まさに耽美。切なく儚く激しい愛。
何もかもが管理された未来都市・タナグラ。
その片隅の、歓楽都市・ミダスの怠惰な息遣いの中でしか生きられない若者たちには、夢を語り合い愛を求めることすら許されないのか…。耽美SF大河ロマン。
特権階級のイアソンとスラム街出身のリキが出逢い、愛憎はもちろんのこと矜持、独占欲、征服欲が渦巻くなか「恋愛」とは違う地平で織り成された物語。
物語は終盤にかけて不穏な方向へ加速され、誰にもどうすることも出来ない切迫した場所へ帰着します。
けれど、その帰着した最期の場面においても二人とも自分自身で選択したものであり、その決意や覚悟や心の深い場所からやっと表層に現れ出た「愛」によく似た二人にしか共有できない感情の機微に読み手の私は嗚咽を漏らしながら号泣しました。