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「箱の中」の続編で、2006年6月の雑誌「ダ・ヴィンチ」でBL芥川賞にえらばれた作品です。前作「箱の中」は「罪」をテーマに書かれていましたが、この「檻の外」のテーマは家族です。 「箱の中」で喜多川に居所を告げずに別れてのち6年後、再び喜多川と堂野が出会うところから、物語は始まります。 喜多川は再び堂野を手に入れられると、喜んで会いに来ますが、そこには結婚し、一人娘と妻との慎ましい生活を送っている堂野がいます。堂野を自分だけの物にしたいという、まるで母親を求めるようにすがりつく喜多川の想いがわかるだけに、堂野も喜多川に対して冷たい態度を取ることができません。 家族になれないから、友人でいたいという堂野の取引的な考え方を、喜多川は理解できません。喜多川の求めるものは、ずっと側にいて自分を愛してくれる存在だからです。 それでも少しでも家庭の温かさを味わわせてやりたいと、手料理を振る舞う堂野に、だんだん心を開いていく喜多川。そして…… (ここからネタバレあり) そんなとき堂野の一人娘の穂花の誘拐事件があり、遺体が見つかります。そして、一番に疑われる喜多川の存在。 無理矢理犯人にされそうな喜多川を守ろうとする堂野に、犯罪者を家のなかに招き入れていたと不信感を感じる妻。確固たる関係であったはずの家族関係が傾ぎはじめます。 そして、真犯人が浮かび上がったことで、発覚する妻の不倫。堂野のことを愛してはいるが、退屈だったから、つい浮気してしまったという妻の言葉に、家族というつながりがなんと脆弱な関係であったか突きつけられます。 愛しているとすがりつく妻、寂しくて一緒にいたいとすがりついてくる喜多川。堂野には、何を信じて良いのかわからなくなり、逃げ出すように喜多川の手を取ることとなります。 堂野のなかに母親や味わうことのなかった幸せを求め、無意識のうちに愛される子どもを体験したがっている喜多川、そしてそれをかなえてやろうとする堂野の優しさ。家族とは、恋人とは、を深く考えさせられる作品です。
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