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■ダブル・バインド/英田サキ/葛西リカコ/Chara文庫 東京湾に近いある公園で見つかった死体。 故意に餓死させられたと思われ、さらに男性器が切り取られていた。 捜査にあたることになった警視庁捜査一課の刑事・上條嘉成は、第一発見者の少年・真宮祥の保護者として現れた、高校時代の後輩・瀬名智秋と16年ぶりに再会する。 アメリカでクリニカル・サイコロジスト(臨床心理士)として働く瀬名は、病気の母親の見舞いに訪れた祥に付き添い来日していた。 高校生の頃少女のような中性的で線の細い美少年だった瀬名。 外見も内面もすっかり変わっていたが、上條は捜査という形で関わっていく中で次第に瀬名に惹かれていく。 今になって知った瀬名の過去や、勢いで交わしたキス、それはいつしかふたりの関係を変えてゆき…。 殺人事件を機に16年ぶりに再会した男同士の話です。 瀬名はゲイですが、上條はノーマルで瀬名に高校時代から惹かれる部分があったけれど、それを恋愛感情としては認識していません。 高校時代、行き場のない想いを持てあましていた瀬名はある男と付き合っていたけれど、結果的にそれが原因で本気の恋愛から遠ざかる事に。 そうした過去の話に加え、殺人事件の方も大きく動きます。 瀬名が世話をしている祥は精神的な病を患っているため、殺人犯に会った記憶が抜け落ちている。 そこが事件的にも、祥の病状にとってもどうやら大きな鍵となっているようですが…真相はお預け。 シリーズ1作目なので、今回はキャラの顔出しと事件の動きだしといった部分が中心になっています。 キャラがみんな立っていていいですね。 主人公の上條と瀬名はもちろん、祥、脇のヤクザ・新藤やその愛人・葉鳥などなど、一癖ありそうな人達ばかりです。 上條はちょっとヘタレたオヤジ(と言うには32歳は若いと思うけど)ですが、捜査一課にいるだけあってもちろんやる時はやる男で、基本的に真っ直ぐで優しい。 惹かれてもその壁を打ち破る勇気のなかった高校時代の瀬名は結局自分の気持ちを打ち明けられないままで、再会してからも素直になれずツンツンしてしまっています。 変わろうと努力して海外へ渡り、外見も大人になり、手に職をつけて自分に自信を持っているように見えても、恋愛面は弱いまま。 揺らぎながらも必死に自分を保とうとしている瀬名が可愛いです 上條は、それを頭では理解してなくても本能的に感じ取っているから瀬名が気になっているのでしょう。 もう、早く自分の気持ちに素直になりなさいよ!瀬名の心の隙に飛び込みなさいよ!と言いたくなります(笑) そんなもどかしいメインのふたりもですが、新藤と葉鳥の方はまた違った意味で気になる存在でした。 ヤクザの若頭と愛人という関係だけど、葉鳥は囲われているだけではなく、自分から新藤のためにいろいろと手を回したりする。 静かだけど熱を秘めているタイプの新藤と、アグレッシブで強気だけど健気な葉鳥という組み合わせが美味しいです。 ということで、英田先生の新作は日本を舞台にした刑事もののシリーズでした。 キャラが魅力的で、事件も面白いです。 どう展開するのかワクワクさせられる。 犯人の目的は何なのか、祥はどう関係しているのか、そして上條と瀬名の関係はどう変わっていくのか? 続きがとても気になります! ■ きみが恋に溺れる(全3巻)/高永ひなこ/あすかコミックスCL-DX 陣内和史の働く呉服屋に、大学を出たばかりの社長令息・主藤礼一郎が店長としてやってきた。 何も出来ない礼一郎に反発していた陣内だが、不器用で天然の礼一郎から相談を受けるようになり、次第に親しくなっていく。 しかしある日、音信不通になっていた親友との再会と拒絶に動揺する礼一郎に対し「それは好きなのではないか」と何気なく陣内が言ったことで、礼一郎は親友への恋を自覚することに。 それを目の当たりにした陣内は、ようやく自分の気持ちに気付くのだが…。 礼一郎はかなり天然でおっとりした雰囲気の人物。 お坊ちゃん育ち故の感覚のズレもあるけれど、自分の気持ちにも他人の気持ちにも鈍いから、周囲を苛立たせてしまったりする。 店長として赴任しながらも、その性格と経験のなさで問題を起こす礼一郎に陣内は苛立ちますが、次第に陣内は礼一郎の性格に気づき、その不器用さに惹かれていきます。 ただ、礼一郎の性格はただの天然じゃないから難しい。 最初は陣内に勢いで丸め込まれた感のある礼一郎ですが、礼一郎は自分に厳しく、生真面目で頑固な一面もあるので、そこから先、ふたりが本当の意味で理解し合うまでには結構時間かかっています。 陣内は大変だろうけど、天然さと自立心のバランスが礼一郎の魅力ですね! 自分を律する余り自分の気持ちをつかめないでいる礼一郎が、今まで知らなかった心の動きに動揺したり葛藤したり、羞恥心を覚えたり。 色々な感情に右往左往するところが可愛い。 陣内の方が惚れているのかと思いきや、礼一郎は無表情の裏で、陣内のことを不器用にも一生懸命考えているのですよ! そして、礼一郎さんの魅力はそのエロさにもあります! なんたって着流し! それ以外にもスーツとか袴とか、どんな格好の時も性格と同じようにキチッとしているので、それが乱れると一気に色気が漏れ出して大変です。 それと同時に普段感情が表に出ない表情が一変して…エロい! 益々惚れちゃいますよね、陣内さん。 ということで、7月に出た3巻で完結した「きみが恋に溺れる」。 作品全体の雰囲気は明るいですが、内容的には山あり谷ありで、特に3巻は予想以上に波乱が起こっていました。 跡取り息子で、しかも弟も男と付き合っているという状況なので、礼一郎と陣内はこの先も色々大変そうではありますが、この危機を乗り越えたふたりならどうにか頑張ってくれるのではないかと思えるラストでよかったです。 キャラも内容も大満足でした! シリーズとしてはこの作品が弟編に続く2作目で、まだ続くようなので楽しみです。
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