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人材派遣会社「エスコート」のボディガード部門に所属する男たちの物語です。「エスコート」「ディール」「ミステイク」「フィフス」「クラッシュ」と5巻が刊行されています。どの巻も個性的で魅力的なガードが登場し、それぞれ違った味のカップリングで楽しませてくれますが、特におすすめなのがこの二作目「ディール」です。 トップのボディガードとして第一線で働く延清。 その延清が、公園の片隅で見知らぬ男たちに襲われていた律を、身体を取引材料として気まぐれに助けた日から、二人の関係は始まります。 足を痛めた律を気まぐれに背負う延清。延清にとってその行為には、機能的に運ぶということ以上の意味は何もなかったのですが、背負われた律にとって、延清の広い背中は失った家族との幸せな時間の象徴であり、安心感でした。 義父や義兄とも体の関係があるものの、実の母親にまで見て見ぬふりをされていた孤独な律に取って、自分を気遣ってくれる延清の行為は、初めて感じる他人の気遣いであり、そのぬくもりによって律は救われるのです。 延清によって救われた律は、命さえ預けてもいいとまで彼に信頼を寄せます。 それに戸惑う延清。延清もまた、虐待によって愛を知らずに育ったため、律に心を開くことができません。愛してしまえばまた捨てられるのではないか…という無意識の不安感から、律に素っ気ない態度をとったり、他の女性と寝たり、律の愛情の深さをに試してしまいます。 しかし、律が一貫して延清に無償の愛を捧げるので、読者は、不憫に思っても延清に対して理不尽な思いを抱くことはありません。誰もが心のどこかで求めているすべてを許し受け入れてくれる母親的な存在――― 律の視点にはその母性があふれているので、読者も延清へ憐憫の情を感じながら読み進めることができます。 愛することを知らない延清にとって、それは不安でいたたまれない感情であるけれど、それでも手離すことのできない執着で、本人にもその感情を説明することができません。律はそんな延清を慈しむようなやさしさで延清に愛される喜びを教えようとします。虐待というテーマを扱いながらも暗く陰鬱にならずにすんだのは、律の深い慈しみであふれる作品だからでしょう。
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