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BLだけど…

BLだけど個人的には一顕とかおりの異性愛関係の描き方がとてもよかった。二人はきっとまともにお互い好きで、それでいて将来を想像できて、気持ちに多少のすれ違いははるけれどそんなカップル(あるいは夫婦)など世の中掃いて捨てるほどいるだろう。一顕のかおりを求める気持ちもよくわかるが、P304で吐露されたかおりの気持ちだってよくわかる。そういったすれ違いに折り合いをつけて付き合いあるいは結婚することは決して間違ってはいないし、むしろありふれたことだと思う。一顕もかおりもお互い器用な人間ではあるので、子供を作るためのセックスをして、家庭ができたとしたらなんだかんだまともな家庭を築くのでは…と思う。一顕の言う、大人の一級、二級…と進級していくような。そんなある意味利口で器用な関係性が、突然降り出した土砂降りのような恋によって閉ざされたこと、とても切なくそれでいてロマンチックに感じられた。
ありふれているけれど繊細で、切なくて…そんなリアルな人間関係がとてもよく描かれていてとてもよかったです。

木原作品の中で一番好きです

木原作品は色々読みましたがこの作品が一番好きです。というか今まで読んだBL作品で一番大好きな、私にとって大切な作品です。

秋沢は楠田に浮気、暴力、レイプと、あまりにも酷いことをしてしまい、楠田も秋沢に酷いトラウマを植え付けられる。
もう一緒にいるのは無理、秋沢とわかり合うことも共に生きることも絶対に無理。楠田はそれを充分なくらい思い知らされたはずなのに…。
正光の前で泣きわめく秋沢の声を聞いた楠田は、なぜかボロボロと涙を流してしまうんですよね…。そして「死にたい」という秋沢の言葉に対する「海斗が死んだらどうしよう」。
私はこの台詞が苦しくて辛くて愛おしくて仕方がありませんでした。
あんなに酷いことをされたのに、なんで楠田は秋沢のことを憎まないのか、なんで死んでしまえと思わないのか。
自分が秋沢の死ぬ原因になったら後味が悪い、というのもあると思いますが、楠田はどんなに秋沢が怖くても、心の深い部分が秋沢にどうしようもなく惹かれてしまっていたんだと思います。悲しいくらいに…。
楠田は秋沢の才能に惹かれて、そんな才能溢れる秋沢が実はすごく子供っぽいところが可愛く思えて、そして自分に対して一途なところが嬉しくて…単純に、楠田は秋沢のことが本当に好きだったんだと思います。
ただ、あまりにも楠田が人の気持ちを理解できなさすぎて、このまま一緒にいたらずっと傷つくから、離れることを選んだのに…。
物語の終盤、秋沢は楠田の気持ちをやっと理解し始めて、ようやく諦めようとします。
しかし、楠田に手紙を送るのを辞めろと言われて、それを秋沢は拒否する。
自分のことを忘れろと言う楠田に「忘れたくない」と言う秋沢。
ここで秋沢が楠田のことを忘れようとして、手紙を送るのも辞めたら、二人の関係はキレイに終われたんだと思います。
しかし秋沢は最後の最後まで楠田に対して一途であり続ける。迷惑をかけない形なら、楠田を想い続けたいと執着する。
楠田が秋沢の指に勇気を出して触れたのは、そんな秋沢の気持ちが捨てられなかったからだと思います。あんなに酷いことをされたのに、あんなに自己中心な男なのに、あんなに傷付けられたのに…それでもやり直したいと思ってしまっている。
楠田もまた、秋沢に対して一途すぎるなあと思って泣けてきます…。あんなに酷いことをされたのに、まだ好きだなんて…。
このあたりの楠田の気持ちはCOLD THE FINALを読むとよりよくわかります…泣けます…。

お互いに無いものを持ちあっていて、だからこそ惹かれあって、だからこそ理解しえなくて、だからこそ酷く傷付きあって…そんな二人が最後の最後で一歩関係を前進させられる。そんな苦しくて切なくて愛おしい二人の話でした。

前作の透、藤島さん、もちょいちょい出て来ていい感じです!透も結構やばい奴だったのに、楠田のよき理解者になってて感慨深いですね…。あと谷口一瞬出て来てて嬉しい。

あとごく普通のリーマンな楠田が、秋沢のセックスに溺れて滅茶苦茶エッロくなるのは興奮せざるを得ないかったです…。in TOKYOの後半〜in NEWYORK前半の楠田えっちすぎてちょっともう…秋沢が惚れるのもわかる…(笑)

