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ボーイズラブは、ヘンと言えばすべてヘンである。 男×男の世界なのに、それを支えているのは、ほとんどが女。そこからして、ヘンで当たり前のジャンルなのだ。リアルなゲイの方に「ファンタジーだ」と言われてもめげない。 たとえばBLは、ガンダムよりファンタジー度は低いはずだ。あんな巨大ロボがよく分からんエネルギーを糧に動く世界がリアルだと呼ばれるなら、BLだって十二分にリアルなのだ。 そう、ボーイズラブをヘンだという男どもよ!(←リアルゲイな方も含む)BLは、「ヘンで当たり前のジャンル」なのだ!ただしそこには、腐女子にとってのリアルがあるのだ! ガンダム好きがあのファンタジーな世界でリアルさを求めるように、我ら腐女子もこのファンタジーな世界でリアルさを日夜追い求めていたりするのだ。 かくいう私も、初心者のころはありとあらゆることを「ヘン」だと思い、いちいち驚いていた。 いまや、「ヘンだ!」と驚くことはめったにない。 当時人物総ホモ化に驚く? ホモであることに一切悩まない登場人物に驚く? アラブ人のキテレツな行動に驚く? いやいや、そんなものに驚くなんて、まだまだ甘い。腐のヒヨコにもなれてない。殻のなかで孵化、もとい腐化を待っておくがよい。 50代の受けに驚く? ちんこの擬人化に驚く? メガネかけたらキチクになっちゃう意味不明さに驚く? ふふふ、そこに驚いてても、まだまだだ。やっとヒヨッコだ。頭に殻かぶってピヨピヨ鳴いておくがよい。 ボーイズラブはパクリだらけの世界である。似たようなシチュエーションやストーリー展開がやたらと多い。 ただしそれはパクリとは呼ばれない。セオリーあるいは王道などと呼ばれ、もはやどの作品がその王道のパイオニアだったのかも、よく分からない。類似シチュエーションの積み重ねが今の王道を作ったということがあるわけで。 「どっかで読んだ展開だなー」と思っても、よほどじゃない限り、腐女子はいちいち騒がない。それが好きなキャラやストーリーなら萌えながら読むし。そうじゃなければ「ありきたりでつまんねーな」と思いながら読むし。 腐女子の懐は極めて広く、同時に極めて狭いのだ。 ではここで、ボーイズラブのセオリーを少しだけ紹介しようと思う。 その1「監禁レイプは恋のフラグ」 監禁レイプは、リアルでそんな事件があったら大犯罪だが、BLの監禁レイプに驚く腐女子はまずいない。BLにおいては「レイプされた側が、レイプした相手を好きになる」というフラグに過ぎないからだ。 ただしこれは、監禁レイプするのがイケメンであった場合。 ヒヒジジイが同じことをした場合は、のちに登場する(orすでに登場している)イケメンが受けを助け出し、そいつと結ばれることになる。 その2「女性登場人物は、『イヤミすぎる当て馬』か『物分かり良すぎる理解者』となる宿命」 男が当て馬だった場合、主役カップル以上の人気キャラとなるパターンがよくあるが、女が当て馬だった場合はこれがない。たいがい女はイヤミったらしい当て馬で、私たち腐女子は心の底から彼女をうざがり、主役カップルを応援することができる。 逆に、物分かり良すぎる理解者である場合もある。この場合は「BLにしては珍しく、女性キャラに存在感があった。とても良かった」などというレビューがちるちるにupされることになる。ぶっちゃけこういう女性キャラは珍しくないんだけど、なぜか「珍しく」と書かれるのが「物分かり良すぎる女性」の宿命である。存在感があるんだかないんだか、さっぱり分からない。 その3「アナルセックスにおいて、う〇ちの存在は無視するべし」 腐女子は「リアルさ」は求めているが、「生々しさ」は求めていない。 腐女子の大半はきっちり「BLはファンタジー」という割り切りをしているが、ストーリーに「リアルさ」を感じると喜べる、不思議な人種でもある。が、「自分が考えるリアルさ」を一歩はみ出すと、一気に嫌悪感がわくという習性もある(セックス描写に関わらず)。 そう、アナルセックス中に、う〇ちの存在を匂わせてはいけないのだ。 「朝から晩までセックスしていた」という描写に、「いつう〇ちしたの?」というツッコミは無用。 「シャワーも浴びてないのに、〇〇〇に舌をこじ入れて舐めた」という描写に、「これ、う〇ちの後に、シャワー浴びてないんじゃ…」というツッコミはさらに無用。 綺麗にシカトするのが、正しい腐女子道というものだ。 いままで語ってきたのは「セオリー」である。なのでもちろんすべてのBLがそうだというわけではない。 で、腐女子が驚くのは、そのセオリーからズレた場合なのだ。 1についていうと、「監禁レイプしたイケメンを好きにならなかった場合」は、驚くだろう。普通は監禁レイプした男など好きになれなくて当たり前なのに、BL作品をたくさん読めば読むほどそれを当たり前だとは思えなくなるのだ。監禁レイプするのは大抵俺様攻めだが、その俺様攻めが「受けを愛するあまり思い余って監禁レイプした」というパターンじゃない場合も驚く。 たとえば木原音瀬さんの『FRAGILE』に多くの腐女子が驚き、賛否両論だったのは、このセオリーをぶち壊しまくったストーリー展開だったからだ。 2についていうと、「女と結ばれた場合」も驚く。それはしばしば「バッドエンド」「鬱エンド」などと評され、腐女子の怒りや悲しみを誘うのだ。 水城せとなさんの作品に鬱エンドが多いと言われるゆえんでもある。「ハッピーエンドなのに鬱エンド」がなんの矛盾もなく両立し得るのだ。 3についていうと、「う〇ちの匂いがした」という描写があると驚く。 1や2と違うのは、私はいまだかつて、この手の描写には出会ったことがないということだ。 果たしてこのあたりを突っ込んで書いた作家さんはいるのでしょうか。浣腸の描写はたまにあるが、「匂い」の描写はまだ目にしたことがない。 描写した猛者な作家さんがいるなら、是非とも知りたい。書こうとしても編集側からNGを食らうだろうなという想像はつくけど(笑)。 では、まとめる! 冒頭の繰りかえしになるが、今まで書いたことは「ここがヘンだよボーイズラブ」ではない。 「すべてヘンだよボーイズラブ」って話だ。 そして同時に、「すべてヘンじゃないんだよボーイズラブ」って話でもある。 細分化されるボーイズラブの世界の中、自分的なリアル(=非腐女子にとってのヘン)を求めてさまよう、我ら腐女子は一様にボヘミアンなのである。
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