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久万谷淳さんのデビュー文庫です。 会社に裏切られ、退職した元エリートサラリーマン・悠一郎(33歳)は、そのせいで妻にも逃げられ、現在は「町の便利屋さん」を営んでいます。 ある日、家財道具の処分を請け負った悠一郎は、依頼主の少年・ハジメ(19歳)と出会う。 ハジメには行き場がないらしく、結局悠一郎はハジメを同居させ、ハジメは家のことや悠一郎の仕事を手伝うようになります。 明るく礼儀正しく素直なハジメはご近所にもすぐ馴染み、すんなり溶け込みます。気が効いて小まめに動くハジメとの生活は穏やかに過ぎていく。 そんなハジメに悠一郎は次第に惹かれていきます。 ところがこのハジメ、素性がよくわからない。聴いても話そうとしないし、時々妙なことを言う。 いくら探しても出てこない紛失物のありかを言い当てるなど、どうも不審に思った悠一郎が問いただすと、ハジメは「物に付いている持ち主の気配」がわかると言う。 実はハジメは「見える人」だったのです。 そんなある日、近所のオバチャンがハジメに行方不明になった少女の捜索を依頼してきます。二人はこの心霊事件(?)に巻き込まれ・・・。 久万淳さんは、雑誌では何作か発表しておられるのですが、商業誌となったのはこれが初めてです。 このお話は、ハジメが「見える人」で、それに関連して事件に巻き込まれることから「オカルトか」と思ってしまうのですが、実はそうでもありません。見たくないのに見えてしまうだけで何もできないので、不思議な力を発揮して事件解決をするわけではないからです。 依頼される仕事はほぼ町内で起き、近所のお婆ちゃんたちも相まって、非常にほのぼのしています。住んでいる町の情景が浮かんできて、事件も親子の情愛の絡んだもので、ごく日常的で身近に感じられます。 年の差カップルならではの、悠一郎の大人の包容力や、甘えるハジメの素直さなど、微笑ましくてとても暖かい。 脇役も魅力的ですし、会話に気のきいたユーモアのセンスを感じ、面白くて読みやすかったです。 ただ、登場人物の扱いにいささか中途半端な部分があり、その点は不自然さを感じました。 でも、シリーズになってもいいのではと思うくらい、魅力的な作品に仕上がっています。 そして久万谷淳さんの商業誌未発表の評判を見ると、やはり「続きを読みたい」と思わせるものがあるようです。 中途半端だから気になるのか(笑)、魅力的だからもっと読みたいのか、残念ながら雑誌掲載作品は読んでいないのですが、非常に興味をそそられます。 本作の二人は最後までいってないので両方の意味で続き希望ですし、他の作品もぜひ拝見したい。 作風など、まだ未知ではあるのですが、次が出ないかな~と個人的に注目してる新人(と言っていいですよね)作家さんです。
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