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■ ふたご~緋牡丹と白百合~/丸木文華/丸木文華/アズノベルズ 男らしい容姿で頭もよく、医者となった兄の永之助と、兄とは対照的に生まれつき身体が弱く、大人しい性格をしている弟の直次郎は双子の兄弟。 両親からも、妹からも、そして永之助から愛され大切にされている直次郎は、小説家として家族と共に静かで穏やかな生活を送っていた。 そんな中、永之助が軍医として戦地に赴くこととなる。 出征前に永之助から秘めていた想いを告げられた直次郎は、驚きながらも受け入れ、身体の関係を持った。 しかし、復員した永之助は様子がおかしい。 明るく大らかだった永之助は復員後どこか神経質で、特に直次郎に対する態度は冷たく、直次郎は不安な心を抱えたまま日々を送っていた。 そんな中、女性が殺され、肉を剥ぎ取られるという猟奇殺人事件が起こる。 一抹の不安を覚えた直次郎は、事件を調べ始めるのだが…。 という、明治時代頃の日本を舞台にした双子の話です。 告白されて身体の関係を持ったのに、戦争から帰って来たら嫌われているかのような態度を取られて戸惑う弟の直次郎。 元々慕ってはいても恋愛感情には至っていなかった直次郎の気持ちは、離れている間に育っています。 今まで恋愛経験もなく、激しい感情に呑み込まれたこともない直次郎の心が、永之助の態度に振り回され、生々しい感情を知っていく。 悶々とした気持ちを抱えたまま、「もしかしたら永之助の変化と関係あるかもしれない」と追い始めた猟奇殺人事件。 調べていく中で、直次郎は永之助の苦悩を知る事になります。 サブタイトルにもあるように、華やかな緋牡丹としっとり美しい白百合のような対照的なふたりです。 永之助の方は序盤から直次郎に対して並々ならぬ執着を持っている事が感じられるので、後半、抱えていた感情が爆発しても驚きは無いのですが…。大人しくて儚げな直次郎がまさかの大化けでした。 永之助に負けず劣らずの激しい執着を静かに育て上げています。 特に最後に収録されていたふたりの蜜月の短編の直次郎の様子には、たおやかな白百合という印象は変わらないけれど、それが持つ強い香りを認識させられました。 話の持って行き方が巧いですね。 粘度の高い近親相姦というネタと猟奇殺人事件の内容がとても合っていたし、それによって永之助の心情に説得力が加わっています。 大人しく見えた直次郎の中の眠っていた激しさを表現する上でも、事件が効果的に使われていました。 ということで、丸木先生の新刊は双子の近親相姦モノ! 時代設定もよかったし、堅めの文体がジワジワとくる萌えに繋がっていました。 そして何と言っても、テーマがとても美味しい。 近親相姦モノだからこその説得力があって、萌えました。 近親相姦がお好きな方には全力でオススメします♪ ■≠ ノットイコール (2)/池玲文/SBBC 離婚後九州に住んでいる父親・末続果に会いに行った芦塚凉。 幼い頃に会って以来の再会だったのに、挙動不審な果の様子に凉は戸惑っていた。 そんな時、突然凉は22年前にタイムスリップしてしまう。 そこで出会った14歳の果と気持ちを通わせた凉だが、何も説明出来ないまま再び現在に戻ってしまい…。 という、タイムスリップ&近親相姦モノ(全二巻)。 現在の年齢は17歳と37歳で20歳の年の差がありますが、過去では17歳と14歳(途中で15歳)で逆転しています。 タイムスリップという突然の事態に当然凉は慌てますが、果が親戚の「正之」だと勘違いしているのに乗っかり、とりあえずそのまま「正之」として過ごすことに。 両親に反発してひとりで祖母の家に残っている果は、家でも学校でも人間関係が上手くいっていないようで思い悩んでいた。 タイムスリップで心細くなっている凉と、傷心の果は次第に心を通わせるようになり、お互いに友人以上の気持ちを抱くようになります。 凉は父親だと知った上で、それでも抗えない気持ちに押されて行為に及んでいるのに対して、果は何も知らないまま恋に落ちてしまっています。 気持ちが通じ合ったと思った相手が突然消えたことが果にとって大きな心の傷になり、タイムスリップ前の状態に戻ってからの凉との関係に大きな影響を与えることになります。 ひとり苦しんでいた22年という長い時間があるので、今になって現れた凉を果はどう受け入れたらいいか分からないし、何より血の繋がった親子という関係が、家族関係に苦しんできた果を頑なにさせている。 それでも凉が好きという気持ちは手放せないために、受け入れることも、拒むことも出来ない果は動く事が出来ません。 一方、凉は凉で苦しんでいます。 父親だと知っていて関係を持ったものの、その後現在に戻った時どうするかまで考えていたわけではなく、現在に戻ってみると、自分が思っていたよりその事実が大きい事に否応なく気付かされます。 気持ちを伝えることで果を苦しませてしまう。 好きだけれど、側にいるために気持ちを抑え、親子としての距離を取らざるを得ない状況が続いていく。 ふたりの気持ちが痛いほど伝わってきて、読んでいて切なくなります。 膠着状態になっている状態から、どう気持ちの変化が起こるのかが1番のポイントですよね。 結果的に抑えきれなくなった気持ちが爆発して関係が動くのですが、この時点では、前向きな気持ちで選んだ道ではありません。 その後、触れてみたらそこはやっぱり大切で手放せない場所だと再確認した果。 男同士の恋愛は明るいノリでもやっぱり閉鎖的な関係であることが多いですよね。 この作品はそこを正面から突いているので少し重い印象はありますが、私はそこが魅力だと思います! タイムスリップというファンタジー要素を取り入れながらも、男同士かつ血の繋がりというハードルを乗り越える部分がしっかり描かれていて、全体としてはシリアスな作品です。 あとがきの「倫理観には常に懐疑的でなければならない」という言葉が、すごく印象的でした。
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