで、苦しそうな表情をしていた。
「和希、ごめん……僕はもうダメだ。もう、ダメなんだ……」
そう言って視線を逸らすグレーの瞳に、俺は初めてこいつの涙を見た。
ユキが俺の家に来て10年余り、こんなことは今までに一度もなかった。いつだって冷静沈着。完全無欠。泣くとか、取り乱すとか、そういうのとはまるで無縁、ていうかそれがアンドロイドだろ!?
ぽろぽろと零れ落ちる涙を、指先でぬぐってやる。両手でユキの頬を包み、俺のほうを向かせて優しく聞いてみる。
「何言ってんの? 何がダメなの?」
ユキはじっと俺を見つめている。
アンドロイドでも涙が出るんだな、とか、触れた頬の質感がほんと人間と変わんねーなとか、色々あるけど、今は黙って次の言葉を待つ。
おもむろにユキが膝立ちになり、ちょうど同じ高さに顔がきたと思ったら、
「好き」
絞り出すように小さな声で、ユキが言った。
「……うん」
知ってる、と続けたかったが、それより先にユキの唇が近づいてきて、俺の口をふさいだ。
おいーっ。そっちの好きかよ!と突っ込みたかったけど、声に出せない。
「和希……好きっ、僕の……和希……んん……好き」
ユキは俺の背中に手を回し、ぐいと自分のほうに引き寄せる。何度も顔の向きを変え、浅く深く俺の口の中を侵してくる。
(なんで、こいつこんなキス上手いんだろ……)
俺はそれが気になったが、キス自体は全然イヤじゃなくて、ていうかむしろ気持ちよくて、ちゃんと話を聞きたいのに、快楽に引きずられてしまうのを堪えるのに必死だった。
「んん……ユキ……ちょっ、まっ……待てって!」
俺は思いっきりユキの両肩をつかんで押した。キスの途中で引き離されたユキは、頬をうっすらと紅く染めたままボーっとしていた。
唇は赤く塗れていやらしかった。睫毛についた涙がキラキラしていて、なんか無性にかわいかった。
「お前、どうしちゃったの?」
キスのおかげで完勃ちになってしまった俺のアレは置いといて、とにかく、今はどうしてもユキの様子をちゃんと確かめたかった。
「和希の……その……なんていうか、あの声が聞こえると、僕はもう、どうしようもなくなるんだ……」
潤んだ瞳のまま、ユキはつぶやくように吐き出した。
「もうほんと、どうしようもないんだ……」
そう言って下を向いたユキの瞳から、また涙が零れ落ちるのが見えた。
「どうしようもないって、どういう……」
俯いたままのユキにつられて視線を下げると、ユキの股間に目がとまった。それはほんとに、どうしようもないくらい張りつめていた。
「えっ、おま、これ、どうしたの?」
俺はびっくりして聞いた。だって、アンドロイドだろ? それなのにこんな、っていうかこれどうすんの?
「お前これ、いじったことあんの?」
俺の問いに、ユキは首をぶんぶん横に振った。
それを見て、俺はズボンの上からそっと、その先端に指先で触れてみる。
「あっ」
ユキは聞いたこともないくらい高い声を出した。
俺は身震いするほどたまらなくなって、もう一度ユキの張りつめたモノに触れた。今度は、手全体を使って撫でてみる。
「んくっ、和希ぃ」
俺のほうにユキが倒れこんでくる。そんなユキの反応に、なんかもう俺は夢中になった。ユキのズボンのベルトを外し、下着ごとずり下ろした。
「ふあっ、だ、ダメッ」
ぶるん、と露わになったユキのモノは、生身の人間のそれとちっとも区別がつかなかった。そう思ったら、興味のほうが勝ってしまった。
(これって、ちゃんと射精すんのかな?)
