私はこの作品が大変気に入りましたため、全力で賞賛レビューを書かせていただきます。
こちらの単行本は、「当主様は悪戯がお好き」3話構成と、「当主様のお気に召すままに」3話の2作品で構成されていますが、今回は「当主様は悪戯がお好き」のほうをレビューいたします。
攻め:当主の雅堯(まさたか) 受け:新米執事の蒼伊(あおい)
主人公であり新米執事の蒼伊くんは純粋で素直。初心者ながらも執事という「職業」に対する熱心な想いが根底にあり、非常に好感が持てるキャラクターです。執事の求人からセクハラ面接に合格し、初めて執事として当主の雅堯(まさたか)に仕えます。
一方、当主の雅堯はいくつもの会社を経営する、容姿端麗・頭脳明晰なキャラクター。クールで完璧な印象とは裏腹に、不安定な精神状態を抱えている。過去の両親を亡くしたトラウマを抱えており、他人に対して嫌がらせ(この場合は執事へのセクハラ)して嫌われることで自分へ当てつけていたり、過去には寝るためだけに男と関係を重ねたりもしていたが、本当は信じられる愛情を渇望している。
初々しさに溢れた受けの蒼伊は、雅堯のセクハラに(最初は悪戯心でセクハラしていた)翻弄されながらも、雅堯のことを理解しようと真摯に向き合います。雅堯は本当は寂しいのだということを知り、ご主人様の支えになりたいと思い始めます。この頃はまだ「執事として」お役に立ちたいという気持ちでいます。そんな蒼伊の純粋な気持ちに雅堯も段々と惹かれてゆき、ストレートな愛情表現を見せ始めます。蒼伊も雅堯に惹かれてゆきます。しかし蒼伊は「執事」という立場上、主人に私的な好意を持つのはポリシーに反すると葛藤します。このままでは駄目な執事になってしまうと雅堯の元を離れようとした際に想いを打ち明け、雅堯と晴れて通じ合います。
まったくの初対面から始まった二人が、徐々に距離を縮めてく経緯を読者がなぞれるのが醍醐味です。
主人と執事のラブストーリーという一見ありがちなシチュエーションに見えますが、どちらも主人と執事の関係性に説得力があり、愛情深くて純粋な想いに溢れた素晴らしい個性をもっています。ストーリーの組み立て方やテンポの良さも読んでいて気持ち良く、何より濡れ場面のセクシーさ。なんて品のあるエロスなのでしょう。美麗なキャラクターデザイン、上品な燕尾服にも注目で読者を幸せな気持ちにさせてくれる作品です。