人を選ぶ作品かもしれませんが、私にとってはほんとうに大好きな、最高な作品です。出会えて本当に良かったです。

木原作品はやはり期待を裏切らない

狂犬ストーカーの青池と、ずる賢くて性悪な大河内。
正直、木原作品によく出てくるタイプのクズキャラだなぁという印象で、青池が大河内を陵辱、監禁するシーンも描写としてはキツいですが木原作品をすでに結構読んでる身としてはキツい描写に慣れてしまってそこまで新鮮味ないな…と思って読んでました。
しかしそう思うのも序盤だけで、どんどん物語にひきこまれまい…
大河内視点のときは青池の思惑がわからず、青池視点のときは大河内の思惑がわからず、ゾクゾクしながら一気に読み進めてしまいました。
終盤は、大河内が案外あっさり陥落したと思いきや、突然落としてくるという…青池が手紙を手にしたシーンは衝撃でした。
最後の最後まで大河内って嫌な奴だったなと…(青池もやばい奴ですが)
でも木原作品の良いところは、嫌な奴がなかなか良い奴にならず、ほぼそのままの人間性のまま両想いにたどり着くところだと思うので、期待を裏切らない落とし所でした。
滅茶苦茶な恋愛関係(といっていいのか…)だと思いますが、こんな憎しみ合いカップルもまた一つの萌えでした。最高でした。

COLDシリーズに出会えて良かった

同人誌はちょくちょく集めていたのですが、手に入っていない小冊子などもたくさんあったのでこうして一冊の本にしていただけて本当に嬉しいです。

COLD HEARTシリーズの最後は楠田と秋沢の関係がようやく一歩踏み出せたところで終わりましたが、この総集編は2人が関係を修復するまでをほんとうにじっくりと丁寧に描かれています。
思いやりを徐々に学びつつも、やはり自己中な秋沢と、そんな秋沢に対するトラウマが忘れられないくせに、なんだかんだ秋沢と離れ難い楠田がなんとも切なくていじらしい…。

楠田と秋沢がふたたび抱き合えたシーンは思わず涙が流れました。世の中の数えきれないBL作品のなかで、想い合う2人がようやく身体をつなげられた…というシーンは腐るほどありますが、楠田と秋沢は乗り越えた困難があまりにも大きすぎて、泣かずにはいられなかったです…。抱き合ったあと、泣きじゃくる楠田にもまた泣かされました…。
「誰のことも傷つけるな」
この楠田の言葉が、この2人の物語の全てだったんじゃないかなと思いました。めちゃくちゃシンプルな言葉だけど、きっとそれはとても難しいこと。秋沢ほどにないにせよ、誰にだって他人を不用意に傷つけてしまうことはよくあることです。秋沢はエキセントリックなキャラですが、実は誰でも秋沢のような一面は持ち合わせてるんじゃないかなぁと思います。だからこそ彼にも感情移入をするし、幸せに
なって欲しいと願うんだと思います。

透と藤島の話は終始にやにやしてしまいました…。この2人は秋沢楠田よりは落ち着いてる印象ですが、やはり透がぶっきらぼうなので…ちょっと切ない、でも2人が心の底から想いあってるのがひしひしと伝わり最高です…。COLD SLEEPシリーズ読み返したくなりました。
秋沢楠田、透藤島が4人で会うエピソードは多幸感がやばかったです…。見たかったものを見れて本当に嬉しい。

この一冊を読んで、COLDシリーズが私のなかでより一層、そして確実に大切な作品になりました。私はこの作品に出会えて本当に幸せです。木原音瀬先生、ほんとうにありがとうございました…!

面白かったです

木原先生作品のファンだったので購入しました。
ハゲのおっさんが受なのはちょっとどうかと思いましたが木原先生の作品なら面白いに違いないと思い読み進めていくと…予想通りどんどん話に引き込まれ一気に読んでしまいました。

木原先生作品は読みながら辛くなりがちですが、この作品は珍しくコメディタッチで楽しいです。読みながら何度もフフッと笑ってしまいました。登場人物たちがわちゃわちゃしてて楽しい。
しかしながら木原先生特有の読んでてしんどくなる心理描写はあります。攻が受のことを愛せず、別れたいと思いながらズルズル関係を続けてるところや、受の攻に対するちょっとワガママっぽい描写なんかも、人の自己中心的一面が描かれててリアルだかぁと…。

見た目的にも内面的にも受のことはいまいちかわいいと思えず、正直あまり萌えませんでしたが…それなのに最後まで話の終着点が気になり読み進めてしまいました。
BLというとやはり受はかわいく健気に描かれることは多いですが(攻もしかり)内面的にも外見的にもしっかりマイナス要素を描いてるところがすごいです。だからこそ感情移入するし、リアリティを感じました。

わかりやすいBL的萌えが抱けたかというとなんとも…ですが、コメディタッチのなかに、わりとリアルな感情描写(醜いものも含め)が丁寧に描かれてて作品としてとても素晴らしかったと思います。