13歳のままならない恋心 走り出した愛に理性のバリアは効かない
「STAYGOLD」は現在「onBLUE」で連載中の秀良子先生によるBL作品です。2014年に一迅社(gateauコミックス)から1巻(通常版・特装版)が刊行されましたが、2015年「onBLUE」への移籍後、2017年2月に祥伝社から新装版として1巻が発売され、2019年3月現在、4巻まで発行されている大人気シリーズです。
“一つ屋根の下年の差BL”の舞台となる中山家はちょっと複雑な家族構成。物語の中心となる中山駿人(13歳から始まります)とその妹・菊花は、母の家出の後、叔父の優士(在宅の翻訳家)、コウ(大学生)と一緒に暮らしています。実は、優士と駿人の母・弥生は親の連れ子同士で血の繋がりはありません。両親の再婚後に生まれた弟・コウ、弥生が2度の結婚を経て生んだ子供たちが駿人と菊花でした。いろいろな事情はあるものの、なんとか「家族」としてやっていた中山家でしたが、中学生の駿人の告白を機にそれまでの状況が徐々に変わっていくのでした。幼い頃から、奔放で衝動的な母と違い穏やかで優しかった優士が大好きだった駿人は、ある日その気持ちが恋愛感情であると宣言するのでした。思春期の甥っ子の告白に戸惑う優士なのですが…。子供というには大人で、大人にしては純粋すぎる、微妙なお年頃の駿人と、一家の大黒柱として懸命に「家族」のかたちを守ろうとする、若いのにちょっと枯れ気味な優士、まだ“LOVE”に至っていない二人の関係性にちょっとじれったさを感じるところもあるのですが、丁寧にじっくりと登場人物の”メタモルフォーゼ“が描かれる本作には、既存BLとは一味違うような新しい魅力が感じられます。さらに4巻に至っても、いまだに駿人×優士なのか、優士×駿人なのか明らかでないのです!
また、中心になっている二人の周囲、モブに至るまで魅力的なキャラクター揃いです。中山家の次男・コウに10年来の想いを寄せる日高は掲載誌のファン投票で駿人に次いで2位という高支持を獲得するほどの人気で、待ちに待った(?)コウ×日高ターンの4巻は多くの読者の心を鷲掴みにし、発売後瞬く間にちるちるのレビューランキング1位を獲得したのでした。物語は様々な視点から淡々と語られ、中山家の日常はまだまだ続きます。いよいよ高校生になり、一段と逞しく、いい男になって帰ってきた駿人と優士のこれからに目が離せません!(もちろん、コウと日高からも!)
中山家はちょっと複雑な事情を抱えながらも「家族」として、一つ屋根の下に暮らしていましたが、ある日、中学生の駿人が金髪に!叔父である優士は「こんな家庭環境じゃ仕方ないのか」と反抗期突入もやむなしの気持ちでいたところ、実は、駿人は優士に恋愛感情を持っていると告白、キスするのでした。戸惑う大人たちをよそに、13歳の恋心は、強くまっすぐに叔父へと向けられていくのですが…。駿人を中心に描かれる中山家の日常と、駿人に片思いの同級生・美浦さん、コウに片思いの同級生・日高の視点も交えながら、ゆるやかに、片想いするすべての人々に対して(?)優しく展開していく1巻。思春期の少年の表裏、子供だったり大人だったりする特別な時期を、中山家の壁になった気持ちで堪能できます。ひとはいつから大人になるんでしょうか…?
描き下ろしおまけまんがは、ラブキュアで始まる中山家の日曜日。新装版の特別収録として、“宇田川町で待っててよ。”の番外編、“矢代智哉には悩みがある。”が楽しめます。
高校に行かないと言い張る駿人に対しての苦肉の策として、コウの友人・日高が家庭教師として中山家に出入りするようになります。優士の庇護の下にいるのは嫌だと、頑なに進学を拒む駿人に対して、日高はある提案をするのでした。新装版の1巻と同時に発売された2巻では、ちゃっかり愛するコウの家(中山家)に出入りするようになった日高が存在感を高めます。「家族」であることにこだわる優士との距離はなかなか縮まらないなか、家庭教師(いろんな意味で)という強力な助っ人を得た駿人は、ある作戦を遂行するのですが!?
1巻から時間の経過を感じるように、ちょっとずつ大人になっていく駿人の変化も楽しい2巻。さらに愛すべき脇キャラ・日高や美浦さんも絶賛片想い中。どこもラブラブにならないのに、様々な恋する態にキュンとせずにはいられません。
描き下ろしおまけまんがは、中山家の紅一点・菊花ちゃんが母親譲りの(?)奔放さの片鱗をみせる保育園ライフ。本当に男って勝手よね!
優士から拒絶されてしまった駿人は以前の態度に戻り、中山家は一見元通り「家族」の日々を送っていたのですが、そんな彼らの前に、3年前に家出した駿人の母親・弥生が戻ってくるのでした。彼女は、海女になるべく一人で海辺の街に暮らしており、そこへ駿人と菊花を連れていくと言い出すのですが…。運動会で活躍し、クラスメイトと接する中学生らしい駿人の態度にちょっと油断する優士の前に、彼の人生の嵐である弥生が現れたことで、少しずつ彼らの過去が見えてくる3巻。大人が過去を振り返っている間にも駿人はどんどん成長していきます。家庭教師の日高ともなんだかいい関係。15歳の誕生日では、あれ?どっちか攻か、これはわかんないぞ!と思ったり思わなかったり…。そして、美浦さんの初恋もクライマックスを迎えますよ。
描き下ろしおまけまんがは、高校生になって成長著しい駿人に、内心穏やかでいられない優士の夢のおはなし。いろんな駿人が可愛い!
3巻のラストからちょっと過去に戻り、コウと日高、大学4年生の二人の日々が描かれています。中学で出会ってから10年、来る日も来る日も自分が望むような日は訪れないと思いつつ、空気のように馴染む友人としてコウのそばにいる日高に、あるとき奇跡が起こるのでした。教育実習から戻り、久しぶりにコウに再会した日高は、‘おつかれ飲み’でのお酒の勢いと、コウに会えた高揚感からついに…!?
片想いのスペシャリスト・日高の重すぎる想いが爆発するモノローグが印象的、恋をする全ての人に読んでほしい名言だらけの4巻は、発売開始直後から多くのファンに支持されました。コウの前で平静を装おうとすればするほど、心の中は沸騰寸前、実は必死な日高を応援せずにはいられません。
描き下ろしのおまけまんがは、実はコウ以外にはバレバレだった日高の気持ち、やはり女子は鋭いのです。アニメイトの有償特典小冊子では、日高のキスマークの秘密が明かされています。