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■親友の距離/杉原理生/穂波ゆきね/キャラ文庫 塚原進一にとって一ノ瀬七海は、唯一心を許せる親友だった。 だけど大学時代のある出来事で、普段通りのやりとりをしながらも互いに負い目を感じ、卒業後は疎遠になってしまっていた。 そして数年後、仕事で偶然再会した進一と七海。 どう接していいか分からない進一だったが、七海は「昔のことは忘れてくれ」と言い、ふたりは以前のように親しい関係に戻っていく。 でも、時折垣間見える七海の不安定な部分が、進一は気になりながらもそれ以上踏み込めない。 近づいたようで遠いままの七海との距離に、進一の心は揺れるのだが…。 という、再会モノ。 ずっと親友だったけれど、七海が進一を好きだと告げてしまった事で、親友の距離を保てなくなり、疎遠になってしまっています。 進一はあからさまに拒絶したわけじゃないけれど、突然の事に受けとめる事も出来ず、互いにしこりを残したまま離れてしまった。 そんな事があっても進一にとって七海はやっぱり大切な存在で、再会後、その行動が七海を不快にさせているかもしれないと思いつつも、以前と同じような関係に戻りつつある事を喜んでいます。 そうした中で、過去を振り返り、以前は踏み込めずにいた七海の心を知り、そして七海をどう想っているのかを自分自身に問う事になる進一。 当然七海の心も大きく揺れているので、進一が自分の心に気付いたからからといって簡単に上手くいくわけではありません。 年齢を重ねた分、「好き」なだけでは動けない。 ふたりの揺れる心が読んでいて切なかった…。 もどかしくて焦れったいからこそ、気持ちが通じ合った瞬間の感動も大きいです。 ちなみにこの作品、表題作は進一視点で書かれているので心理的に進一の方が共感しやすいのかと思いきや、私の心はほとんど七海に持って行かれました。 七海の心情は進一を通した描写でしか分からないのに、七海の気持ちが痛いほど伝わって来て苦しい。 進一が特別鈍いとか、酷いことをしているわけでは全然なく、関係がぎこちなくなった原因は、元を辿れば七海の自爆だったりする。 この七海の揺らぎや不器用さが愛おしくなってきます。 隠そうと必死になりながらも、でも心のどこかできっと無意識のうちに「気付いて欲しい」「受け入れて欲しい」という期待も七海のなかにきっとあって、だからポロッと不用意な言葉を口にしてしまったり、気持ちが表情に出てしまったりして、隠しきれない。 友情と恋愛の間で悩み、すれ違い、気持ちを打ち明けられないまま苦しんだりする展開はBLでは珍しくないパターンですが、互いを大切に思っている関係に毎回泣かされます。 兎にも角にも、七海がとてもかわいい! 話も面白いけれど、七海のこの可愛さにグイグイ惹きつけられます。 気持ちを隠そうとしているのに隠しきれなくて、時々垣間見せてしまう仕草や表情が全身で「好き」と言っているのですよ。 もちろん文字なので実際には見えませんが、そんな七海が目に浮かんでくる。 こんな七海を前にして心が揺れているのに、なかなか自分の気持ちを自覚しない進一が焦れったくて仕方なかったです。 でも、一旦その気持ちを認めたら進一は迷わない! 素直になれず素っ気ない態度になってしまう七海に対して、進一が程良い強引さで突き進んでいってくれてよかったです。 恋愛が始まる時のドキドキが、切なくて焦れったくて、そして甘い1冊でした。 相手の好意が見え隠れしているのに、簡単には上手くいかないふたりのやりとりに、読んでいるこちらの心も揺すぶられます。 甘いけど、過剰な甘さじゃなくて、控えめにジワジワくるそんな甘さ。 穂波先生の挿絵もピッタリです。 ■知らぬは おまえばかり/ミナヅキアキラ/バーズコミックス まずは各短編の紹介を簡単に。 『知らぬはおまえばかり』 『神のみぞ知る』 大学の頃からのセフレである芳川泰紀に惹かれている小宮和有希は、関係を続けていくことを苦しく感じるようになっていた。 別れを決意した小宮だったが…。 本気だからこそいろいろな事が怖くなって、先回りして自分から別れを告げるという展開はよくありますが、小宮の揺れる心がじわじわと伝わって来て、一緒になって胸が痛くなります。 『だから顔も見たくない』 『なのに手も触れられない』 高校生最後の夏休み、ずっと親友だった唯から突然告白された武。 大切な友達だったからこそそれを受け入れられず、唯と距離を置く武だったが…。 一緒にいたい=恋愛感情とは限らないですよね。友情と愛情の境目って難しい。 『おとなりから恋のおと』 『みんなのおと』 隣人の騒音に悩まされていた古川が勢いに任せて苦情をぶつけてみると、予想外に相手はいい人だった。 それ以来、その隣人・小野と親しくしていた古川だったが、いつの間にか小野が気になる存在になっていて…。 おっとりした雰囲気のバンドマン×初々しい新社会人のサラリーマン。 シンプルな話だし、早とちりして云々はお約束な展開だけど、キャラの表情が可愛くて最後まで面白い! -- 昨年出た「この夜のすべて」で注目していたミナヅキ先生の新刊でしたが、期待通り、いやそれ以上にとても面白かったです! 実は密かに、前作はシリアスで設定が嵌っていたというのが大きかっただけで、次の作品が面白いかどうかは分からないなぁと思っていました。 でも、良い意味で予想を裏切られた! シリアス寄りもあるけれど全体的に明るい話で、前作のような行間を読んで雰囲気を察するような漫画の作り方ではなく、ちゃんとモノローグやセリフが過不足なく配置されている。 幅広く描ける作家さんなのだなぁと感じました。 エロもしっかり萌えるし!!(とても大事) そして何より、キャラの表情がいいですね~。 短編でも話はしっかりしていて、キャラが魅力的なので、最後までじっくり楽しめました。 オススメです!
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