スタンダードの帝王とラテンの暴れ馬が次第に距離を詰めていく!
1,2巻までは竹書房の麗人から刊行されていましたが、レーベル移籍して現在は3巻まで出ています。まだ完結していません。シリーズ1巻の新装版には、旧版1巻には収録されていない番外編が新たに収録されました。2巻は旧版、新版とも同じ内容です。
堂々たるスポーツコミックに絶妙にボーイズなラブが織り込まれた名作です。レーベル移籍してもBL魂は健在。各話に必ずHをという麗人からするとかなり異色の作品でしたが、BLの枠を超えた素晴らしい作品です。
ソーシャルダンスのダンサー同士。杉木はスタンダードの帝王。鈴木はラテンの暴れ馬。杉木は自分にも他人にも厳しい求道者だが、世界では万年二位。そんな中、彼を暑くしたのが、規定度外視だがあふれるリズムにまかせて体を自由に操るラテンの鈴木だったー
普通はスタンダードとラテンのプロは別ですが、10DANCEは両方を踊って戦うという過酷な競技。これに向かってゆく二人を描きます。段々と友達から親友へ、同士、そして。。と距離を縮める二人が丁寧に描かれていて読み応えがあります。
万年世界二位の杉木はスタンダード専門。しかし日本人が二位というのは実際にはすごいことなのですが、完璧主義者の杉木は現状に満足していない。一方、鈴木はラテンの日本一。しかし世界にはまだまだというところ。鈴木が表舞台に出た当初は、規定を無視したダンスで物議を醸しながらも、躍動的な体の動きは人間業とは思えず、停滞期にあった杉木は惚れこみます。そんな杉木は、スタンダードとラテンを両方やるというまさにダンスの頂点である競技、10DANCEにでないかと鈴木に声をかけるところから話しが始まります。最初はなかなかうまく行かないレッスン。杉木が鈴木にスタンダードを教えますが、体が動かない鈴木。身をひくか悩む鈴木と、このまま進んで良いか悩む杉木。二人の焦りはつのってー。まだまだ序盤です。
ラティーノは音楽なしでは踊れない。それがきっかけになって、鈴木のスタンダードが形になり始めます。コネクションから二人の体のコンタクトが始まる。
杉木の世界選手権でのシーンはしびれます。少し甘い雰囲気が出てきます。しかし、杉木の友人で音楽担当の彼の存在が気になります。耳のいい鈴木がなにやら気づいたようですが、今後の伏線になるのでしょうか。そして2巻最後は、あの名シーン。今後ラテンの練習の方はどうなるのか?気になるところです。
2巻からかなり時間がたって発売された3巻。1,2巻にも増して、読み応えのある作品になっています。波長が合い出して、男性二人で踊ることに喜びを見いだす二人。手を合わせたコンタクトからお互いのリズムや感情の交流があり、体での会話が心地よい。ところ構わず、時間も気にせず練習に励む姿は感動的。読み終わるとただただ感動しかありません。特に、ダンスのシーンの体の線やシルエットがとても迫力があります。恋愛を超えた強い絆を感じるのですが、もはやBLでなくてもよいと思えるくらい、濃密な人間関係が描かれています。二人のダンスがスタートする予感。完成形はどこに行くのか?4巻も楽しみです。
2018年5月18日に、「通常版」と「特装版」(BL仕様!小冊子付)の2パターンで発売されましたが、「特装版」は発売後1週間を待たずに重版がかかるほどの人気となりました。3巻のラストから二人の心が急接近しニア恋愛な展開となっていくのですが、4巻では経験したことのない感情に戸惑う杉木と鈴木の葛藤が描かれています(特装版の小冊子は、そんな二人の葛藤をBL色全開で表現しているためファン必読となっています!)。悶々とする鈴木が、ラテンの世界チャンピオンと偶然街で出会ったことで、改めてダンスへの情熱を再燃させていくのですが…。5巻ではダンスも恋も熱い展開が期待できそうです。
5巻は2/3程がダンスパートだったのですが、本当に素晴らしかった!
紙面から溢れ出そうな熱気や聴こえてきそうな音楽、ステップの音や息遣い。
鈴木が世界を目指し、自分を解放して充実感を持ってダンスに向き合い踊る姿に感動せずにはいられませんでした。
杉木と鈴木。
自分の恋愛感情を認めることができず、5巻の終盤はシリアスな雰囲気のまま終わります。
ここで容易にくっつかないからこそ神な作品なんですけれども。
そろそろ幸せにしてあげてほしい気持ちとの狭間で、私も悶々としつつ、次巻を楽しみに待っていようと思います。(レビューより抜粋)