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■夜明けには優しいキスを/著者:凪良ゆう/挿絵:高階佑/花丸文庫BLACK 恋人からDVを受けている西塔要と、そんな要を助け出そうとするバイト先の同僚・池上公平。 要には加瀬という恋人がいますが、好意を持って付き合っているわけではありません。 加瀬は要を繋ぎ止めようと暴力を振るってしまいますが、要は逃げる事なく何も言わずその暴力を受けとめています。 それは6年前のある事件以降、要は幸せになってはいけないのだと自分を戒めていて、加瀬の暴力は自分への罰だと思っているから。 仕事でも自ら身体を酷使し、ついに要は倒れてしまいます。 人を寄せ付けない要はバイト仲間との交流はありませんが、公平は要の素っ気ない態度にめげず、何かと世話を焼いてくる唯一の人物。 要に好意を持っている公平は、要の事情を知り懸命に救い出そうとしますが、要にその気がないために全く功を奏しません。 それに対し、要は自分に優しくしようとする公平にこれ以上近づいてはいけないと感じていますが、惹かれている気持ちは抑えられない。 そんな時、過去の事件を公平に知られてしまい…というお話。 恋人からのDVというだけでも十分重いのに、要の過去も相当重いです。 要が自分を殺して生きている理由として納得できる内容でした。 そんな要に加瀬が引きつけられ、暴力に至ったのは、当然の成り行きかも。 でも、暴力で相手の愛情を確かめようとする限り、加瀬の気持ちは伝わりません。 どれだけ愛情を注いでも、暴力を振るっても、すべて素通り。 加瀬がどんどん壊れていく姿は痛々しく、空回っているふたりがもどかしくて仕方ありませんでした。 要と公平は互いに惹かれ合っていますが、過去の事件が原因で要は公平を受け入れることができません。 6年前のその事件は、要ひとりに責任があるものではないのだけれど、要が切っ掛けになってしまったのは間違いない。 事件の重さや周囲からの圧力によって、要は思い詰め、すべてを抱えてひとりで生きていこうとしています。 どれだけ悔いても過去は変えられないし、罪の意識は消える事はありませんが、公平と出会ったことで要は事件と自分の関わりを見つめ直し、ようやく未来に目を向けることになります。 でも、これは6年という時間が経っていたからこそ、要は公平の言葉を受け入れることができたのだと思うのです。 贖罪の期間は無駄じゃない。 ただ、結果的に巻き込んでしまった加瀬に対して、要は責任がある。 公平と幸せになるだけではなく、加瀬に対しても要がちゃんと向き合ってくれてよかった。 そうじゃないと納得できません。 暴力はもちろん肯定できないけれど、加瀬は憎めないキャラでした。 加瀬にも幸せになって欲しいなぁ。 ということで、「恋愛犯」(ちなみにこちらはストーカー攻…)が面白くて気になっていた作家さん・凪良先生の新刊はとてもシリアスな内容でした。 この重いテーマを無理なくまとめる力はすごい。 重いと言ってもJUNEっぽくはなく、登場人物に体温を感じられるので、もっと身近に感じられる痛みです。 だからこそ考えさせられる部分も多い。 手応えのある一冊で、益々凪良先生が好きになりました。 ■ 愛くらいちゃんと/著者:依田沙江美/花音コミックス 待ちに待った「愛の深さは膝くらい」の続編です! 高校生の昴と、非常勤講師で昴が所属する書道部の顧問である石倉。 ふたりはお互いに好意を持っていて、いい雰囲気になったりもしたことがあるのですが、石倉が生徒と教師だから…と自重しているのでなかなか進展しません。 そして、関係が進まないもう一つの理由は昴の精神年齢。 口では強気な事を言っていても、成長過程にある昴の心は不安定で、時々変な方向に暴走しています。 石倉に対する気持ちも空回りしてひとりでテンパっていたり。 そんな昴を石倉は可愛いと思っているんですけどね(笑) 石倉は元々かなり遊び人で、決してモラルが高い人ではありません。 でも、昴に対してはかなり慎重。 石倉は八方美人タイプだけど、根は意外と真面目なんですよね〜。 昴が生徒だということも理由ではあるけれど、すれてない昴みたいな男の子に手を出してはいけないという自制心も働いています。 揺れまくって、結局手を出しちゃうんですけど(笑) 昴側だけじゃなく、石倉の葛藤も読んでいて面白かったです! 怒ったり泣いたりはしゃいだり。 思春期って大変だけど、その単純さが今では懐かしくてちょっと羨ましい。 小説やマンガでは、すれてて妙に世の中を達観している高校生が登場する事が少なくないのですが、昴はそれとは対照的です。 良い意味で素朴で普通の高校生。 そんな昴の成長過程がすごく微笑ましい。 情緒不安定になってひとり涙したりしながらも、この恋愛を通して昴は着実に大人になっています。 今までとは違う表情に、石倉同様、私もドキッとしちゃいました。 そして萌えもいっぱ~い。 性的にもまだ昴は幼いんですが、そこがまた可愛くて、純朴さとエロの対比がとてもおいしい。 肌色率が特別高いわけでも、激しい行為がるわけでもないんですが、「あの昴が」と思うと一気に萌え心が跳ね上がります! ということで、「愛の深さは膝くらい」の続編は、ふたりが本当の意味で恋人同士となるまでの話でした。 面白かったー!! 昴の成長が目覚ましい。 依田先生のマンガは何度も読むと味が出て来ます。 最初は見逃していた心の動きに気付いたり。 この作品も、読めば読むほどキャラクターの魅力に嵌りました。 大好きです!
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