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サブタイトル『セカンドメッセンジャー』。 ノベルズの文庫化で、現在アクア文庫から三冊のシリーズとして出ています。 「天使のわけまえ」「天使のかたわら」と続きます。 時代は現代・・・だと思いますが、設定にはフィクション的要素も含まれています。 警視庁の独立捜査機関である麻薬捜査チーム、通称“離れ”に新人として配属された真野恭一(受・22歳)。 彼は子供のころ非常に残虐な麻薬事件に巻き込まれて右目を失い、また、麻薬に対して異常な恐れと憎しみを抱くトラウマのせいで、本能的に麻薬のありかを突き止めることのできる特殊能力を持っています。 その能力を生かし真野は次々に麻薬を摘発しますが、単独行動が多く、人とのコミュニケーションも上手く取れないため、チームからはどこか浮いた存在。 上司でありチームのリーダーである八木(攻・32歳)は、そんな真野の心に近づこうとしますが、真野が巻き込まれた10年前の事件の際、その凄惨な現場に踏み込んだのは新人研修時代の八木で、彼もまた、その経験がトラウマとなっていました。 そんな二人がチームとともに麻薬を追いながら、過去の事件を見つめトラウマと向き合っていく。 そして真野の中に生まれた八木に対する誤解を解きほぐし、やがて二人の間に恋愛感情が育っていきます。 しかし、そんな時、再び真野を悪夢に陥れた麻薬が出回ります。 完全に克服したとは言えないトラウマを抱えながら、事件にぶつかる苦悩と恋愛模様。 真野の抱える過去はかなり痛いのですが、傷ついた心を抱える真野を囲むチームの面々が非常に暖かくまた魅力的で、彼らの軽妙な会話も楽しいので、殺伐としそうなのに、ほのぼのとした暖かさを醸し出す、救いとなっています。 彼らが織り成すサイドストーリーも大変楽しいんですが、真野と八木が過去をどう乗り越え、恋人として成就していくのかがやはり注目ですね。 魅力的なのは主人公ももちろんで、真野はクールで無表情で、義眼にカメラを搭載していたり、不可思議な能力で麻薬を探り当てたり、一見非人間的というか、傷つき過ぎて壊れかかっているかのように思えるのですが、彼が少しずつ見せる人慣れない一面や恋愛に初心なところはとても可愛らしい。 また、攻めの八木は自身もトラウマを抱えそれを抑える強さを見せながらも、時々嫉妬に顔を顰めてみたり、理性が抜け落ちて暴走したり・・・落ち着いた誠実な大人の男がチラッと見せる『男』の部分がセクシーだと思います。 このお話は第二部がある予定だそうですが、そちらはチームの同僚と、不思議な多重人格の男のお話寄りになるそうです。こちらがまた面白そう。 警察小説には、個性的な面々が揃い、彼らが事件を追う“捜査一課”が舞台の小説があり、読者はそれぞれその中にお気に入りの刑事がいたり、彼らの個性を生かした活躍を期待したり、やりとりを楽しんだりするわけですが、月夜野さんのこちらも、そんな雰囲気も味わえる作品だと思います。 ハードな内容で深刻ではありますが、読んでみると想像するほど重さは感じません。 むしろ読みやすいし、展開も興味深いのでどんどん読み進んでしまうと思います。
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