「なぁユキ。お前、俺のこと好きなの?」
意地悪く聞きながら、俺はズボンを脱がせ、シャツも引っぺがすと、ベッドの上にユキを引っ張り上げた。
「うん……好き。でも、もう今までの好きと違うんだ」
呟くように言ったかと思うと、ユキはものすごく恥ずかしがって、両手で顔を覆った。
むき出しになったユキのアレが、ふるふると切なげに揺れている。
滑らかで白い肌がなんか妙にエロくて、こうして裸に剥いて目の前にすると、男の体だとかアンドロイドだとか、そういうのが関係なく思えてくる。
ユキを仰向けに寝かせ、足を広げさせる。俺は、その間に座ってユキを見下ろした。
俺よりずいぶん大人だったユキ。いつだってクレバーで恰好よかったユキ。それがこんな……
(なにこの優越感……)
思わずごくりと唾を飲み込んだ。
「和希……?」
不安そうに見上げるグレーの瞳に、俺はニッコリと笑みだけを返した。
両手の指先を、ユキの白くて滑らかな肌に滑らせる。
「んあっ」
その質感に、本当によくできているなぁと感心しながら、俺は無言で指を這わせた。
乳首に、鎖骨に、脇腹に――
ユキはビクっとしたり、身をよじったりして、すごく敏感に反応した。
「かずきぃ……なんか、ぼっ僕のあそこがっ……ヘンだ……」
触れられずに屹立しているだけのユキのチンコは、苦しそうに震えて、ますますどうしようもなくなっていた。
先っちょにわずかに潤みを帯びているそれは、ほんと作り物とは思えない代物だった。
「なぁ、これ、触っていい?」
俺は返事を待たずに、人差し指でその潤みに触れた。
「ぃやあっ」
ユキがひときわ高い声を出して身をよじる。
「すげぇー、まじすげぇ!」
ぬるぬるの液体を先っちょにぬりつけて、俺は自分のにするように、ユキのチンコをしごき始めた。
「あっ、あっ、んんっ、かっかず、いやぁっ」
「イヤじゃないだろ、これは気持ちいいっていうんだよ、ユキ」
ユキのチンコから、ぬるぬるがまた溢れてくる。
「すげぇー、俺やばいわ、ちょー楽しい!」
俺の手の動きに合わせて、ユキはビクビク身体を動かした。
俺は自分のガチガチのチンコもほったらかしにして、夢中でユキのものをしごいた。
「ふぁっ、かずきィ……な、なんか…んっ、あ、僕の……あっ、なんか出るぅ……」
「出ていんだよ。出してみなって」
俺は容赦なく、しごくスピードを上げた。
ユキはシーツをギュッとつかんで、目はかたく瞑り、しきりに首を左右に振っていた。
「いやっ……怖いっ、壊れるっ、なんか出るっ」
「大丈夫だって、壊れないって、俺だってしょっちゅう出してんだから」
次の瞬間、ユキは体を硬直させた。
「あ、あ、ああああ、っっいぁああああっっ」
ユキのチンコの先からは、やっぱり俺のと同じ白い液体がドクドクと勢いよく飛び出してきた。
(すげー、ほんとどこまでリアルにできてんだよ……)
「な、大丈夫だったろ?」
ユキの飛ばした白いモノを拭き取りながら、俺はまだ放心状態のユキに言葉をかけた。
ユキはうつろな目をして、ただ俺を見つめた。
「動けるか?」
コクン、と頷いてユキはゆっくり体を起こした。
そしてそのまま、言ってもいないのに俺の股間にもぐりこみ、俺がしたのと同じように指先で俺のチンコの先をいじり始めた。
(あー、やっぱ人にやってもらうと違うわ……)
浸っていると、
「っうわっ」
思わず声が出た。
ユキが俺のチンコにしゃぶりついてきた。
「ちょっ、待て、ユキっ……んああ、すげぇ」
ぺろぺろと裏すじを舐め上げたかと思うと、いきなりパクリと咥えて吸い上げる。
「あ、いいよ、ユキ、すげ気持ち、いい」
(ちょっ、なんでこんな上手いんだよ……)
俺はユキがそうしていたように、思わずシーツを握りしめていた。
「和希……これ、いい?」
しゃぶりながらユキが喋る。
「あ、ああ。すっげ気持ちいい……」
ユキは俺のほうを見て嬉しそうに笑うと、今度は起き上がって俺の上に馬乗りになった。
見下ろされ、ちょっと不安になった俺を見て、
「大丈夫、和希の気持ちいいことしかしないよ」
そういうと、ユキはガチンガチンの俺のチンコを自分の尻のほうへあてがった。
「ええっっ!!ちょっ、待て、待てって!!」
俺はかなり必死にもがいたけど、気持ちよさには勝てなかった。
「っぁああ、和希ぃ、入ってくるっっ」
ユキはゆっくりと腰を下ろして、アソコで俺のチンコを呑み込んでいった。
「ああーっ!まじかー!」
俺は叫んだけど、ユキの中は女のそれみたいにぬるぬるで、熱くて、絡みついてくる――
(これ、やばっ)
ユキはそのまま上下に体を揺らし始めた。
「あっ、あっ。かずきっ、かずきっ、好きぃ」
喘ぎながら、その潤んだグレーの瞳はずっと俺を見つめている。ユキのチンコはいつの間にかまた固さを取り戻して、ふるふると頭を持ち上げていた。
「ユキ、お前それ、さっきみたいにこすってみ」
目線でユキに促すと、ユキは頷いて自分のチンコを握りしめた。
「うおっ」
思わず、声を漏らしたのは俺。
ユキが自分のチンコをしごくたび、中がきゅうっと締まる。
「もういいよ……俺が動く」
そろそろ限界だった俺は、ユキの尻をがっちりつかんで、自分でガンガン腰を使った。
「ぁあああっ、かずっかずきぃ、すごぃ……また、出っ……出るぅ……ぁああっ!」
「お、俺も……んんっ」
俺は最後の一滴が出きるまで腰を動かした。
その間に、ユキは俺の腹とシーツとに白いもんをぶちまけた。
そのまま二人、裸でベッドに寝転んでいる。
なんとなく、話しかけるのも恥ずかしくて黙っていると、
『ピロリロリー』
ユキの胸の辺りから、聞いたこともない音がした。
「えっ、何今の?」
俺は起き上がってユキを見た。
ユキは空を見つめていたかと思うと、すぐ照れたように笑った。
「なぁ、今の何の音?」
俺はユキの体から聞こえた、初めての機械らしい音に興味津々だった。
「なぁ、教えろよ」
催促すると、ユキは恥ずかしそうに言った。
「なんか、新しいモードが使えるようになったって」
「モード?」
「うん、そう」
「どんなモード?」
「lovers mode」
そう言って、ユキは俺に優しくキスをした。
(モードかよ!)
ちょっとガッカリしたことは内緒にしておこう。
(終わり)