野阿梓さんのレビュー一覧

緑色研究 下 小説

野阿梓  小島文美 

余りに重い一夏として

時代が軋みつつうねりゆく中、
引き裂かれた運命は再び出会い、そして空白を
埋める様に濃密な情愛を展開する。そこには
世情の律の入り込む余地なぞ一切無い。
やがてひと時の騒乱が過ぎて後…。

仮想史書として大きく広げられた風呂敷が耽美と
言う過程を経て収斂され、思念の対峙と言う
SF的過程を経て日常へと還って行きます。

執行雅が過ごしたのは、青年への階段と
一言で言うには余り…

1

緑色研究 上 小説

野阿梓  小島文美 

鉄と蜜の狭間で

「月光のイドラ」で描かれた事件より一年後、
執行雅は寵愛される者としての美しさを開花
させつつも未だ不安定な心理状態の中にあった。
その最中に巻き込まれた理不尽な状況。
そして雅は否応無しに濃密な性愛の儀礼へと
巻き込まれてゆく…。

耽美とSF、そして精神理念を融合させた妖しくも
硬質な世界が展開されています。
暗い美しさにじっくりと浸る事ができる作品でしょう。

1

月光のイドラ 小説

野阿梓  春日聖生 

装い、より一層

93年に刊行されたハードカバー単行本を
C★NOVELS Fantasiaの一冊として刊行
したもの。挿画をBLらしくしたのは時流に
合わせての事でありましょう。

但し、本文の骨太さに些かも変わる所は
ございません。耽美でありつつもSFとして、
冒険活劇譚としてしっかり読める構成と
なっております。
殿方の書いた初期BLとしても稀少なもので
ありましょう。

2

月光のイドラ 小説

野阿梓  小島文美 

美が至上となる迄に

衆道志向の下集った私塾で縁を持った公彦と雅。
二人の関係は密やかな敬愛も絡んで中々に濃厚な
ものとして描かれて居ます。
その縁で結ばれた二人の活劇譚、と言う一面も
愉しめるでしょう。

元々SFの手練れであった野阿梓氏が試みた『やおい』です。
続刊である『緑色研究』上・下もかなり良い歯応えです。

2

ミッドナイト・コール 小説

野阿梓 

分岐の可能性

作者の野阿梓さんは元来がSF作家。
その為物語の基本がSF仕立てになって
おり、文体も硬質な為ややとっつき難い
かも知れません。
しかし、性愛描写の部分の濃密さ鮮烈さも
同時に存在する為、好みのツボにはまれば
病み付きになるでしょう。

2
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