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■それなりに真剣なんです(上下巻)/麻生海/花音コミックス 離婚後、飲食店で働きながら、幼稚園児の千都を男手ひとつで育てている大沢。 時間に追われながらもなんとか頑張っているけれど、千都が体調を崩すと途端にギリギリの毎日は行き詰まってしまう。 ある時、成り行きから店の常連・吉岡に助けられ、店から近い吉岡のマンションに世話になることに。 でも、吉岡はゲイである事を公言していて、男関係にだらしない。 そんな吉岡に以前から言い寄られている大沢は、最初その親切心に警戒していたのだけれど、一緒に過ごすうちにその警戒心が薄れていく。 そんな中、離婚した相手が再婚を機に千都を引き取りたいと言い出すのだが…。 という身持ちの悪い攻と子連れのシングルファーザーの話です。 吉岡は、「家賃半分の居場所です」に収録されている『それなりに真面目なんです』の当て馬ダメ男。 そちらを読んだときは優しくても信用できない男だなぁと思っていたのですが、その裏にはいろいろと事情があったのですね。 その辺りが分かると、吉岡に好感が持てるようになりました。 このふたりはタイプが全然違うように見えて、似たところで不器用です。 ふたりとも甘えられない、他人に頼れない男。 大人の男の人はこういう人多そうだし、BLでこの手のネタは珍しくないけれど、シンプルながらも信頼関係において重要なところだから納得させられるし、好きです。 ふたりの背景が切なくて胸がギュッとなりました。 そんなふたりの関係は、ゆっくりと進展します。 元々大沢の吉岡に対する印象はマイナスなので、大沢を知る事でどんどんいい人度が上がっていきますが、それと恋愛面で信用できるかはまた別の問題。 ゆっくりと信頼関係が出来ていた中で大きな問題に直面し、そこでようやく吉岡の大切さを大沢は自覚することになります。 ここに至るまでの丁寧な展開がいいです。 そして、この漫画の魅力を語る上で欠かせないのが千都の存在!! めちゃくちゃ可愛いです。 こんな子いたら頑張っちゃうよね、大沢さん! 吉岡の株が上がったのも千都がらみ。 子供は良い意味でも悪い意味でも人の感情に敏感なところがあるので、千都が自然と吉岡に懐いていると「吉岡いい人なんだな」と思わされます。 子供の扱いに慣れているとか、好意を寄せている人の娘だからとかじゃなく、自然な流れで千都と向き合って可愛がっているのがいいですね。 大沢も同じように、千都に対する態度を見て吉岡を信頼していったんだろうなぁと感じられました。 ということで、麻生先生の新刊。 麻生先生の話は割とカップリングのパターンが似ていて、ダメ男と健気男の組み合わせは珍しくないのですが、今回は2冊かけてじっくり描かれていたので読み応えがありました。 話も面白かったけど、兎にも角にも千都が可愛かった!! 3人の生活がとても微笑ましくて、5年後、10年後、そして千都が大人になった頃の3人の様子が垣間見たいなぁと思いました。 オススメです! ■八月の杜/TATSUKI/マーブルコミックス 高校2年の春に東京から転入してきたクラスメイト・堂崎乃亜が、何故か気になる伊藤蒼太。 偶然の出来事から親しくなるふたりだが、乃亜には隠していることがあるようで…。 蒼太は海に面した小さな町で生まれ育った高校生。 乃亜のことが気になったのは、東京で留年して転入してきたという事もあるけれど、きっと最初から無意識のうちに惹かれていたんでしょうね。 最初は無口で人を寄せ付けなかった乃亜も、親しくなってみると蒼太と一緒にいることが心地よくて、ふたりはどんどん仲良くなっていく。 その途中で、蒼太は自分が乃亜に恋愛感情を持っていることに気付いてしまいます。 乃亜の過去を偶然知ってしまった蒼太は益々心が揺れて、思わず勢いで告白してしまう。 乃亜は過去の経験から恋愛に臆病になっていて、蒼太との時間に居心地の良さを感じているけど、気持ちは受けとめられない。 そんな乃亜に、蒼太は真っ直ぐがむしゃらに好意をぶつけ、でもちゃんと乃亜を思いやりながら側にいる。 そうした中でふたりの距離は縮まっていきますが、現実を見れば、高校生の2人にはハードルがたくさんあります。 進路であったり、親であったり、好きという気持ちだけでは簡単に乗り越えられないものがあって、ふたりはお互いに惹かれ合いながらもなかなか手を取り合えない。 一進一退。 そこが焦れったいけど面白い! 最終的に、乃亜がある出来事を切っ掛けに前を向いたことでふたりの関係は進展するのですが、そこで乃亜がちゃんを自分から蒼太を求める形だったのがよかったです。 まずは舞台設定がいい。 いろいろなものに破れて傷心の都会っ子が、田舎の素朴な人たちの中で癒されていくのに心があたたまります。 最初はあんなに警戒心いっぱいだったのにね…。 ふたりの何気ない日常のやりとりと、その中で時々ふっと心が近づく瞬間が好き。 もう1話収録されているのが『ホリゾン・ブルー』。 戦争で失明した橋元という男が、妹と結婚した友人・伊藤と同居することになる話。 伊藤も妹も優しくしてくれるけれど、橋元は何も出来ない自分が不甲斐なくて仕方ない。 そして、一方で戦中に好きだった人を目の前で亡くした事が橋元の胸に刻み込まれていて、罪の意識から逃れられない。 伊藤はそんな橋元を支えようとします。 言葉にするのが難しいけれど、ふたりの関係性がいいなぁと思います。 時代背景を含め、話の作り方が上手いですね。 因みに、この伊藤は蒼太のじいちゃん。 本編読み返すと、このじいちゃんの存在感が益々光りますよ♪ -- ということで、TATSUKI先生の作品初読みでした。 タイトルに惹かれて購入しましたが、すごくよかったです! そしてこのコミックス、濡れ場がないんです。キス止まり。 なのに、全然物足りなさを感じません。 キャラの魅力と関係性で充分に読ませてくれるので、エッチして無くてもいいし、逆にこれであったら違和感があるかもしれないです。 あと、脇キャラもすごくいい味出している! 蒼太のじいさんも、友人たちも個性的なんですよね〜。 マーブルコミックスらしい丁寧な作品だったと思います。 コチラもオススメ!
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