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カッコいいヤクザものはたくさんありますが、私が「惚れた」と明言できるのは「桐生政一さん・30代前半(攻)」です。 『緋い月』の舞台は明治の頃。 経済ヤクザなんて影も形もない、こちらは「任侠ヤクザ」ものです。 作者の池戸裕子さんは著作100冊以上、リーマン、ヤクザ、業界ものなどとにかく幅広く、いろんなタイプのお話を書かれています。軽いものから優しいお話、不思議な話、ハードな話などなど……。どなたにでも、どれか一つは好みに合うお話がありそうな作家さんですね。 ヤクザものもたくさん書いていらっしゃって「50/50」も個人的にはオススメですが、今回は悶え萌えまくったこちら。 父亡き後、一家を継いだ武居七弥(受)は、一家の賭場でイカサマを見抜いた政一と出会います。 どこからやってきたのか素性のわからない謎めいた寡黙な流れ者、それが政一。 着物の裾を捌き「姓名の儀は、桐生政一。通り名を百鬼の政と申します。しがなき者にござんす。」なんて口上だけで冒頭から萌えが炸裂しました。 この「不器用ですから」を地で行く政一が、七弥に頼まれて一家に逗留し一家に起こる闘争や陰謀において七弥を助け働く。 一家を助けてくれたことから一応客人扱いなのですが、「なんでもします」と言って七弥に仕え、組を守り立て、他の子分たちからも慕われる。 まだまだ未熟な七弥は男気溢れる政一にやがて憧れや信頼以上の気持ちを抱くようになっていくのですが、そのあたりの心理描写も丁寧に書かれていてよく伝わってきます。 背中に百鬼の刺青を背負い、多くを語らない謎めいた政一の正体や、それに絡む事件、七弥の成長など、うまく絡んできますね。展開も飽きさせないと思います。 しかし何と言ってもやはり政一のカッコ良さが秀逸です。 BLでは珍しいことに、政一は愛する人(七弥)のために指を詰めてしまいます。さすが任侠・・・というか「なんちゃってヤクザ」には決してない、この“潔さ”。 刀の前に身体を晒すことも厭いません。文字通り身を挺して愛する人を守ります。 しかし多くは語らない。 愛をひた隠して任侠の世界に生きる男の姿にはホレボレします。 そしてそんな男に惚れた七弥の切ない思いにも、途中涙腺がウルんでしまいました。 面白いBLはたくさんあるのですが、心底萌える作品というのはそうしょっちゅうは出会えません。もちろん「萌え」は個人的なピンポイントなので万人が同じように萌えるとは限りませんが、少なくとも私はしばらく余韻から抜け出せなかった印象深い作品です。というか読んでる最中から身もだえしてたんですけどね。 もともと明治~昭和初期あたり設定の話が好きということもありますが、受が親分、攻が子分という立場なので下克上萌えも押さえてますね。“下克上”も好きなんですよ(笑) 政一が「一生あなたについていきます」と誓う「親子血縁盃の儀」は、神聖な婚礼のようで感動しました。 強い男が頭を下げて、身も心も尽してくれる。こんなに気持ちのいいことはないですね(笑) できたら二人のその後が読みたいです。
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