一穂ミチさんのレビュー一覧

なごり雪 小説

一穂ミチ 

離れることで見える気持ち

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌12冊目。

卒業のシーズン。
もちろん志緒のではありませんが、切なく少し息苦しくなるお話。

あぁあの歌声は誰だったか。
桂がそう一瞬思い返した時、きっと志緒の心は締め付けられたのでしょう。
他愛もないことを思い出している筈なのに、桂の記憶の道は自分ではなく、違う歌声の彼女を思い出そうとする行為に。
だから、「気にしないで」と言ったのに。
あっけら…

2

ちょうちょ結び 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

今も、昔も、変わらず夢中

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌11冊目。
クラフト紙のナチュラルな柔らかさと、少しはだけて胸が見えそうな着方をしている桂の着物姿のミスマッチ感に、思わず頬を覆ってしまいました。
どきどきする! 桂の流し目にどきどきします!


育てて育った、穏やかな愛情。
熱量が半端じゃなく、何もかもが必死できらめいて息苦しくて目がチカチカしたような愛情とは違う、今の志緒の心。
好きの度合いが減った…

4

バイバイ、ハックルベリー 小説

一穂ミチ  金ひかる 

タイムリー

この本の発売時期は、まさに新入学真っ盛りの4月。
実にタイムリー。

大学入学したての時に印象的な出会いをして、
普通に、友人としてつきあい始めて、
そして夏休みが終わるまでの、ほんの半年間ほどのお話。

そう、このお話の出会いが「大学」って所がポイント。
これが、中学や高校だと、そもそも恋愛って物の存在に気付くまでに時間がかかってこじれちゃうだろうし、社会人だと、青臭すぎる。

4

Summer Tune 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

守るべきもの、守りたいもの

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌10冊目。
このシリーズの同人誌も、いよいよ2桁の大台。続いてくれている事が嬉しいな、と、じわりじわり感じます。

もし。
もし大事な人が、盗撮されたかもしれない状況だったら――?
決して穏やかではない出来事が、志緒の大切な妹と幼馴染に降りかかります。
何も考えずに無鉄砲に挑む姿は、一見男らしく見えもしますが、実際はとても危険で怖くて真似できない。
そし…

3

my name is Red 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

赤にまつわるエトセトラ

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌9冊目。

今回は、「赤」という色の縛りでのショートストーリーが4作。
・誕生日プレゼントは大人の「証明」。内容は高校の校外学習の回想がメインの『ヴァーミリオン』
・気が退けるほど赤く染まったアレ。食べられない人と食べてしまう人、人それぞれの『カーマイン、クリムゾン』
・ナナカマドのえぐみと渋味はなくてはならないものだった『スカーレット』
・赤いというより…

2

春情終夜 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

いつの間にか学ぶ生と別れ

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌8冊目。
前回の「Sturday night Paralysis」の続きになります(こちら単独で読まれても大丈夫です)。

幼稚園児の、志緒の妹・美夏。
彼女の成長をとてつもなく感じられるストーリー。
それと同時に、志緒本人が自分の(良し悪しは抜きとして)成長も痛感する瞬間もそこに埋め込まれていました。

しかし。
駄々をこねて猫を飼いたいと言い張る美…

2

バイバイ、ハックルベリー 小説

一穂ミチ  金ひかる 

一穂さんだからこそ

一穂さん、大好きな作家さんです。
だからこそ、期待しすぎてしまったように思います。
一穂さんらしい、繊細の世界観で、
2人が心の距離を縮めていく様子にじわじわ沁み渡るものでした。
しかし、
いつもは綺麗にかんじる文字に、あざとさを感じてしまいました。

内容については、
大学に入った2人が、友人から心を通じ合わせていく様子で、
「何かが起こる」わけではありませんが、
だからこそ…

1

Saturday night paralysis 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

甘い麻痺

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌7冊目。

志緒が、成人式を迎えました。
ただこれだけの事なんだけれどなー…何だか目頭が熱くなる自分が居る。

桂の腕が麻痺。
ずっと腕枕していたから?それしか考えられない。
煙草の火をつけるにしても、財布から小銭を出すにしても、不便極まりないじゃないか。
俺のせいで。
そんな志緒の考えを、桂は嫌がります。

遠ざけたいくらいって言葉に他意はなか…

3

感情教育 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

たまらなく高ぶる


『雪よ林檎の香のごとく』同人誌6冊目。
志緒が高校生のときのお話。


夕方の電車で、男子が女子に、痴漢に遭う。
そんな話を志緒が桂に話した数日後、志緒本人が当事者となります。

その女子が通う高校に乗り込む志緒。
駆けつける桂。
そして、保護者として訪れる志緒の父。

一生徒というより、誰よりも特別な志緒を守る為に、良くはない私情を思い切り挟んだ桂の姿は志緒の目…

2

ランデブー 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

同じ目線で見ていても

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌5冊目。
沖縄で落ち合う二人のお話。

家族旅行の志緒と、職場の慰安旅行の桂。
偶然にもお互いの日程と場所が丸被りで、1日だけ、一緒に過ごします。
ただそれだけの設定でもキュンと来ちゃう。
静かにコッソリと、人目を盗んで二人で蜜な時間を……と考えると、正にタイトル通り。「ランデブー」以外の言葉が思いつきません。

沖縄に行った事のない私にも、一穂さんの…

2
PAGE TOP