ヤマシタトモコさんの非BL作品。一応非BL作品にカテゴライズされてはいますが、レーベルが「クロフネ」という所からも予想できるように、匂い系といえる作品かと思います。ホラー作品というのか、オカルト作品というのか。そういった描写が苦手な方には怖いシーンもたくさん出てくる作品ですので、注意が必要かもしれません。
主人公は書店員・三角。
彼は子どものころから「人ならざる者」が見えてしまう体質。けれど、それを認めるのが怖く見て見ぬふりをしてきたという青年。そんな彼のもとへとやってきたのが除霊師の冷川。彼から除霊をする手伝いをしてほしいと請われ、手を貸すことになるのだが…。
怖いものから逃げ続けてきた三角くんが、除霊の手伝いをするようになる理由。
除霊師としては一流なのに、生活能力が著しく低い冷川さん。
そして除霊という体験を経て知り合いになっていく登場人物たち。
出てくるキャラが、みんな個性的で魅力的なのもこの作品の大きなポイントの一つ。
そして、彼らが除霊を通して解き明かしていく「謎」が最高に面白い。
非BL作品ではありますが、三角くんと冷川さんが、少しずつ距離を近づけていく。その過程がほんのり匂い系で、激萌えします。何より、除霊の際に彼らが快楽を感じる様がエロい!
エロさはないのに、そこはかとないエロスを感じる作品です。
書店で働くごく普通の青年ですが、子どものころから「人ならざる者」が見えてしまう体質の三角くん。その日も「人ではないもの」が見えて。
そんな彼のもとにやってきたのが除霊師・冷川さん。三角くんの身体を使い、三角くんが見えていた「それ」を除霊するのだが…。
1巻は、三角くんと冷川さんの出会い編。
除霊師としては有能な冷川さんが、三角くんをスカウトした理由。
怖いものから目を背けてきた三角くんが、冷川さんとともに除霊の仕事をするようになる過程。
そして、除霊をする「方法」。この方法が、めっちゃエロいです…。
霊のビジュアルがややグロテスクで怖い。そして、そんな彼らを淡々と除霊していく冷川さんも。
霊と話をして助けてあげたいと願う三角くんと、バッサリと除霊してしまう冷川さんの対比がなんとも面白い。
あっさりと除霊していく彼らですが、そんな中出会うのが、刑事の半澤さん。1年まえの殺人事件の被害者の、見つかっていない体の一部を探してほしいと頼まれ…。
この「殺人事件」が、この作品のベースになる出来事。ここから、次巻へと続いていきます。
依頼があった女子校で、仕事をこなしていく冷川さんと三角くんの二人。
ところが、その調査中に思いがけない形で1巻の殺人事件で知った「非浦英莉可」の名前と遭遇し…。
1巻で禍々しい存在だと認識していた「非浦英莉可」が、女子高生であった、という事実。
そしてそんな彼女と三角くんが惹かれあうという状況。
怖い、でも面白い。
「非浦英莉可」に惹かれる三角くんですが、そんな三角くんをみて冷川さんが激しい執着心を持つシーンがめっちゃ萌えます。霊に対しては冷酷とも思える態度で除霊し続けてきた冷川さんが見せる三角くんへの執着心に、これもうBLといっていいんじゃないのかな?とちょっと思ったりします。
そして、彼らがついにエリカと出会い…。
エリカという少女の謎を残したまま3巻へと続きます。
除霊の依頼をこなしつつ日々過ごしている冷川さんと三角くん。
三角くんに執着し、身体の中をかき回す(この描写がエロくてけしからんです)冷川さんですが、今まで「見えざる者」と孤軍奮闘してきた三角くんの方もまた、自分を理解してくれる冷川さんに特別な思いを抱いている模様。それが=恋愛感情ではないにせよ、二人のお互いを想う気持ちが少しずつ寄り添ってきているように見受けられます。
特に終盤の二人の様子には激しく萌えます。飄々としている冷川さんの内面を見たい、知りたいと願う三角くん。
冷川さんのあの世間ずれしている中身は、一体どころから来ているのか。
そして、「エリカ」の存在も。
彼女がどんな少女なのか、それも少しずつ見えてくる。実は、彼女は…。
という。
3巻は怖い描写はやや控えめですが、精神的にすごく怖いです。
4巻は、エリカちゃんが抱えているモノと、三角くんの過去のお話がメイン。
1巻では禍々しい存在だと思っていたエリカちゃんですが、彼女もかなりヘビーな霊感持ちさん。それを、利用されてしまっている。
けれど、彼女がなぜ今の境遇に身を置いているのか、というのはまださわり部分しか描かれていないので、謎はまだ残ったまま。
そしてもう一つ、三角くんの過去のお話。
過去の、といっていいのか。彼がもつ霊力の秘密、といったほうが正しいかも。
三角くんの両親のお話。
両親の、強さと愛情の深さに思わず落涙する。三角くんのお父さんがまた登場してくれるといいのだけれど。
冷川さんと三角くん、の二人に関しては、最後のシーンが印象的。
霊的なものを恐れていた三角くんが、冷川さんの危機にきちんと対応して救う。カッコいいです。
5巻では物語が大きく動きます。
一つ目は冷川さんの過去について描かれていること。
冷川さんの、あの生活能力の低さだとか、霊に対して冷酷な理由が、やっと見えてくる。
そしてもう一つはエリカちゃんが半澤さんと出会うこと。
守られていたはずのエリカちゃんが直面している危機に、読んでいてハラハラが止まらない。
どちらもこの物語を読み進めていくうえで外すことのできない重要なストーリーで、冷川さんもエリカちゃんも、可哀想で思わず泣けた。
どのエピソードも「半澤さん」という存在が非常に効果的に描かれている。その描き方が、さすがヤマシタさんといった感じです。
『さんかく窓は~』はオカルト風味満載でそれがこの作品の魅力ですが、でも、この作品のもう一つの大きな魅力は、「愛」だと思うんですよね。
家族愛、もちろん恋愛の愛、そして友情としての愛。
いろいろな形の「愛」がありますが、親から愛されていたか否か、で、その人の根本が大きく変わるさまが描かれていると思うのです。
エリカちゃんは、親から売られる形で「先生」と出会い、そして「呪い屋」になった。なった、というよりも「なるように強要された」。
そんな彼女が、三角くんと出会い、そして自分の罪を罪として自覚できるようになった。
三角くんがエリカちゃんにあげたものは友情としての愛なわけですが、見返りのない愛情を三角くんから受け取り、それによって彼女は人として救われた。
霊や呪いといった現実社会で裁くことのできない「モノ」。
人を駒のように扱い、自分の素性は決して見せることのない「先生」との対決。
今後、どう展開していくのか楽しみです。
出版社:リブレ
レーベル:クロフネコミックス
シリーズ:さんかく窓の外側は夜
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価格:¥610(税抜)
シリーズ:さんかく窓の外側は夜
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