「人間」を描き切った作品
路彦は、深夜の教室である事件を目撃してしまう。それ以来、事件のことを探りにチンピラの信二が学校周辺をうろつき始めた。ひ弱な優等生と小さな組のヤクザ──年齢も環境も大きく違う二人なのに、知り合ってみるとなぜか奇妙な友情関係が芽生え、路彦の未成熟な心と体に、信二の存在は唯一の安らぎとなっていくのだが…。二人の出会いから九年の歳月を描く超長編。
夜の学校にこっそりと忍び込んだ加納路彦は、男とクラスメイトで、いつも女子からいじめられている斉藤が争っているのを目撃してしまいます。斉藤は窓から飛び降り、帰らぬ人となってしまいます。路彦も同級生である長尾からいじめられているので、始まりから暗い印象を持ちました。
そして、斉藤を巡り、路彦は山田信二と出会います。
斉藤が亡くなった翌日、いじめていた人間が顔を真っ赤にして泣いている。偽善の涙、軽蔑すべき嘘つきの猿などと路彦は思うのです。
上巻では、路彦の中学生、高校生、大学生までが書かれています。このころの男の子は本当に目を見張るほど成長が早いです。ただし、かなり痛々しい場面があるので、途中何度か読むのを中断ししてしまった作品でもありました。