普通だったらあまり描かれないような、些細な心情の変化、表情までもが実に丁寧かつ繊細に描かれていて、非常にキャラクターに感情移入がしやすかったです。
最初に書いたように確かにゆったり展開で一巻の後半でやっとお互いを意識し始める程度。エロエロでもなければ、ラブラブという訳でもない。
BLとしての印象はまだとても薄いです。けれど、純粋に続きが気になる不思議な作品です。
美しい絵に天然王子様とドジっ子繊細美人という、少女漫画のようなキャラ設定の上、有川までが容姿も含めてフェミニンなので、BLには「男×男」というものを求めているので、ちょっと物足りないところもあります。だけど読み返してみると悪くない。インパクトのある作品は、読み返し率も多いのだけど、こんな穏やかな作品も読み返してみるものですね。じれったく進む二人の関係が良いです。描かれる花々と共に癒されてしまいました。
おおらかで真っ直ぐな有川。可哀想なくらいドジな御崎くん。
最近の作品にありがちな急速な関係変化ではなく、ゆっくりゆっくりと変化してゆく二人の関係……
気付けば貴女も、この作品の世界観に魅了されていることでしょう。
2巻は最初から波乱含みな幕開けです!
波乱の元凶の川端の登場で物語に深みが出てきました。御崎と川端の過去のエピソードが少女マンガのようなストーリーの中でやけにリアルに感じて、川端は嫌な奴だし不気味に描かれているので気持ち悪くすらあるのですが、その分有川が素敵に見えてしまいます。
川端と対峙したときや、御崎を追いかけてまっすぐに見つめるシーンは本当に格好よかった。
一緒にいると自分まで幸せな気持ちになれそうで、有川みたいな育ちの良い幸せキャラって大好きです。ラストで有川が御崎を部屋にお泊りに誘うのですが、そのストレートな誘い方がまたいい感じです。
今までの恋人にはドライだった有川くんは、はじめての本気の恋に戸惑うばかり。
自分が初めての恋人だと知り、御崎くんの気持ちがほぐれるまで待ちます。
川端がまたからんだりして、御崎くんの心に強い確信みたいなものを残します。
ゆっくり、確実に二人の絆は深まっていく。時間の流れのゆるやかさが、すごく染みます。
二人の心の近づきかたが、ゆっくり感がいいですね。
珈琲を熱いまま有川くんへ飲ませる御崎くんの不器用さとか、クスリと笑えます。
最後の、一巻での花言葉の謎解きも大好き。
この本は、"花のみぞ知る"のスピンオフ作品で、大学の同級生 有川(攻)×御崎(受)の卒業後のお話と、御崎が慕う研究室の上司 辻村先生の過去のお話の、二本立てです。
幼馴染の蓮見晶(受)への恋心を抱いている辻村基晴(攻)と、同じく基晴が好きな晶。
しかし家柄の違いや晶には許嫁がいるため、2人の愛は結ばれぬ運命。その"運命"を受け入れる代わりに、一度だけ、2人は、互いを忘れないように、関係を持ちます。それが何とも切ない!!
正直ハピエンが好きです。好きですがこの終わりもありかな、と思うほどきれいな終わり方でした。
二人がお互いを思う気持ちが優しくて、切なくて、痛くて。もうどうしようもない未来が、すれちがいがもどかしくて。
辻村の最後の「もう遅い」が突き刺さりました。どんな形であれ、二人が幸せな人生を送ってくれていたらいいなぁと思います。
ピアノの旋律が美しく響くオープニングが印象的です。
BGMの入り方やCEが綺麗で、原作コミックスの、いい意味で浮世離れした世界感を上手に表現していると思います。
武内さんの御崎は、さすがの出来という印象でした。
御崎の、なつかない猫のような素直じゃない雰囲気を、可愛気を失わないほどほどの演技で上手に表現しています。
特に、有川に対し強い言葉を放った後、一瞬で後悔する「…!!」や、積極的に踏み込まれ、赤くなって後ずさってしまう「…!!」などの、台詞のない空気を出すのがすごく上手いと思います。
Hな場面も、この作品らしい優しい雰囲気に溢れていました。
庭からの虫の音や、自然な衣擦れ音、BGMのゆったりしたピアノ音でうっとり…。
喘ぎにモノローグがかぶることもなく、安心して堪能出来ます。
もとより武内さんと小野さんの演技には不安なし!
台詞の中で、言葉通りの意味と、その裏で動いている感情が滲み出ている言葉が言われるたびにどきりとさせられます。
特に印象に残ったのは、水仙を見ていた晶の「めずらしい花だと思って」と、基晴の「間に合わないよ、もう、間に合わないんだ」の二つの台詞です。
こういう押し隠されている感情を表すのは、音声ドラマならではできる表現だと思いました。
日野さん、野島さんの演技が素晴らしかったと思います。
上で挙げた台詞以外にも、どの台詞も欠けてはならない大事な台詞になっていたと思います。泣きの演技も多いですが、安定していました。