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水原とほるさんの作品はちと暴力系が多く、水原さんに限らず、暴力系が苦手な私はためらいましたが、中をパラっと見た感じ、ちょっと違う印象を受けたので久しぶりに手を出してみました。ユギさんのイラストにも惹かれたというのもあるんですけど。ちょっと置いておいて最近読んだら、これは良かったです。 じわ~んと泣きそうになってしまいました。 エリートぞろいの実家からは縁を切っているものの、34歳の隆次(攻)は仕事も経済的にも順風で、相性のいいセフレもいて、快適な独身生活を送っています。 そこへある日突然、親族中、自分と同じように「放蕩」である叔父・連(れん)がやってきて、19歳のイタリア人と日本人のハーフ、アズ(受)を二ヶ月間という期限付きで押し付けていきます。 快適な一人の気侭な生活に突如加わった他人の存在は隆次を苛立たせます。 隆次はゲイだとは言っても、見た目15~6歳にしか見えない子供っぽい容姿のアズには食指も動かない。アズが叔父の愛人だと思うと、その趣味も呆れるばかり。 ただただひたすら「面倒」で、隆次はアズをほとんどほったらかしにしているのですが、それがいつしかアズに惹かれていく。 それこそ「面倒」な関係はまっぴらで、快適で気侭な関係を良しとしていた隆次は、アズに対して父性愛と無償の愛を全開させます。 快適だけれどある意味渇ききっていた隆次の心にアズは「潤い」を与え、隆次を変えていく。 アズは、子供っぽい容姿に片言の日本語しか話せず、絵を描いたりオブジェを作ったりすることには天才的な才能を発揮しますが、普段の言動はとても幼い。 「天使」という描写があるように、その愛らしさ可愛らしさや無垢な心が隆次を虜にしていきます。しかし最初は難民風(笑)。 でも、物語中ではその可愛らしさを殊更強調するような感じはなく、「ほら可愛いでしょ」的なあざとさがなくていい。 どちらかというと「捨てられた仔猫に懐かれてしまい、いったいどうしようか煩悶している」ような隆次のグルグルの方が目につく。 隆次が遅まきながら34歳にして真実の愛を知るお話です。 そして叔父の連の存在感が光ってます。悲しい運命を辿ってしまう連ですが、おそらくオヤジ好きのハートをぶち抜くでしょう。 ユギさんのイラストによる連叔父さんのビジュアルの効果も大きいと思いますが。 久しぶりに「いい話だ~」と思える作品に出会いました。水原さんを敬遠されているかたも読んでみるといいですよ。
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