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■ 神様も知らない/高遠琉加/高階佑/Chara文庫 所轄での勤務を経て県警の刑事部に配属された若手刑事・加納慧介が担当することになった、女性モデルの転落死事件。 ベテラン刑事である流と共に捜査していたが、その過程で出会った時永に何故か流が関心を持ち、慧介は流と共に密かに聞き込みを続けていた。 そんな中、慧介の暮らす祖母の家の庭の手入れを請け負っていた花屋の青年・音澤司と親しくなっていく。 物静かな司の意外な一面を知り、惹かれはじめる慧介。 しかし、司は時永と知られてはいけない関係を持っていて…。 シリーズ第1巻。 主要な登場人物は慧介、司、時永(佐季)の3人で、主に慧介の視点で話が進んでいきます。 転落死事件に司と佐季が関わっている事は合間に入る司の視点で徐々に見えてきますが、佐季が何を考えて動いているのかは司にも分からないので、具体的にはまだ説明されていません。 事件は序章部分で、次第に見え隠れしてくる背景を楽しむのが醍醐味だと思いますので、詳細は伏せます。 慧介は一見健康的な若者ですが、ヘヴィーな生い立ちを抱えています。 実家のある北陸を離れ、祖母のいる横浜の大学に入学し、就職したのもそうした背景があるから。 でも、司と出会い、今まで他人に見せることのなかった内面を自然とさらけ出す事が出来るようになっていく。 それは司の不安定さに導かれた部分も大きいと思いますが、慧介は次第に司に惹かれていきます。 一方の司は、何かしら大きな秘密を佐季と共有していて、隠れるように生きている。 特別な関係で、信頼し合っているはずなのに、自分のことを話さない佐季の心も自分の心も見えなくなり常に不安を抱えている司。 そうした生活の中、どんどん心に澱がたまっていきます。 そんな司にとって慧介はまぶしい存在で、惹かれてはいけないと分かっていても心は止められない。 しかし、このふたりが幸せになるには、かなり大きなハードルがあります。 そして、佐季の存在…。 この巻では佐季の行動の理由がハッキリ書かれていませんが、言葉にしていないだけで、間違いなく佐季にとって司は特別な存在です。 表の世界では勝ち組な生き方をしている佐季の、不器用な愛情表現がもどかしくて切ない。 佐季はどうなってしまうのか? 3人とも危うくて目が離せません。 緊迫感漂う関係は読んでいて辛いですが、このドキドキも魅力ですね。 高遠先生の硬質な文体が雰囲気を作っていて、危ういバランスの人間関係に心が震えます。 そんな高遠先生の作品がもっと読みたいという方には、「世界の果てで待っていて」がオススメ! 残念ながらこちらもまだ未完ですが、心を鷲掴みされること間違いなしです。 ■世界の果てで待っていて -天使の傷痕-, -嘘とナイフ- /高遠琉加/茶屋町勝呂/SHYノベルズ(2005, 2010年) 元刑事で現在は探偵事務所を開いている黒澤統一郞。 ある日、葉室奏という少年が黒澤の事務所を訪れ、失踪した双子の兄・律を探して欲しいと依頼してくる。 同じ頃、黒澤の古巣・渋谷署の刑事である櫂谷雪人が探していたのは、奏と同じ顔をした少女だった。 それを知った黒澤は、律を探すために動き出すのだが…。 律の捜索が軸となっていますが、そこに黒澤と櫂谷の過去と現在の関係が挿入されて話が進みます。 徐々に明らかになってくるふたりの関係に、どんどん惹き込まれてしまう。 黒澤と櫂谷は2年前まで同じ渋谷署の刑事として日々事件に追われる生活をしていたのですが、ある事件を切っ掛けにふたりの関係が変わってしまいます。 今まで交差しないようにしていたふたりの視線が、その日、その事件をきっかけに交わってしまった。 そして、その熱の記憶には蓋をするしかなくなってしまう。 そんな複雑な関係にあるふたりの輪郭が、読むにつれハッキリとしてきます。 男同士の無言の駆け引きと葛藤、そしてその裏にある抑えきれない想い。 黒澤の飄々とした態度に、過去の傷や櫂谷に対する熱い気持ちが隠されていると思うと胸が苦しくなります。 そして、それを知っていてもどうすることも出来ない櫂谷。 常に駆け引きめいたやりとりをしているふたりの危うさに目が離せません。 2005年に「天使の傷痕」初版が出版され、その後2010年に新装版、続巻の「嘘とナイフ」が出版されています。 続編が待ち遠しい!
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