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■ 運がいいとか悪いとか/館野とお子/ダリアコミックス 入社して3年間、ずっと国富と一緒に仕事をしている岡田。 仕事は出来るけれどどこか抜けている国富に、岡田はいつしか惹かれ、抱かれたいと思うようになるけれど、それは頭の中だけの話。 実際に行動に移して気持ちを伝えようとは思っていない。 しかしある日、飲み会で一緒になった別の部署の社員・加賀谷に声をかけられたことで、妄想が妄想じゃなくなってしまう。 岡田が国富に想いを寄せていることに気付き、それをネタに軽いノリで岡田に誘いをかけてきた加賀谷。 迷った末加賀谷と身体の関係を持った岡田は、今まで妄想だったからこそ留めておくことのできた国富への気持ちの変化や、自己嫌悪や、いろいろな感情に揺れることになるのだが…。 好きな人がいるのに他の人と関係を持ってしまう展開は、BLだと珍しくありません。 男同士だから好きでも行動に移せない。 自分がノーマルであれゲイであれ、好きな相手がノーマルの場合、男同士の壁は高いですよね。 友人とか会社関係の人とか、玉砕しても関係が続いてしまう相手なら尚更。 でも、恋愛の成就より近くにいることを選んで諦めていても、好きだったら当然寂しい気持ちも当然あり、そんな心の隙間に入り込まれたらグラグラしてしまうのは仕方がない。 ただ、岡田の場合、男同士のセックスを知ったことで、妄想の世界にあった国富とのセックスがリアリティを持ってしまいます。 今までずっと気持ちを隠していられたのに、加賀谷との関係を持てば持つほど国富の前で感情を抑えるのが辛くなっていく。 この展開がすごく上手いなと思いました。 岡田の容姿は普通で、特別モラルが低いわけでも、潔癖なわけでもない普通のサラリーマンです。 そんな岡田が、いつしか自分の恋愛感情に振り回されていく様子が伝わってきて、読み手も一緒に胸がギュッと締め付けられていく。 「ただ 好きだっただけだったのに」というモノローグが切ないです。 この話、岡田は最後にずっと好きだった国富とくっつくのか、それとも当て馬・加賀谷にほだされるのか、どちらに転がるのかずっと分からずドキドキさせられました。 ここではその結果は伏せますが、国富も加賀谷も、この三角関係によって心が揺れ動いています。 加賀谷は、分かりにくいけれど加賀谷なりに岡田に本気で、それは最後まで読むとよく分かる。 国富は、この中では一番恋愛感情に気付くのが遅いですが、特別鈍いわけではなく、これが普通の反応なのだと思います。 関わり合いの中で、「好き」という気持ちのベクトルが少しずつ変わっていく。 恋愛において、タイミングは重要なのだなと改めて感じさせられる話でした。 ということで、館野先生の新刊です。 作品の雰囲気は絵柄も含めどちらかというとあっさりしているのですが、3人の関係がどうなるのか、ドキドキワクワクさせられる作品でした。 岡田、国富、加賀谷、どの人物も悩んでいて、それぞれの視点で読み返してみると、また違った一面が見えてきて面白い。 オススメです! ■王様のベッド/草間さかえ/BBC 短編3話収録。 『王様のベッド』 ケーブルテレビの会社に勤める古賀は、ある日修理依頼を受けた山奥にある家に向かった。 どこか不思議な家の住人は、遠野という無愛想な彫刻家。 大雪で帰れなくなった古賀は、遠野の家に泊めてもらうことになるのだが…。 少し浮世離れした遠野はある事情で狭い世界で生きているのですが、そこにやってきた闖入者・古賀に興味津々。 でも、本人もその興味がどこからきたものなのか自覚していないし、感情が表に分かりやすく出るタイプでもないので、古賀もどうしていいか分からない。 そんなふたりの距離感が変化していく様子が微笑ましいです。 どんどん見えてくる遠野のちょっと幼いところが可愛くて仕方ない!! 弟がまたいい味出してました(笑) 『さくらんぼ』 生徒会の仕事が忙しい上野。 クラスメイトとの付き合いも少ないが、玉川は親切で、いつも飴をくれる。 さくらんぼ味のその飴の意味を、知りたいと思う上野だったが…。 あからさまな欲求じゃなく、形があるようで無い淡い感情のやりとりをしていて、距離が近づくと一気に体温が上がるような関係が眩しい。 玉川のドキドキが伝わってきます。 『花』 花壇の世話をしている小津と、ある日九門が交わした会話。 それをきっかけに芽生えた互いへの興味は、思わぬ方向へ発展し…。 ある事件を起こした小津は真実を胸に秘めたまま傷つき悲しんでいる。 事情を知らないながらもそれを感じている九門は、追求せず小津を受け入れています。 不思議な関係の中で、小津が不器用ながらも心を整理していき、九門が小津を理解していく過程が面白い。 九門と同じように、読んでいるこちらもどんどん小津の抱えているものが見えてきて、小津から目が離せなくなってしまいました。 -- ということで、草間先生の新刊です。 草間先生の話の中にはハッとさせられるセリフがあって、序盤に出てきていた伏線や、登場人物の言動の裏にあるものに気付かされたりすることがよくあります。 読み返せば読み返すほどジワジワと味が出て来て、キャラへの愛着もどんどん増していく。 そして、直接的な表現がなくても色気があり惹き込まれます。 収録されている3話ともそんな草間先生の魅力が存分に出ていて、期待を裏切らない満足の1冊でした!
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