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■悪魔憑きの男 /沙野風結子/高宮東/SHYノベルズ 天使憑きたちを襲うため、教会で行われる儀式の襲撃を計画していた叶枝率いる悪魔憑きたち。 だが、天使憑きの聖良の介入もあり、その計画は失敗に終わる。 その際教会から逃げ出した聖良だったが、人間社会に入る事も出来ず山の中で一人息絶えようとしていた。 しかし、そこへ現れた悪魔憑きの叶枝昌平により聖良は命を助けられる。 瀕死の状態だった聖良は叶枝たちの組織に軟禁され、心も身体も弄ばれることになるのだが…。 「天使憑きの男」のスピンオフ。 あらすじからも分かるようにかなり特殊な設定で、ストーリーも前作を踏まえているので、前作を先に読む事をオススメします。 天使のような翼は持っているけれど、『天使憑き』は天使ではなく、同様に『悪魔憑き』も悪魔ではありません。 『天使憑き』は罪を喰う、つまり喰罪(贖罪)する存在で、教会は密かに『天使憑き』を集めて喰罪を行わせている。 悪魔憑きは天使憑きと違って喰罪する能力はなく、それ故に子供の頃から教会で苦しい日々を送っていた悪魔憑きたちは、天使憑きの存在を激しく憎くみ、力の強い叶枝を中心にして集まり天使憑きを狩ろうとしています。 何故そこまで憎んでいるのか? それには悲しい理由があるのですが…ここでは伏せておきます。 自分たちの存在意義を見いだせない悪魔憑きたちが天使憑きに憎しみを向けてしまうのは、仕方のないことなのかもしれない。 でも、天使憑きも決して楽しい生活を送っているわけではない。 明らかになっていく教会の実態に聖良は益々憤りを覚え、反発していた叶枝に対して、それまでとは異なる感情を抱くようになります。 結局、天使憑きも悪魔憑きも、胸に抱えている悲しさは一緒。 次第にふたりの関係は変わっていきます。 このふたり、翼があることもあってか、恋人同士というよりなんだか番いみたいな感じですね。 反発しながらも惹かれ合って、自然と番いあっている。 こういった雰囲気はとても好みなので、美味しくいただきました。 苛めつつも世良を気に入っている叶枝が可愛い。 そして流石沙野先生、エロがとてもネットリエロエロ! 特殊な設定があるので、天使も悪魔もすぐ発情してしまいます。 聖良の容姿は綺麗で無垢な印象が強いのに、発情スイッチが入ると相手の精力を吸い取るかのごとく貪婪になっていく。 叶枝が「インキュバス」と言っていますが、まさにそんな感じですね(笑) まぁ相手になっている叶枝も精力たっぷりなので、人の事言えませんが! ということで、「天使憑きの男」のスピンオフであり、天使憑きと悪魔憑きの争いのその後が書かれている「悪魔憑きの男」。 沙野先生はグロテスクな中にある美しさ、淫靡さを表現するのがとても巧い作家さんだと思いますが、その魅力を堪能できる作品でした。 悪魔憑きの悲しい存在が明らかになり、それぞれの抱えている葛藤が見えたことで、話に厚みが出て面白かったです。 聖良と叶枝の関係も色気があって美味しかった! ただ、事件解決に向けた展開は少し物足りなさもあり、教会との対立はこれだけでは解決していないように感じます。 背後関係を考えたらまだまだ事件が起こるのでは? ナユタや汀など気になるキャラもいるので、続編があると嬉しい! ■薔薇と接吻/杉原理生/高星麻子/ルチル文庫 闇の中には夜の種族、太陽の下には精霊たち。 律也には人ならざる者たちを見たり感じたりする力があり、自分から出ている彼らを惹きつける光にも気付いていた。 成長するにしたがい弱くなっていたその力を、15歳の時、以前一緒に暮らしていた櫂に再会し、ある約束をしたことで再び取り戻していた。 幼い頃一緒に暮らし大好きだった櫂。 約束を守れば迎えに来てくれる。 それを信じ、櫂を待ち続ける律也だったが、そんな律也の前に、力に惹きつけられた夜の種族たちが現れ…。 櫂を追い求めているけれど、何故か櫂のことを忘れてしまう律也。 それは吸血鬼となった櫂が術をかけているからです。 律也を手に入れたいけれど、そうなれば律也の人間としての幸せを奪うことになるのではないかと不安に思う櫂がかけた術。 特殊な環境故に焦れったいくらい櫂が煮え切りませんが、行動や言葉の端々から律也への熱い想いが溢れています。 一方、律也は真っ直ぐに櫂を求める気持ちをぶつけている。 互いを求める気持ちは向かい合っていますが、櫂は律也が負うリスクを考えて自分の気持ちをセーブしているので、関係が落ち着くまでには時間がかかっています。 見た目や立場は櫂→律也なのに、実際は律也が櫂を口説き落としているような勢いですね(笑) 律也のようなキャラは健気になりすぎて苦手に感じることもあるのですが、予想以上に律也は強いです。 そして、櫂はクールな雰囲気なのに、律也への気持ちが渦巻いている内面がどんどん見えてくるので身近に感じられました。 叔父の慎司と、同じ大学に通う東條、そして櫂の下についているレイ。 周囲のキャラたちもいい味を出していたのが、心地よい読後感に繋がっていたのだろうなぁと思います。 ファンタジーは基本的にどれもそうだと思いますが、作品ごとの設定や世界観を把握するのに疲れてしまう事があるので、私は得意な方ではありません。 その点、この作品はいろいろと設定はありつつも、グイグイと惹き込む力があり、自然と話に入る事が出来ました。 律也も櫂も、良い意味で最初のイメージとは違う一面が見えてくる魅力的なキャラで、ふたりを見守っているキャラたちも味があって面白かったです。 上記で紹介した「天使憑きの男」ほどネットリはしていませんが、また違った美しさがあり、吸血鬼らしい妖しさも楽しめます。 オススメ!
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