total review:279006today:36
ゲストさん
無料会員登録
ログイン
■美しく燃える森 –真夜中を駆けぬける3- /依田沙江美/シャレードコミックス 学生時代に付き合っていた土屋昇と日比谷勇気。 だが、大学生となり新しい世界を知っていった勇気は、昇から心が離れてしまう。 それから数年後、昇は雑誌編集者、勇気は画家として再会し、再び二人は付き合うことに。 ダメになったときに傷つかないよう、昇は距離を取って付き合おうとするのだけれど、相変わらずな昇の奔放さに振り回されて…。 という、再会して二度目の恋をしているふたりの話。 学生の頃の若い付き合いと、諦めと駆け引きを知っている大人になってからの付き合いは違いますよね。 好きだという気持ちだけでは続かない。 付き合うまでより、付き合い始めてからの方が沢山乗り越えなければならない壁があるんだなぁと、このマンガを読んでいると改めて思います。 3巻では、一緒に生きていく事を決めたふたりのその後。 平穏な日常の中で、ずっと心の奥に眠っていた心の傷が昇に異変を起こし始める話が表題作の『美しく燃える森』 大人になってからだと、無意識のうちに辛い体験から目を逸らしたり、大したことないと思い込んだりして、まともに正面から傷つく事って少ないと思うんですよ。 それは自衛なんでしょうけど、心の許容範囲以上に抱え込んでしまって、それがストレスになる事もある。 そして心が追い詰められると視界が狭くなって、ますます悪循環に陥っていく。 昇や、この話に登場する女性の場合は明らかにストレスとなるような出来事が起こっているわけですが、ここまで大きくなくても同じような事を体験している人は多いのではないかなと思います。 他人の何気ないひと言がずっと心に引っかかっていたり、憤りや不安や恐怖といった感覚がトラウマになっていたり。 無意識のうちに取っている行動の裏に、実はそうしたことに由来した心の動きがあるのかもしれない。 まぁ、その歪みが表面に出てくるかどうかは人それぞれでしょうけど。 心や身体のバランスを保つためには、受けとめなければいけない痛みもあるんだろうなと、そんなことを考えさせられた話でした。 普段落ち着いていて強気な言動をしている昇なので、こうした弱い面を見るとドキッとさせられます。 泣かされた…。 他の短編も面白かった! 『スパイシーサングリア』は同居1周年の話。 気心しれたからこそ出てくる相手に対する不満とか、隠さず出してしまう苛立ちとかあっても、喜びを共有することで笑い合えるってステキですね。 『懐かしい夜』は初めて開く大きな企画展に奔走する勇気と、それを支える昇の話。 以前から登場している脇キャラたちもすごくいい味出していて、勇気、愛されているんだなぁと感じられる話でした。 第三者の立場からふたりのやりとりを垣間見るという構図が好きです。 -- ということで、「真夜中を駆けぬける」の3巻です。 4年越しの新刊。 長かった……………! 発売延期になったときはまぁ数ヶ月後には出るだろうと思っていたのが、1年経ち、2年経ち…。 大好きなシリーズなので、祈るような気持ちで待ち続けていました。 何はともあれ、無事に出て、読む事が出来て感無量! しかも期待を裏切らない内容で大満足です……! このシリーズは、一見ツンツンしていて主導権を握っていそうな昇の方が、実は自由奔放な勇気に振り回されています。 好きだからこそ臆病になってしまう昇の心の揺れが切なくて、泣かされる。 問題児だし、昇を裏切るような行動もしていたけれど、最終的には昇のパートナーが勇気でよかった。 直感的に生きているから恋愛面では理解に苦しむ面もあるけれど、そんな勇気だから昇が惹かれてやまないのでしょうね。 そして、私がこの話でいいなと思うのは、ふたりがとても楽しそうに仕事をしていることです。 勇気は画家なので当然自由に思うままやっているのですが、昇も勇気の仕事に刺激されているし、そこから広がっていく繋がりを積極的に自分のものにしている。 こういう仕事に対するワクワクを持ち続けている姿に、読んでいる私も刺激されます。 久しぶりだったので1巻から通して読みましたが、改めてこのシリーズ大好きだ!とテンションが上がり、時間を忘れて読みふけってしまいました。 静かな中に情熱を秘めている昇と同様、依田先生の漫画は淡々としている中に心を鷲掴みにされる魅力が詰まっています。 細かいセリフや行動に隠された伏線、セリフの行間やコマの空白からいろいろな事が伝わって来て、読めば読むほど味が出る。 面白かった…!! 1巻が出版されたのが10年ちかく前なので手に入りにくいかもしれませんが、是非1巻から揃えてどうぞ。
Copyright 2008~ © All right reserved,BLサイト ちるちる