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衝撃の作家・木原音瀬がファンタジーを描くとどうなるのか? 天使と悪魔の愛を描いたファンタジーがこの「ROSE GARDEN」。 いまどき天使と悪魔のファンタジーなんて陳腐すぎるんじゃ…大丈夫か?木原先生。 が、しかしこの作品に出てくる天使と悪魔、私たちが想像するものとはまったく違う価値観で描かれており、一筋縄ではいかない。木原作品ならではの結末がさっぱり見えない物語が展開して、私たちを激しく揺さぶり続ける。 木原作品の魅力に、先行きが全く予想できないという点がありますが、まずはその登場人物のキャラクターからして、全く型破りだからかもしれません。人が思いつかないようなキャラクターがどんどん動き出しストーリーを紡いでいくので、まことに先行きは不透明なのです。 予想がつかないので読者はハラハラ、ドキドキさせられるとも言えます。パターンがまったくないといえるほど独創的で、他のBL作家さんの追従をゆるしません。 作家さんには、癖があってそれが魅力といえますが、木原先生の癖というのは、この独創性なのかもしれません。 さて、本作は天使とハーフの悪魔の話ですが、これまた木原先生らしいというか、型破りなこちらの想像をこえた悪魔と天使なのです。 天使のカイルは鼻持ちならなくて、天使であるとというプライドだけが高く、役立たずです。綺麗なだけで口は悪いし、どうしてここまで悪魔のウォーレンが、天使を愛し自分の全てを捧げるのか理解できないぐらい性格の悪い天使です。 悪魔のウィーレンはというと、浅慮で騙されやすく、容姿が悪魔だと言うだけで他の悪魔とのおつきあいもなく人間となんらかわりません。パッとしない悪魔と性格の悪い天使。こんなキャラクターは天使や悪魔でなくてもいいぐらいです。 性格の悪い天使が好きだというウォーレンですが、これは他の作品にもいえているかもしれません。どうしてこんな人を好きになる?と作中の人物に問いただしたくなりますが、実は、恋に落ちるというのはそう言うことかも知れません。 容姿が醜かったり、性格がわるかったり、口がわるかったり、それでも好きになったらそんなことも含めて何もかもを受け入れてしまう、そんな恋愛を木原先生は何気なく展開されるのです。 しかし、こういうカップルはどうにも受け入れられないという読者も中にはあるでしょうが、そういう読者のためにちゃんと木原先生は常識のある語り部を用意してくれています。それが少年スネアです。 悪魔という「偏見」も、天使という「憧れ」もない本質だけを見据える語り部。彼視点からの正当な評価によって、空回りしている悪魔と、わがままな天使との関係に入りきれない読者も救っているというところがテクニックです。 筆が走り出したらどっちにいくかわからないとよく先生がいわれていますが、今回も上巻を読んで下巻を予想できた方はないでしょう。追いかけ続けていた悪魔と、追われ続けていた天使の立場が逆転します。これも木原先生がモチーフに使われることが多いような気がしますが「運命の皮肉」というモチーフです。 傷ついたウォーレンがカイルを拒否し、好きだといわれたいカイルがウォーレンの気を引こうとします。傷つき人を疑う事を学んだ悪魔と、誠意に対して誠意で答える事を知った天使が再び歩み寄ることで物語は終結します。 やっと読者の理解の範疇に治まってくれたことで安心しますが、この翻弄される感覚がどうにもくせになるのかもしれません。
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