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■ 大人同士/秀香穂里/新藤まゆり/Chara文庫 同じゲイバーの常連である小林と時田。 ふたりは同じ大手出版社・央剛舎で働く同期で、小林は月刊小説誌の編集者、時田は営業として活躍している。 多くの共通点がありながらも、恋愛スタイルは正反対で、顔を合わせれば喧嘩腰の会話しか交わさないふたり。 そんなふたりが、ある日、事の成り行きで身体の関係を持つことに。 それ以来、お互いに意識するようになり、仕事に対する姿勢を認め合うようになるが、時田の抱える問題を小林は知ってしまい…。 同じ会社で働いているとはいえ、編集と営業は衝突することも多く、特に小林が携わっている小説誌は赤字続きで営業からは文句を言われてばかり。 営業としてはかなりのやり手だけれど、仕事を離れると毒舌で、二丁目ではその色気たっぷりの美貌で相手を食い散らかしている時田と、仕事でも恋愛でも真面目な付き合いをする小林は、お互いによい感情を持っていません。 身体の関係を持って以来、小林は時田を意識するようになっていきますが、この展開の背景には、二人の仕事への情熱があります。 時田が本当は編集を望んでいるが故に編集部に対する当たりが厳しい事を知り、時田の営業姿を目の当たりにして、小林の中で時田への印象が大きく変わっていく。 同じ業界にいるからこそ相手の能力の高さや抱えている葛藤が理解出来るので、それによって相手に対する感情が変わっていくのは自然の流れ。 恋愛に関しても、身体を合わせたことで時田が意外にも可愛い反応を返してきて、その点でも小林は時田に心を掴まれています。 ゲイバーでは奔放なキャラで通っていて普段は弱いところを見せない時田が、実は仕事に対してはしっかりと強い意志を持っていて、ベッドでは色っぽい。 そんな時田に惹かれないわけがないですよね…! そして、小林の直球な言葉にほだされていく時田がかわいいです。 お互いの仕事ぶりを知っていて、認め合い、尊敬し合える関係が恋愛に繋がっていくのですが、同じ仕事をしているからこそのすれ違いもある、という話が後半の『同僚同士』。 恋人同士となり、一緒に暮らし始めて3年後、念願の編集へ異動となっていた時田は、小林のいる編集部へ配属されます。 野心家の小林は出世のために毎日忙しく働いていて、生活を共にし、同じ編集部で働いていても時田との時間はどんどん少なくなっていく。 そんな中で気持ちもすれ違い、お互いに尊敬し合ったいい関係を築けているようにみえたふたりの関係が変わっていきます。 近くで相手の仕事を見て刺激し合える関係は、同僚としてはとてもいいと思うけれど、恋人同士だとなかなか微妙なところ。 しかも男と女と違って、男同士なので同じ土俵で競い合うわけです。 同じ仕事をしているから理解してくれるだろうという油断や、仕事の充実感が、小林の心を浮つかせていて、二人の心の距離は開いていくばかり…。 一見仕事に情熱を燃やす男の話ですが、その裏で蔑ろにされている部分がどんどん目についてきて、小林に対する印象が序盤とかなり違います。 一方、そんな小林に愛想尽かさず、男らしいところをみせた時田がとても輝いていました。 序盤は恋愛に関しては小林の方がしっかりしていたのに、付き合っていく中で時田がいつの間にかすごく成長していた事を感じさせられる。 同じ仕事に携わることで起こっていたデメリットを、メリットに変えていく過程がとても面白かったです。 秀先生の作品は、働く人間がとても生き生きしていて、恋愛を絡めつつガッツリ仕事が軸になっている作品が多くあります。 社会人である以上生活の中に仕事が占める割合は少なくないので、社会人同士のBLで仕事が原因のすれ違いはあって当然。 特に男同士で、同じ職場だったら尚更です。 秀先生はそうした働く男の恋愛模様を書くのが上手い! この作品は、この後紹介する「他人同士」という作品のスピンオフです。 舞台となっている出版社が同じですが、時系列的には「大人同士」の数年後の話が「他人同士」です。 「他人同士」を読んでいなくても全く問題ありませんが、秀先生の魅力をさらに知りたい方は是非こちらもどうぞ! ■他人同士(全3巻)/秀香穂里/新藤まゆり/Chara文庫(2008年) 大手出版社・央剛社の情報誌『エイダ』の編集者・浅田諒一は、毎日仕事に忙殺されながらも充実した日々を送っていた。 そんな諒一の目下の問題は、同居人を見つけること。 出来れば勝手の分かる同業者がいいと思っていた諒一に、同僚の菊池が押しつけてきたのは新人カメラマンの田口暁。 アパートの取り壊しで困っていた暁を拒むことが出来ず、期間限定で暁と同居することになった諒一だが…。 暁との同居を快く思っていなかったのだけれど、一緒に住んでみると暁は家事全般を器用にこなし、他人との距離もはかることの出来る男で、諒一は次第に心地よく思うようになります。 でも同時に欲望も強くなるばかり。 食うつもりが食われてしまい、ショックを受けながらも、暁との生活を捨てたくない諒一は関係を受け入れます。 でも、本当の意味で恋愛に至るには、乗り越えていかなければならない事が沢山あり、特に、過去の失恋で恋愛不信に陥っている諒一はなかなか一歩を踏み出せません。 お互いに好意を持っているのに先へ進めないふたり。 元々ノンケで「好きだから付き合う」暁に対して、ゲイの恋愛の難しさを知っている諒一は様々な葛藤から抜け出せません。 年下で、社会人としても未熟な暁に自分が「抱かれる」事への抵抗。 いつか別れがきたとき、本気になった分だけ痛みがある事への恐怖。 様々な不安が押し寄せてきて、諒一は素直に暁の気持ちを受け入れられません。 諒一がグルグルと悩み続けていますが、相手に向き合う難しさは男女でも男同士でも一緒で、共感できる部分がたくさんあります。 そして、秀先生らしく仕事の話も盛り沢山。 読み応えたっぷりな作品で、オススメです!
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