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言わずと知れた人気作家さんです。 BLはもちろん、女性向けライトノベルでファンタジー作品を数多く書いておられます。 シリアスもコミカルな話も書かれますが、コメディ調でもホロリとさせる、そんなお話がお得意かもしれません。 どれを読んでも大きなハズレはありませんし、紹介したい作品はそれこそ山のようにあるんですが、今回はシリアスめ。好きなBLベストテンをあげるとしたらランク入り確実、2002年12月発行の「聖夜」を選びました。 最近は滅多なことでは泣きませんが、枯れ果てた涙腺もウルみっぱなしの、とても印象深いストーリーです。 物語は三編からなっています。 第一部は北海道を舞台に、シマ(縞岡・攻)とアマチ(雨宮・受)の17歳の出逢いと別れ、そして27歳での東京での再会と再びの別れ。 第二部は、第一部の同じ出来事をアマチの視点から一人称で。そして東京でシマと別れたあと、アマチが北海道に帰ることになるまで。 そして第三部はさらに10年後、37歳になった二人が、20年の時を経て結ばれるまで、という構成です。長い長い恋物語ですね。 再会し、お互いを好きだと自覚しても、離れていた間に恋人ができていたり婚約者がいたりします。 それらを捨ててしまえば自分たちにとっては幸せかもしれませんが、彼らはそうしません。「愛してる」と告げながら別れを選ぶのです。 その切ない想いをここで伝えるのは難しいのですが、誰かを傷つけて幸せになることを望まない、そしてお互いの人生を尊重しあっての別れの切なさはとても胸に迫ります。 そして、そうして選んだ別の人との人生を、彼らはとても真摯に、大切に生きていきます。 この辺りがちょっと一味違いますね。 例えば恋人や婚約者にも他に思う人がいたり、相手が激怒して修羅場を演じたあげく去っていき、邪魔者が消えてめでたし・・・というのはよくありますが、そういう安直な展開にはしなかった。 愛する人と別れても、自分の選んだ道を一生懸命歩いていく彼らの誠実さや切なさは簡単には言い表せません。でも選んだ道を大切に真剣に生きたからこそ、最後に誰に恥じることもなく、愛する人と向き合うことができる。 離れてしまった道がみたび交差する第三部は「運命」としか言い様がありません。 月日を経たからこその想いの深さ、重み、彼らの20年が本当にいとおしく大切なものだとヒシヒシと伝わってきますよ。 読後は、深い深いため息をついてしまうようなお話です。もちろん良い意味で。 いつまでも、何度でも、読み続けたい、とても素敵な物語だと思います。
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