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■ だけど、ここには愛がある/栗城偲/笹丸ゆうげ/プラチナ文庫 幼馴染みの佐宗光輝と付き合い始めて8年。 企業で働く鳴瀬悠馬は、スタイリストとなった佐宗の特殊な性格に時々振り回されながらも、順調に日々を送っていた。 しかしある日、佐宗の部屋に従弟の颯が居候し始めたことをきっかけに、ふたりの関係がギクシャクし始めるのだが…。 ふたりの出会いは中学時代。 当時、ある理由により浮いた存在だった佐宗に興味を持った悠馬が声をかけ、友人となり、悠馬のアドバイスによって佐宗は周囲に受け入れられていきます。 でも、それにより本来の自分の性格を抑え込まなくてはいけない状態になった佐宗は、周囲と友人以上の関係を他人と築けません。 そんな佐宗に、「どんな佐宗でもいいなんていうの俺くらいだから、俺にしておけば?」と悠馬は告白し、ふたりは恋人同士に。 特殊な事情を抱えた恋人同士の話ですが、その事情とは、佐宗が極度のナルシストであることです。 佐宗にとって、本当の自分を見せる事の出来る悠馬は特別な相手。 佐宗は表の自分に惹かれて言い寄ってくる人には心が動かないので、ふたりの仲は安泰です。 でも、その安定した関係故に、佐宗は悠馬についてちゃんと考えたことが今までになく、今回ちょっとしたところから関係が不安定になった事で大きく揺らぐことになります。 ずっと恋人同士だったにも関わらず、それまでの佐宗が意識していた気持ちは、悠馬に映る自分に恋していたみたいなもの。 もちろん、無意識の中ではちゃんと悠馬を大切に思っていますが。 自分の気持ちがどんなものだったのか、トラブルに遭遇したことでそれをようやく自覚し始めるというストーリーです。 予想以上に斜め上のナルシストの思考に吃驚して、そして「なるほど、そういう思考回路か!」と納得させられました(笑) 途中、佐宗がようやく悠馬に惹かれている自分を自覚するようになるのかな?と感じる展開が訪れるのですが、そこで相反する行動をとる佐宗…。 何故?!と、その流れに最初は違和感があったのですが、読み進めると佐宗にとってはちゃんと理由があることが分かります。 ナルシストの佐宗だからこその思考回路! でも、悠馬と向き合わない限り問題は解決しません。 悠馬にとっては大迷惑でしょうが、無駄に足掻いて状況を悪化させているお馬鹿で不器用な佐宗が愛おしくなってくるから不思議…。 悠馬のキャラもよかったです。 健気だけど譲れないところはしっかり持っているし、ダメな佐宗を本気で好きだという気持ちがちゃんと伝わってくるので好印象でした。 そして、脇カプも美味しいー! 佐宗の従弟である大学生の颯と、後輩であり恋人である流星の短編も収録されていました。 颯は生意気な発言をしつつも小柄で可愛い容姿。 本編の中でちらりと出てきていた通りマッチョで大柄な体格から想像されるイメージとは反して、性格は乙女思考なところがあり、攻なのに尻に敷かれている流星。 見た目と関係のギャップが大きいこのカップル。じっくり読みたいです。 ということで、栗城先生の新刊はナルシストな攻が繰り広げるラブコメディでした。 ナルシストを萌えネタとして使っているだけじゃなく、しっかりナルシストの思考を恋愛に結びつけているので、特殊な設定にも関わらずうまくまとまっています。 恋人が自分から離れていくことがあるなんて想像もしていなくて、優しい恋人の存在に甘えて相手を思い遣れていなかった事から訪れた危機。 佐宗の場合は極端ですが、普通の恋愛でも似たような状況はあると思います。 意外にも一般的な恋愛の話にも通じるところがあるので、すんなりと話を受け入れる事ができるのではないでしょうか。 萌えもあり、キャラも個性的で面白かった! 読んでいて楽しい作品でした。 続いて紹介するのは、「ナルシスト」繋がりでこちらの作品。 ■先輩の焦れったい秘密/バーバラ片桐/巴里/リンクスロマンス(2007年) 税務署の法人課税課に勤務する芦屋が想いを寄せるのは、先輩の森。 猫系の女顔で、色気のある美貌。そんな森は当然人気があるが、女性との付き合いには消極的。 芦屋はその理由を問い詰めるが、それは「自分が好きだから」という思いがけないものだった。 ナルシストな森を崇拝する後輩を演じながらも、芦屋は森への想いを抑えきれなくて…。 ナルシストな受…! すごく新鮮でした。 森は自分が大好きなのですが、それが嫌みじゃなく可愛いです。 森は男なので、当然面と向かって身体のラインが綺麗だとか褒められることがほとんど無く、褒められることに慣れていません。 だから褒められることは好きだけれど、褒められて喜ぶ自分が少し恥ずかしい。 そんな仕草がいじらしくて萌えます。 芦屋は森のそんな姿に惹かれていきますが、芦屋にとって森は後輩であり、仕事ではライバルであり、そして自分を崇拝する人間という認識しかありません。 どれだけ芦屋がアピールしても、森が芦屋に「自分のことを好きになってもいい」という許可を出しても、それは森を賛辞してもいいという許可でしかない。 可哀想ですね、芦屋…。 でも我慢し続けた結果、芦屋がとてもよい攻になっていました! 自分の崇拝者である芦屋の言葉攻めに翻弄されていく森が可愛かったです! ナルシストや女装など、イロモノっぽいネタですが、意外にもそこまでアホエロな展開ではありません。 森がナルシストになった理由もそれなりに納得できるものですし、芦屋の苦労も微笑ましいです。 そして、この作品は美味しいエロもいっぱい詰まっているので、萌えを求めて読んでも満足出来る1冊なのではないかなと思います! 「だけど、ここには愛がある」と同じくナルシストという要素が取り入れられている作品ですが、ナルシストが攻と受で違うということもあり、作品の印象はかなり異なります。 どちらもオススメ!
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