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このシリーズは私が初めて読んだBL小説で、私がこの世界にはまりこむきっかけになった、実に思い入れの深い作品です。今考えると、第一部のこの一冊が、一番エロかったんじゃなかろうか? 主人公の悠季がコンマスを務めるアマチュアオーケストラに、ある日192cmでポーカーフェイス、傲岸不遜で身長も態度もものすごくでかい男が、指揮者としてやって来ます。芸大を「学ぶべきものがない」と言った理由で退学した彼の振りはとにかく的確で、そして天才的です。しかし、彼の尊大さはいちいち悠季のカンに触ったし、実際 (みんなはついていけないだろう) とも思っていたのに、反して、団員たちは、すぐにこの新しい指揮者を受け入れてしまうのです。今まであくせく団員のために尽くして来た悠季は、自分がないがしろにされたような気になり、団を辞めようとします。 『ですからぼくはやめます』、その悠季の発言を聞いた指揮者―圭は、悠季のバイオリンケースをひったくり、無理矢理自分のマンションの部屋まで付いて来させるのです。『関係を作る気はあったんですよ』――圭は、悠季をベッドに連行して強姦します。CDでタンホイザー序曲を大音量で流しながら。 『ヴァーグナー』――そのセリフとシーンは、あまりにも有名で、未だにファンの間では、この作品の代名詞みたいに言われてます。俗に言う「タンホイザー」事件。はっきり言って、今強姦の出てくる作品っていっぱいあるけれど、ここまで衝撃的かつ印象に残る強姦シーンって私見たことないかも知れない……って言うか、多分なかったと思います。史上稀に見る名強姦です。 実は、圭は悠季の事を、初めゲイだと思っていたので、これは強姦ではなく和姦だと思っていたんですね。その間違った情報を圭に教えたのは、悠季が密かに心を寄せていた団員の女性で……その後の錯乱しきった悠季の心理描写もものすごかった。(この時、この事件の真相を女性視点で書かれた外伝は「フジミ・ソルフェージュ」(プレミアム文庫) に載っています) 誤解が解けた後、圭は自分を激しく責め、いっそけなげなくらい自らを律し、しかししつこく地道にアプローチは続けます。『コーヒーでも、いかがですか?』そんな圭を、悠季は、かろうじて団を辞める事はなかったけれども、圭を毒虫のごとく嫌ってソデにします。色々あって、二人がラブラブになるのって実質、三冊目ですね……いや、もしかしたら第一部丸々五冊使ってかも知れない。どちらにしろ、第一部で二人の中がほぼ固定するのです。そして、第二部から音楽メインで話が進みます。実は私は、シリーズの中で、この二部と三部が一番好きだったりするのですが、やっぱり、この作品について語るならまずはここだろう、と言う事で、初めの一冊を紹介する事にしました。あの強姦シーンを除いて、この作品はやっぱ語れませんからね。 この本の後半部分に入っている『D線上のアリア』も、未遂ですが強姦シーンがあります。八坂と言う新しく入って来た団員に悠季が襲われるのですが、悠季は自力で脱出します。もちろん、それを知った圭はこの後悠季の知らない間に八坂をボコりに行きます。(音楽家で手使えないから足で、ですが) 現在第六部でまだ続いていますが、第四部の留学編からは、挿絵が西炯子から後藤星に変わりました。難問もあったけど、主人公達二人は今着々とプロの道を歩いています……もちろん二人で。もう、殆どBLと言うよりは、普通の音楽物として、私は楽しんでいますが、最初はやっぱり色んな意味で衝撃的な作品だったのです。第一部は、コミック化OVA化もされているし、CDシリーズもライナーノーツとマガジン・マガジンから出ているこの、富士見二丁目交響楽団シリーズ第一巻『寒冷前線コンダクター』、やはり一番のおすすめは大元の小説なので、もし読んでいない人がいたら、是非是非お試しあれ☆
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