異論は認めません!? 2012年度私のイチオシはこれ! | にゃんこ | |
男性から見たBLの今 | ヒロシ |
2012年は、『イベリコ豚と恋と椿。』のブレイクで始まり、その後も続々と王道以外の作品が高い評価を受けた年となった。電子作品ではストレートにエロ作品が2011年に引き続き人気を得たが、好まれる作品傾向はスマホの普及により、紙と電子が融合し2013年度はかなりバリエーションが広がるだろう。
2012年のコミックBLにだけ話を限って感想を述べさせていただきたいと思います。
2011年度までのコミックランキングと異なるのは、王道BLとして上位にランキングしていた作品は相変わらず人気は高いのですが、それ以上に注目したのは「異色のBL」として位置づけられていた作品がほぼ上位を占めているということです。
BLを読むユーザーに変化が激しく起こったように思いました。
コミックランキング1位の『憂鬱な朝 4』に関しては、3巻から盛り上がり、4巻でさらに物語の力強さが最強になっています。
男の私でも、「少し格調が高そうな印象」を受けるのですから、女性の方はそれ以上に読むまでにためらいの時間をつかったに違いありません。
物語は、男性作家でも構築が難しい強固な世界観、それをもとにした緊張感のあるストーリーが特徴で女性向けとしては実に異色です。
ここまで骨組みがしっかりしていると、ラブを展開する上で、うまく折り合いをつけるのが困難を極めるはず。男女モノの少女漫画は、社会的な要素を入れてその中で恋愛を描こうとしても、消化しきれないことがほとんどだと思うのです。
しかし、しかし『憂鬱な朝』はBL設定にしたことで、ストーリーと見事に融合しています。こんな部分にBLの醍醐味を感じるわけです。
男視点から見ても、Hシーンがなければ、『憂鬱な朝』はストーリー漫画として読んでもおもしろい。「好きだからなんとなく全て解決!」という部分に逃げず、作者の作品に立ち向かう真剣度が桁外れにすごいと思います。
物語に乱れがないので、しっかり完結するにちがいないでしょう。
2位の『イベリコ豚と恋と椿。』。この作品が発売されるまでSHOOWA先生は、とても作家性の強い、どちらかというと異端児中の異端という存在だったとおもいます。もしかすると男性のほうがその世界観に共感出来る部分が多いのではないかとも思えるぐらいです。
作画、雰囲気ともに山本直樹(森山塔)を彷彿とさせるものがあり、『僕らの三ツ巴戦争』など読んでいると、森山塔のエロ漫画を学生時代に隠れて読んだ感覚が生々しく蘇りました。
お二人とも、世間的に「うまい」といわれる絵ではないのに、シチューエーションがたまらなく背徳的で異常にエロく飽きがこないのです。
SHOOWA先生のブレイクは、男性から見て、女性もこうした感性があるのかっ! と気付かされたかなり革命的な事件だと思っています。
3位の『宇田川町で待っててよ。』は少女漫画以上に乙女なBLです。男女モノでは絶対に成立しえない、キモい攻め・百瀬。彼のようなドロッとした気持ち悪さのあるキャラを最後にはうまくカッコイイ男に仕上げるのは秀良子先生の離れ業の職人芸。2011年にブレイクした新人さんなのにうますぎる!
BLの自由さを徹底的に利用して、キモい攻めと女装趣味のある受けというキワモノカップルを美しいストーリーとして成立させています。
7位にランクイン、そしてBESTあまあま部門で1位をゲットした『彼のバラ色の人生』も、2人の堪え切れない劣情が、控えめな絵なのにダイレクトに画面から伝わってきて、実に気恥ずかしくなります(笑)。これが清純な女の子が相手だと、男としては嫉妬の嵐になるところですが、男だと許せます。
4位『キャッスルマンゴー 2』、5位『空と原』、6位『新宿ラッキーホール』までいずれもストーリー性の高いものが選ばれており、読み込むのに時間はかかりますが、いずれも味わい深いです。
特に雲田はるこ先生の『新宿ラッキーホール』の構成は凝っていて、ボリュームとしては1冊なのですが、まるで二人の半生記を観ているような壮大な印象でした。
昨年は百合サイトをオープンし、百合作品と比較して思うことですが、BLジャンルの自由度と奥深さ、進化のスピードはやはり際立っています。特にキャラクターに複雑な多面性を持たせる技術進化は眼を見張るものがあります。
そしてBL読者の懐の深さに支持されて、さらに表現が追求されているような気がします。数年前は新感覚とされた作品が、今年は普通に上位入賞して、こちらがスタンダード化される。
売り上げ的には別として内容部分に関しては、現在、もっとも魅力あふれるジャンルであると思います。2012年のランキングを見て、それを強く感じた次第です。