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私がこの本と出合ったのは、BL商業誌を自分で買うようになって間もないころだ。当時運営していたBLNOVELサイトの更新記録代わりに利用していたBlogに日記や更新記録に混じって、BL本の感想が少しずつ増えて来たころこの本と出会った。 そのころ、私が商業誌で活躍している作家さんでまともに名前のわかる人は英田サキさん……それくらい他の作家さんは漫画も小説も全てにおいて未知の世界だったのだ。 ひちわさんももちろん初めての作家さんだ、面白いのかどうかも全くわからず、イラストの雰囲気とあらすじを読んだだけで賭けをする気持ちで購入。出版社がBL物の商業誌としては当時大手のビブロスであるという事も何もわかっていなかった。 作品の内容を簡単に説明するとこうだ……。 ノンケ男でもイチコロの笑顔の持ち主久住新(くずみ あらた)はその笑顔に反してハバネロ級の毒舌家。ルフィージュというカフェでフロアマネージャーをする新の店に近くの高層ビルの最上階に住む実業家の眞宮春臣(しんぐう はるお み)は好きな相手にこそ気持ちとは裏腹な態度を取ってしまう天邪鬼。 初めての出会いは最悪で、もう2度と会うことも無いだろうと思っていた二人だったが、なぜか新は自分の招待を隠したまま眞宮のマンションに毎日食事を届ける事になる。 顔を合わせば意地の張り合いで喧嘩ばかりの二人なのに、お互いの顔が見えない暗闇のキッチンではなぜか素直になれる……。そんな不器用な二人の恋物語。 毒舌家と天邪鬼。会えば喧嘩ばかりでどう頑張ってもLOVEには発展しそうに無い二人なのだが、そこに眞宮の両親が健在だった頃から彼の家に仕えている老秘書の多岐川が加わり眞宮と新の関係を陰になり日向になりとりなすことでじれったいながらも少しずつ二人の関係に変化が見え始める。 新が眞宮の元に素性をかくして食事を届けるようになったのも、多岐川の采配だし、本当は新のことが好きなのに、彼の前にでると正反対なことばかり言ってしまう天邪鬼な若い主人を諌めるのも多岐川の役目。 小さいころから眞宮の側にいて何もかも承知の多岐川には眞宮も頭が上がらず、孫とお爺ちゃんな関係の二人のやり取りに読んでいて始終笑いっぱなしであった。 当時の感想の冒頭にはこう書いてある。 「わはは、これ面白かったですv なんでか判らないけど始終げらげら笑いながら読んでしまいました、やや、コメディではないはず……無いはずなのですが……(笑)」 それくらいおもしろく読みながら始終笑ってばかりいたのだ。ただ笑えたからこの本が当りだったとか面白い本だったかと言うとそればかりではないところがこの作品の良いところである、仲が悪いとずっと眞宮が思っていた彼の両親の心温まるようなエピソードや、突っ込みどころは多々あるものの、じれったくもおかしい二人の恋物語、シリアスな部分と笑いの部分の配分が絶妙、そして、ラストにわかる、「新の新事実」……このエピソードもまたこのお話の萌えポイントを上げるのに一役かっている。 毒舌家と天邪鬼、日々の喧嘩は耐えないが、この二人ならきっと大丈夫。そう思わせてくれるラストがまた素敵だ。 笑いあり、涙あり、そして最後には良かったねと微笑める、何度読み返しても飽きない本 新装版になって新しく加わえられた短編も、新視点の話しは優しい気持ちになるし、眞宮視点の話はこれまた笑える。そんな二人の仲むつまじいエピソードは、買いなおすことをためらっていた私の気持ちを一掃させてくれた。 この本は私にとって大当りだった。これを読んだあと、作者さまの他の本も買いあさるほど。そして、生涯忘れられない本でもある、私の書いた感想を読んでこの本を買いましたと、初めてそう言ってもらえた記念すべき本でもあるのだから。
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