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真瀬もとさんのシリーズものです。真瀬さんは、ライトノベル系も書いていらっしゃいますが、ご自身『シャーロキアン』を称されているように、どちらも1800年代のイギリス、またはそれを彷彿とさせる時代の舞台設定が多いです。 もちろん例外もありますが、『外国モノ』というイメージの作家さんですね。 シャーロック・ホームズをお好きなかたなら、その雰囲気も味わえます。 このお話は、傷ついた心を抱えた准男爵、サー・アルジャーノン・フランシス・ミルトン(通称アルジー・攻・28歳)と、新米探偵・バートランド・ホーキンズ(通称バート・受・21歳)の切ない物語です。 攻のアルジーは、愛する女性を傷つけてしまった過去があります。 このせいで心に大きな傷を負っていて、行動や言動はかなり屈折しています。 あちこちで放蕩の生活を送っていましたが、探偵社に捜索願が出され、アルジーの行方を突き止め迎えに出向いたのが、バート。 それが二人の出会いです。 バートは、何事にも一生懸命で真っ直ぐな、“弟”のようなタイプの青年ですが、彼もまた、後ろ暗い過去を持っています。厳格な両親に育てられたバートは、多感な15歳の時、家を飛び出し、今風に言えばヤクザな男たちにいいようにされて、娼館で男娼をするまでに堕ちていました。 そんな生活からバートを救い出し、自分を探偵事務所に迎えてくれたジェイムズ・グレイに恋をしますが、男同士、しかもジェイムズは結婚しており、気持ちを打ち明けることなどできません。 そんなバートと、アルジーは出逢い、バートは叶わない恋の代わりに、アルジーは傷ついた心を一時忘れるために、身体だけの関係を結びます。 その時に交わした約束は「けっして愛したりしない」。 そんな約束で関係を始めた二人の間にやがて「愛」が芽生えていくわけですが、二人の気持ちが通じ合うラストまでは、とにかくすれ違い、もどかしさのオンパレード。 特に攻のアルジーの方が生半可な傷つき方をしていないので、自分の中に芽生えたバートへの愛情を認めることができません。 愛する人を傷つけてしまった過去から、“愛”そのものを信じていないのでやっかいです。 その点、受のバートの方が自分の気持ちを認めてからは真っ直ぐ。 しかし、この手ごわい攻の前に、何度も切なく苦しい想いをさせられてしまいます。 そういう、すれ違う切ない恋にも浸れますが、時代の雰囲気、またそれぞれの背景などストーリー支えるエピソードもきちんとしているので、“物語”として非常に楽しめます。 三巻のうち「1」は、事件の解決が軸となっているので、ホームズ&ワトソン的な雰囲気もありますね。 シャーロック・ホームズは言わずと知れた名探偵ですが、精神的には決して健全とは言えず、時に阿片に溺れたりする壊れた面も持っていました。個人的に「1」は特に、アルジーとホームズを重ねてしまうようなところがありましたね。真瀬さんが『シャーロキアン』だと知っているので、穿った見方かもしれませんが。 しかしやはり見所はアルジーとバートの恋です。 ラストの「愛してる」には、感動さえ覚えました。 いや、「ああ、やっと」という安堵か(笑)。 じっくり読んで、浸って欲しいですね。
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