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■ ダブル・バインド (4)/英田サキ/葛西リカコ/Chara文庫 東京湾に近いある公園で見つかった死体。 故意に餓死させられたと思われ、さらに男性器が切り取られていた。 捜査にあたることになった警視庁捜査一課の刑事・上條嘉成は、第一発見者の少年・真宮祥の保護者として現れた、高校時代の後輩・瀬名智秋と16年ぶりに再会する。 アメリカでクリニカル・サイコロジスト(臨床心理士)として働く瀬名は、病気の母親の見舞いに訪れた祥に付き添い来日していた。 高校生の頃少女のような中性的で線の細い美少年だった瀬名。 外見も内面もすっかり変わっていたが、上條は捜査という形で関わっていく中で次第に瀬名に惹かれていく。 今になって知った瀬名の過去や、勢いで交わしたキス、それはいつしかふたりの関係を変えてゆき…。 シリーズ最終巻です。 上記のあらすじは1巻の冒頭部分となっています。 これ以降、重要な部分のネタバレを含まないよう注意はしましたが、未読の方はご注意くださいませ。 事件を追う刑事である上條と、上條の高校時代の後輩である瀬名。 瀬名の従兄弟で暴力団の若頭・新藤と、同居している愛人・葉鳥。 この二組の恋模様が、事件に関わりつつ展開していく形になっています。 恋愛だけでなく、サスペンスとして読み応えのあるシリーズでした。 犯人は誰なのか? 動機は何だったのか? 次々と隠されていた真実が明らかとなり、上條が抱いていた違和感の謎が解けていくのですが、同時にそれは上條にとって悲しい結末を迎えることに。 強い憎しみの中にあるのは、悲しみと悔恨です。 事件だけでなく、その後事件に刺激され記憶を取り戻していく祥の中にも同じように大きな悲しみがありました。 不条理な出来事により生み出された悲しみが憎しみとなって復讐の道を選ぶ事になったり、抱えきれない悲しみにより精神を病むことになったり、不幸という言葉で説明してしまうには重すぎる真実がいくつも隠されています。 最終巻の前半は次々と明らかになる内容と事件の緊張感溢れる展開に、息をつく間もなく一気に読んでしましましたが、意外にもページ数的にはそこまで多くありません。 そこから瀬名と上條の恋愛へシフトチェンジして、事件以外の人間関係もしっかり読ませる展開になっています。 新藤と葉鳥も…思いがけない背景が隠れていました。 それを知った後読み返すと、新藤の葉鳥を想う気持ちがいたるところの言動から感じられて、新藤の印象がかなり変わります。 そして、弱いところを見せず、新藤のためなら死ぬ覚悟だった葉鳥が、ギリギリの状態になってようやく自分の本当の気持ちに気付き、新藤に告げたセリフには泣かされました。 このふたりは恋人同士になってからの話でしたが、瀬名と上條は付き合うのか付き合わないのかという所でジタバタしています。 なかなか心を決めない瀬名が焦れったいのですが、ここまで来るとツンツンした言動の裏にある気持ちが読んでいて分かってくるので、臆病で素直になれない瀬名がとても可愛い。 上條が少し強引にいけば、瀬名も「しょうがないな」という形でガードを緩められるのに、上條も真面目なので…。 焦れったい!だけど、そんなふたりがいい! 受け入れると決めたら懐の深い上條と、臆病で素直じゃないけど情の深い瀬名は、きっと喧嘩をしつつよい関係を築いていくのだろうなぁと思います。 毎回ワクワクしながら読んでいたこのシリーズもついに完結してしまいました。 最終巻は、期待通り、いやそれ以上の面白さ!! BLとしてだけでなく、サスペンスとして読み応え十分。 読み終えてもしばらく興奮が収まりませんでした。 事件と恋愛がバランスよく繋がっていて、二組登場しているにもかかわらず、事件を軸にした人間関係と心理描写がうまくまとまっているなぁと思いました。 このシリーズ、特に最終巻には悲しみが溢れています。 悲しみ、憎しみを乗り越えようとした結果は様々で、すべての人たちが幸せになっているわけではないけれど、それぞれに新たな道を歩みだしているので明るい読後感でした。 これで終わりなんて…とても寂しいです。 英田先生、ステキな作品ありがとうございました! ■夜明けの犬/嶋二/ダリアコミックス 高校の先輩で同じ会社で働いている田中明のアパートに居候している小乾暁。 しっかりしている先輩だと思っていた明は意外と抜けていて、そんな明の世話をすることが暁の日常になっていた。 そんな中、明が長年付き合っていた彼女との関係が上手くいっていない事を知り、酔った勢いもあって暁は手を出してしまう。 明に惹かれていることを自覚している暁は、気持ちが伴っていない関係に苛立ちを感じるようになり、明と距離を置くことを決めるのだが…。 という、先輩後輩という関係から発展する恋の話。 明の心に出来た隙に暁の独占欲が入り込んで、身体の関係は進展していくけれど、お互いにそれを言葉で確認することはなく、悶々とした気持ちが募っていく。 セフレのように割り切った関係にもなりきれず、気持ちを確認したいけど確認したら終わってしまいそうで怖くて踏み込めない、という微妙なバランスは読んでいてドキドキさせられます。 素直に気持ちを伝えられないふたりがもどかしくて切ない。 そして、兎にも角にも明がとても可愛かったです。 短髪眼鏡はいいですね!! 普段のスマートな印象から、少し崩れただけで一気に脆そうな表情が出てくるのがたまらなく萌えます。 嶋二先生の新刊は短髪黒髪眼鏡受が美味しい1冊でした。 好きなのに伝えられない暁と、心揺れていて不安定になっている明、両方の気持ちの動きにドキドキさせられました。 嶋二先生の描く短髪美人受は毎回萌え転がりますが、今回も美味しくいただきました!
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