total review:278199today:16
ゲストさん
無料会員登録
ログイン
ヤクザというより、極道BL小説です。 北日本を支配する木賊(とくさ)組の組長の一人息子 木賊烈は、おとなしく、暴力を嫌う17歳の少年です。組の後継者の重圧に萎縮してしまうような気弱な少年が、父親の死による跡目争いに翻弄されていきます。そんな中唯一心を許し慕っていたのが組の若頭 黒羽周次でした。 しかし、黒羽も放逐され、幹部に蹂躙される日々で、自分が黒羽を慕う感情が同性を求める感情だと気付きます。 このシーンがとても印象的に描かれています。雪の降る日に寂しさから黒羽に会いにいったのに、黒羽のそばの女の存在をかぎ取り寂しかったと言いだせません。 「蝋梅はいつ咲くの」としか聞くことしかできず、雪道を再び幹部の待つ家に帰るのです。 助けてほしいのにすがれない寂しさ、投げた雪玉が坂を転げ落ちる様子に自分を重ねて、非力な自分ではどうにもできないせつなさが描かれ、名シーンだと思います。 黒羽は、実は統合を目指す広域暴力団 天堂会から送り込まれていたヤクザだったのです。天堂会の傘下に入ることで木賊組は事実上崩壊し、烈を束縛していたヤクザのしがらみから解き放たれるはずだったのに、結局周次を求めて東京へ向かい、周次の元で暮らすことになります。 (ここからネタばれ注意!) 多忙を極める黒羽との生活で宙ぶらりんの自分をもてあまし、孤独感から新宿2丁目に足を運び敵対する組に拉致される烈。しかし自分へのコンプレックスから黒羽に助けを求めることもできず、性玩具として犬と入れ墨を入れられてしまいます。 黒羽はそんな孤独感もコンプレックスもまとめて受け入れてやると烈に告げ、やっと烈も居場所をえることができますが、2年後黒羽は、烈の目の前で爆殺され、烈の時間は止まってしまいます。 烈にとって、黒羽はその人がいないと生きていけないほどの存在で、その後のストーリーは、黒羽の元へ向かうための身辺整理です。 ラストを潔いと想うか、救われないと思うか別れるところですが、一人の少年が命をかけて愛を貫き通した、成長の物語だということに間違いありません。 流されるままに何もできないと劣等感にさいなまれていた少年が、自分の生きる道をしっかりと選び取るまでに成長したのです。 黒羽の人柄から言うと、決してそんな最後を望んではいなかったでしょうが、名前のままうちに秘めた激しさもつ烈は、自分の始末は自分でつけるといういかにも極道らしい終わり方を選択することで、自分で自分の幕をおろすのです。
Copyright 2008~ © All right reserved,BLサイト ちるちる