「演じる」ということに対する業の深さ
新人俳優の音彦に、大手映画会社から出演依頼が舞い込んだ。
相手役は天才俳優と名高い飛滝。
けれど、出演条件は飛滝と同居すること!? 映画の設定通り、兄弟として暮らし始めたとたん、“兄”として必要以上に甘やかし、触れてくる飛滝。
毎夜“弟”を抱きしめて眠る飛滝に、音彦は不安を募らせる。
そしてついに、兄弟の一線を越える夜が訪れて!? バックステージ・セクシャルLOVE。
憑依系の俳優がさらりと部屋にやってきて、当たり前のように「兄」になる。
あまり実績もなく才能も無いような、ルックスだけが取り柄の「弟役」音彦は、驚き、戸惑いつつ彼に合わせて自分も芝居を打ち始める…
私だったらまるっきり「兄」に成り切っている飛滝に恐怖を感じると思う。でも「弟」の音彦も飛滝に引き摺られるように「玲二」という男になっていく。
その描写、その時間軸、その空気感。
役と現実がないまぜになり、境界線が曖昧になり、遂に「兄弟なのに」「男同士なのに」性的関係を持ってしまう。
視点は「弟」の音彦なので、玲二が半分・音彦が半分の体で飛滝に「本当に」惹かれて、独占欲や役を離れた後どうなるのかという焦燥感、またこんな事をさせている映画監督への対抗心がぐるぐると渦巻いている感じ。