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昨年末に発刊された新人作家、鈴鹿ふみ先生の「アクトーレス失墜」です。 この作品には、有りとあらゆるBL要素がもりこまれていると言っても過言ではありません。 調教師である主人公イアンがヴィラの陰謀によって犬に失墜させられ自分が今度は過酷な調教を受ける立場になるのですが・・。恋人との死別、裏切り、陰謀、監禁調教、禁じられた恋、逃亡、別離、そして新しい恋という、壮大なドラマが一つの作品の中で繰り広げられます。 本当にありとあらゆるシチュエーションが盛り込まれているといえるでしょうが、素人がおもいつくままあらゆる物をつめこんだという物ではありません。計算されつくしています。 文章のうまさもさることながら、作品の背景となっているヴィラカプリという世界観がすばらしいのです。 そこは、アフリカにあるという、アメリカ人資本家による秘密結社の組織が運営する治外法権の商業施設。犬という調教された男を売り買いするために世界中の金持ちが集まってくる一大アミューズメントパークなのです。 ヴィラカプリは、総督のもと監察官、財務官、按察官、護民官により管理運営されています。訪れる客も厳選され、その秘密の集いに参加するためにいくら支払ったかにより階級がきまります。もちろん犬を調教するにも、所有するにも多額のお金が必要となります。そして、そのお金の単位でさえヴィラ独自の通貨を設定してあるほどの懲りよう。 広大なヴィラカプリ内部の施設については、巻末に地図や解説文まで詳しく説明がのせてあり、この作者のヴィラカプリへの強い思い入れ、古代ローマ文明への深い知識は、感嘆するしかないでしょう。 ここまで緻密な設定のもとで描かれた作品、おもしろくないはずがありません。その世界観の中で繰り広げられる人間模様は、奥が深く、本当にこういう世界があるのかもしれないという夢をもたせてくれます。 そう、デルフィニア戦記で多大なファンをもっている茅田砂胡先生の作品のようにです。独創性のある世界観に読者がぐいぐい引き込まれるというあの感覚を、鈴鹿先生の作品にも感じます。 今後も、鈴鹿先生には、ヴィラカプリという世界観のなかでずっと書き続けていただきたいとおもいます。
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