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砂原糖子さんが好きで、出版された商業誌は全て読んでいます。 投稿デビュー作品『シンプル・イメージ』は、最近文庫化されたので目にされたかたも多いと思います。これは王道のラブストーリーでした。 ラブコメディのイメージが強い作家さんですが、著作にはシリアスもあります。 砂原さんのユーモア感覚と、さりげないけれど繊細な心理描写が好きでずっと追いかけていますが、彼女の特徴は、主人公に“変わった人”が多いということでしょうか。 多くの作品にそれが当てはまると思います。 設定や舞台の奇抜さよりも、人物が奇抜なことが多い。 “変わった人”と言っても、あるときは吸血鬼だったり、見た目は攻なのに中身は完全に乙女な男の子だったり、心が子供のまま成長が止まってしまっていたり、特殊な能力を持っていたり、性格に難があったり、強迫症を患っていたり・・・とその幅は広いですが、もうひとつ、砂原さんの特徴とも言えるのは、この“変わった人”たちが、ストーリーを読んでいくうちにどんどん可愛く見えてくるところです。 変わった部分というのはその人にとって欠点だったりトラウマだったりするんですが、それがあるが故の不器用さとか人と違う妙な行動が、いじらしさ愛しさ可愛らしさへと変わっていきます。 その“変わっている”ことが、人物の魅力に変化するんですね。 この砂原マジックは、ハマるとクセになります。 中でも魅力的で、おそらく多くの人を虜にするだろうと思うのが『ラブストーリーで会いましょう/上下』の受・恋愛小説家の庭中真尋(にわなかまひろ)29歳です。 彼は「時間強迫症」で、行動の全てを事前にたてたスケジュール通りに行わないと落ち着きません。朝起きてから、洗顔、食事、仕事、人と会うこと、休憩、風呂、就寝は元より、帰宅時間をきっちり合わせるためには乗ったタクシーの速度にまで口を出し、性欲処理に関してもしかり。 そんな庭中のお相手の攻は、よく言えば明るく大らか、悪く言えば大雑把な年下の編集者。 編集と作家として出会った二人は、その正反対の資質からズレまくり、恋人同士になるまですったもんだを繰り広げます。 あまりに時間にこだわりすぎる庭中は、そのせいで人付き合いも上手くなく恋愛も未経験で感情表現も下手なのですが、攻に惹かれはじめても、その性格のため言動がズレていて誤解されてしまいます。 慣れない恋愛に自分のことさえよくわかっていない庭中の言動のトンチンカンぶりは本当におかしいのですが、同時にこんなに可愛い人はいないなと思わせられると思います。 このあたり砂原さんの本領がMAXで発揮されてます。 ここにひとつひとつ挙げられないのが本当に残念。 やること言うこと一つ一つがこれほど可笑しくて可愛い受はそういないと思いますよ(笑)。 そういうキャラを創れる感性が、砂原さんの魅力かと思いますが、特にこの作品は、好き嫌いなくたくさんの人に受け入れられるだろう、オススメしたい作品です。 残念なことに現在手に入りにくいのですが、同じレーベルの投稿作品が文庫化されたことですし、是非こちらも・・・?と期待しています。 もし見かけたら、何はともあれ抑えておきましょう!
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