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■ ボーダー・ライン/著者:久能千明/挿絵:蓮川愛/角川書店(2003年) --あらすじ-- 県警本部捜査一課に所属する真行寺佳也は、ある日、由利潤一郎という変わった男に出会い、何故か気に入られてしまった。 長身で整った顔立ちだが奇抜な格好をしている由利は、どこにいても人目を引く。 他人と距離を取ることを常としていた真行寺は、由利の存在に振り回されるばかり。 そんな中、周囲で起こった不審な事件を、真行寺は密かに探りはじめるのだが…。 -- この作品は、「グレイ・ゾーン」シリーズ第二弾です。 もちろんシリーズ通して読んだ方が面白いですが、この一冊でも話は理解できると思います。 真行寺は真面目すぎて、加えて見た目が綺麗で冷たい印象を与えるため、周囲から浮いた存在になっています。 一方の由利は、長身で美貌の頭脳明晰な弁護士なのに、奇抜なファッションと破天荒な行動で常に目立つ存在。 一見対照的なふたりが、反発しながらも、いつしか強い絆で結ばれることとなるのですが…。 電波な受は時々出会いますが、こんな電波な攻はなかなかいませんよ…! 電波なキャラは、その突拍子もない行動にしばしば苛つかされるのですが、一転してシリアスになったときの威力は絶大です。 序盤はどうやったらこの由利に真行寺が惚れるんだと疑問に思っていましたが…これは惚れるしかない! 由利に対し、こんなに魅力を感じる時が来るとは思いませんでした。 真行寺が友人の死を切っ掛けに調べはじめた事件は、予想以上に根が深く、警察の上層部をも巻き込んだ大スキャンダルに繋がります。 1人密かに事件を追う真行寺ですが、それによってどんどん精神的に追い詰められてしまう。 真行寺の苦しくても泣けない性格を知っている由利は、そんな真行寺を無理に問い詰めようとはせず、セックスという形で逃げ場を作ってあげています。 それは決して由利にとって楽な時間ではないけれど、真行寺を失いたくない、守りたいから、何も聞かない。 由利が真剣さがひしひしと伝わってくる。 何度もセックスシーンがありますが、激しければ激しいほど、切なくて胸が苦しくなります。 久能先生はセックスに心理描写を織り交ぜるのがとても巧いですね。 この先、核心には触れていませんが、結末を匂わせる部分があります。 予備知識無しに読みたいという方はスルーしてください。 由利が事件を知ったことで、話は大きく動きます。 真行寺は抱えていたものを吐き出し、ようやく由利への気持ちを自覚する。 でも、未来への希望の中に見え隠れする、破滅への予感。 うぅぅ………。 話の組み立てが神すぎます。 涙が溢れて文字が読めないんですがどうしたらいいですか…。 何事にも真っ直ぐで自分に厳しい真行寺。 そんな不器用さが愛しくもあり、とても悲しい。 二人が再びスタートラインに立てる日が訪れることを祈ります。 「グレイ・ゾーン」を読んだ方はある程度ラストが予測できると思いますが、私はこの作品から入ったので(ドラマCDの方ですが)かなり衝撃を受けました。 切なさややるせなさで胸がいっぱいになり、涙が止まらない。 しかし、このシリーズはまだ完結していません。 悲しい涙ではなく喜びの涙が止まらない、そんな結末を迎えられるといいですね。 ■朱い熱 私立櫻丘学園寮/著者:橘紅緒/挿絵:北畠あけ乃/SHYノベルズ(2006年) --あらすじ-- 華奢な体格に少女のような容貌の松嶋理利。 しかし、容赦なく他人の弱い部分を抉るような毒を吐く理利は、『櫻丘寮の悪魔』と呼ばれていた。 理利の抱えている傷を共有するのは、唯一、ひとつ年上の従兄・斎木志鶴だけ。 互いに傷を抱え、求め合うが…。 -- 二人の出会いは理利が小学6年、志鶴が中学1年生の時。 孤児だった理利は、子供のいなかった画家・千賀籐醐に引き取られた。 そこで二人は出会い、籐醐が亡くなった後は、同じ櫻丘学園の寮で暮らしている。 孤立する理利に対しても、志鶴は優しい。 でも、志鶴が自分の近くにいるのは、自分に対して後ろめたい過去を抱えているからだと理利は知っている。 お互いに求め合っているけれど、それぞれに抱えている過去が、その想いを複雑にしています。 その過去はここでは伏せますが、理利はその事件の真実を知っている。 それを話せば志鶴は救われるかもしれない。 だけど、自分を憎み、離れていくだろう。 そして自分が求めている志鶴の傍に、自分がいてはいけない。 そう思いながらも、理利は志鶴の手を離すことができません。 一方の志鶴は、周りから優等生だと見られているけれど、その実激しい面も抱えています。 だけど、理利を失いたくないからそれを抑えている。 二人とも相手を失いたくないからこそ、気持ちを抑えながら生きていて、どんどん追い詰められて…。 どれだけ身体を重ねても、心はすれ違ったまま。 そんな姿が痛々しい。 そこら中に胸の痛くなるセリフが溢れています。 橘先生の作品はいつも静かだけれど熱くて、時々痛いんだよね…と思っていましたが、今回は痛いどころじゃなかったです。 激痛でした。 胸がいっぱいで、上手く言葉に出来ません。 6年にも及ぶ二人の関係は、卒業により転機が訪れます。 理利は志鶴を解放し、志鶴は理利と新たな関係を始めるために一度は手を離す。 正直、これはもうハッピーエンドなんてないものだと感じていました。 そこまでも何度か泣きましたけど、ラスト30ページくらいはもう涙が止まらなかった…。 この作品は、「櫻丘学園寮」シリーズの第3弾です。 理利はこのシリーズ1作目、2作目にも登場していますが、「気むずかし屋で口の悪い美人」という立ち位置だったと思います。 そんな理利が、実はこんなに胸に傷を抱えているとは…。 その痛さは予想以上で、まさに「涙なくして読めない」作品でした。 これを読んだ後シリーズを振り返ると、今まで見えなかった部分が見えてきます。 この一冊だけでも面白いですが、シリーズ通して読むことをオススメします!
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