堂野崇文は痴漢と間違われて逮捕されるが、冤罪を訴え最高裁まで争ったため、実刑判決を受けてしまう。
入れられた雑居房は、喜多川圭や芝、柿崎、三橋といった殺人や詐欺を犯した癖のある男たちと一緒で、堂野にはとうてい馴染めなかった。
そんな中、「自分も冤罪だ」という三橋に堂野は心を開くようになるが…。
この二人の出会いからはじまる「真実の愛とはなにか」を極限まで突き詰めたような物語。
泣きます。号泣します。涙なくしてはぜったい読めない。
号泣、という表現をつかうほど読書で泣くことってそうそうないですが、まさかBL作品でこんなに泣くとは思いませんでした。
それは、『冤罪』という屈辱を受けながら「死」を望むほどの理不尽な境遇に身をおく男の絶望感や、同じ箱の中にいながらも、「自由を知らないから不自由と思えない」子供のような男がもつアンバランスな純粋さが、ありのまま淡々と描かれているからだと思います。
長い空白の期間を経て、ようやく堂野を見つけ出した喜多川が再会を果たす所から夢を形にするまでを描いた話。
「家があって、堂野がいて、犬が飼える」
喜多川が抱き続けたささやかな、されど、不可能にちかかった遠い夢。
なぜなら、堂野は結婚し子供がいて、すでに自分の居場所をもっていたから…。
喜多川はその現実に打ちのめされました。だけど、諦めることはできないので、可能な範囲で堂野のそばにいようと足掻きます。
万事が万事うまくいくというハッピーエンドが虚構であることを改めて認識させるような、最後まで厳しく甘さのないシナリオでした。