一番残酷で一番綺麗
母とふたり、ボストンで暮らす15歳の少年ジェルミ。友達に恵まれ、ボランティアと勉強に励む幸せな生活を送っていた彼の日常は、ある男との出会いで一変する。母・サンドラの婚約者で大金持ちの英国紳士・グレッグ。絵に描いたような理想の義父の中には、恐るべき悪魔の顔が潜んでいた。サンドラの幸福を盾に、ジェルミに肉体関係を迫ったのだ。苦痛と苦悩に満ちた地獄の日々が始まった。愛と憎悪、喜びと悲しみ…綾なす複雑な人間の感情を、萩尾望都が熟練のペンで描き切った壮大なるヒューマン・ドラマ、開幕。
15歳のジェルミが義父(グレッグ)と実母(サンドラ)を自動車事故で亡くすところからお話はスタートし、なぜ彼がそれを望んだかという過去へと戻ります。
この義父のグレッグがジェルミに執着し、彼を手に入れるためには非道にもなれるという人間だったのが彼の不幸の始まりでした。
しかも表向きはひじょうに優しく良い男に見えるところがタチが悪い。
これだけ長くて重い話を飽きさせずに重厚に美しくまとめたのは本当にすごいな、と。萩尾望都先生の描かれた話の中で一番心に残りました。