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BL界の中で数少ない癒し系漫画家といえば木下けい子…そう言い切ってしまっても、それに反論の声を上げる人は殆どいないだろう。 この方の良さは短めの単発モノより、ある程度長めのストーリー漫画の方が味わえる気がする。この作品は私が始めて読んだ木下作品だ、だから尚更そう思うのかもしれない。 この作品の出だしはこうだ、二人っきりの家族である父を亡くした、その悲しみに追い討ちをかけるように、亡くなった父に借金があることがわかってしまい、取立て屋に押し入られ途方にくれる主人公赤石陽(あかいし がはる)。B Lモノの物語では比較的良くあるパターンだ。 借金というフレーズが出てくるとこの業界ではたいていの話で主人公が金で売られてしまったり、借金を肩代わりする代わりに躯を要求されてしまう。この話を読む前まではそれがBL業界では当たり前のことだと私は思っていた。 しかし、木下作品はそうはならない。 あくまでも正当な手段で主人公ハルを守るヒーローが登場するのだ。それが弁護士の瀬尾祐二 借金の抵当に入っていたため住む家さえも奪われたハルの身元引受人となった瀬尾はハルと一緒に暮らすことになる。最初は警戒心をあらわにしていたハルだが、成り行きとは言え生活をともにする事で、少しずつ瀬尾に信頼を寄せるようになる、それが淡い恋心に代わるに時間がかからなくとも、なんの不思議も無いだろう。 そんな風にして日常の中で揺れ動く、主人公たちの心の機微を丁重に丁重にストーリーに織り込んでいくのが上手い漫画家が木下さんなのだ。この話を読んでいると、人を好きになのは相手が同姓だろうと異性だろうと、比較的単純なところからなのだろうと言う事に気づかされる。 一見平凡ともいえるストーリーだからなのか、はたまたこの絵柄のせいなのか、木下さんの話にエロは似合わない。いやむしろ無いほうがしっくり来る。 それはエロに塗れたBL業界では、ある意味不利なことなのかもしれないけれど、この方の場合それでも十分満足できるのは、描かれたストーリーの軸がしっかりしているからではないだろうか? じれったくて、可愛くて、そしてちょっぴり切なくて、でも最後には、あぁ良かったねと優しく心を和ませてくれる…。そんなほのぼの路線をこの方にはこれからもずっと貫き通してほしい、なぜならばいつまでも私の癒し系でいてほしいから。 エロばかりの話に飽き飽きして、たまにはホッと息が抜きたいと思ったときや、BL初心者さんにはぜひ読んでほしい1冊だ。
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